(イメージ:Pixabay CC0 1.0)

 8月28日、ニューヨークタイムズは、中国当局が「H7N9鳥インフルエンザ」のウイルス標本を米国と共有していないと報じた。報告書ではこのデータとウイルス標本が、貿易戦の新たなカードとして排除されていないと指摘している。

 米国防総省のアンドリュー・C・ウェーバー氏は、「ウイルス標本は、国が所有するようなものではなく、鳥のような存在である」との見方を示し、「人間に対する潜在的な脅威を考慮すると、中国当局がウイルス標本の共有を拒否した場合、不必要な死を招くだろう」と、米中間の協力体制を中断した中国当局に懸念を抱いた。

中国はH7N9の初期発生地

 なぜアメリカの研究機関は中国のウイルス標本を頼りにしているのか。中国は「H7N9」が最初に発生した場所であり、2013年に中国で発生して以来、ウイルスは中国に根付いている。このウイルスは毎年中国で発生し、突然変異性を起こしている。ニワトリなどから人間に感染する病原性の高いウイルスに進化し、感染者の40%が死亡、現在まで600人以上の命が奪われた。多くの専門家は、世界の次の流行病が「インフルエンザ」である可能性が高いと考えており、「H7N9」もその一つである。中国当局はワクチンの開発に成功したと主張しているが、その効果は専門家によって検証されていない。

 黄 厳忠教授(イースト・ウェスト大学ヘルス研究センター所長)は、去る3月、米国はワクチンの第Ⅱ相期臨床試験(※)を行っていると発表した。ワクチン開発最前線の米国は、依然として中国からのウイルス標本を必要としている。

(※ 治験のフェーズは大きく3段階に分けられる)

 このワクチンの開発には大きな利益に関わっている。生産が可能になった場合、最大の消費量はアジアであり、かなりの利益が見込まれる。時事評論家の唐 靖遠氏は、「それがビジネスのためであろうと、米国との貿易戦争のための新しい武器であろうと、中国当局のアプローチは非常に残酷なものです。利益のためにウイルスを資本としてコントロールし、遅延した際にどれくらいの人の命が奪われるかを考慮していません」と語った。

(翻訳編集/吉村作驕)