(イメージ / Tart ウィキペディア CC BY-SA 3.0

「一帯一路」とは

 2014年、中国共産党政権は「シルクロード経済ベルトと21世紀海洋シルクロード」という構想を提唱した。この構想の略称は「一帯一路(One Belt and One Road Initiative, OBOR)」。一帯は中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」であり、一路は中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」である。

 簡単に言えば、「一帯一路」は中国国内の余剰生産力を海外に輸出するためのプロジェクトだ。中国共産党は一帯一路に参加したい国に対し資金や建築会社、作業員を提供し、インフラ施設(道路、鉄道や港湾など)を建設する。しかしこのプロジェクトには様々な問題がある。

「一帯一路」の実施における問題

 中国の会社は「一帯一路」に加入した国から施設建設の契約を取るため、投資相手国の官僚に違法資金を贈るケースが多発している。施設を建設する中国の会社は地元の人を雇用しないため、地元の経済発展に対し貢献がないだけでなく、建設中に環境を破壊することが後を絶たない。しかし一番大きな問題は、インフラの建設が本当に必要かどうかの判断が、中国の会社から違法資金を受け取った官僚らが決めるということだ。必要ではない場合や使用した資金が多すぎる場合に、当該国は重い負債に苦しむこととなる。

「一帯一路」に伴う債務問題

 現在、多くの国がこの経済構想に加入しているが、様々な問題も生じている。その原因は中国共産党政権が経済協力の名のもとに「一帯一路」に加入した国を債務危機に誘導しようとしたからだ。

 2018年8月に至るまで、「一帯一路」はアジア、アフリカ、ヨーロッパの13カ国が債務危機に陥る原因となった。東南アジアのラオス、マレーシア、カンボジア、ベトナム、インドネシア、タイの債務水準は発展途上国の平均を遥に上回る状態となった。

「一帯一路」に伴う国際政治と安全保障問題

 しかし、債務の問題だけではなく、「一帯一路」に加入した国は中国共産党政権にコントロールされる可能性が高くなった。南ヨーロッパのギリシャは中国から多くの資金を受け取り、中国がヨーロッパに進出する入口となった。2017年6月、欧州連合(EU)が中国国内の人権状況を非難した際、ギリシャは評決に反対票を投じた。さらに、中国のヨーロッパへの投資に対して厳しい審査をすべきというEUの案に対して、ギリシャは再び反対した。

 アフリカの小国ジブチでは中国に対する債務が2016年度の対外債務の82%を占め、返済能力を超過した。2017年、中国はジブチで最初の海外軍事基地を建設した。南アジアのスリランカは中国から融資を受け、中国の会社に依頼してハンバントタ港を建設した。しかし、インフラ整備の遅れにより港までのアクセスは悪く、港湾の稼働率は低い。運営資金がないスリランカ政府は2017年8月、99年間の港湾運営権を中国に移転した。

「一帯一路」に対する反発

 マレーシアの新しい首相マハティール氏は8月21日、中国政府との間で「一帯一路」の2つの協力プロジェクト(東海岸鉄道プロジェクトとサバガスパイプラインの開発)を停止することに合意した。2つのプロジェクトの総工費は223億ドルを超えるものだった。マハティール氏は、これら2つのプロジェクトのコストが大きすぎると強調、マレーシアが負債に苦しむ恐れがあるため停止した発言した。今まで、マレーシアは初めて中国共産党政権のリーダーの前に「一帯一路」を拒否した国だ。

(文・黎宜明)