新疆ウイグル民族の子供(neverdance, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 米国の新疆問題専門家エイドリアン・ゼンツ氏は、新疆ウイグル自治区政府のデータを分析したところ、両親が投獄され孤児となった大勢の子供が、新疆の寄宿施設に送られていることを明らかにしたレポートを発表した。

 米国の共産主義犠牲者記念財団の中国プロジェクト高級研究員であるエイドリアン・ゼンツ(Adrian Zenz)氏はこのほど、新疆ウイグル自治区のデータを詳しく分析し、多数のウイグル人の子供たちが両親から引き離されていることを明らかにした長大なレポートを発表した。新疆ウイグル自治区ヤルカンド県政府データによると、片親または両親が拘留されている「生活困難な状況にある子ども」が数万人おり、そのうち約1000人の両親が拘留されているとラジオ・フリー・アジアが報じた。これらの子供たちは福祉施設に預けられた人もいれば、全寮制の学校に送られた人もいた。

 ゼンツ氏は10月19日、ラジオ・フリー・アジアのインタビューで、最新のレポートと昨年発表されたレポートとの違いは、大量の地方政府のデータが集約されていることだと指摘した。 昨年夏、彼は中国の様々な政府部門から2.5万点以上の文書を入手した。

 同氏は、これらのウィグル族の子供たちが寄宿施設に送られるケースが増えているのは、親を子供から引き離して支配することで、ウィグル族やその他の少数民族のコミュニティに変化をもたらそうとする、中国政府の長期的な戦略を反映していると指摘した。

 レポートは特に、9.5万人以上の生徒の詳細な情報をまとめた文書である「ヤルカンド県家庭困難生徒名簿(1~6年生)」を引用している。これらの生徒の共通点は、少なくとも両親のうちの一人が中国共産党に投獄されている。大半はウイグルの子供たちで、他の少数民族の子供もいたが、漢民族はいなかった。これらの生徒のうち、822人が「両親が拘留されて生活困難」で、残りは「片親が拘留されて生活困難」リストに入れられている。

 レポートによると、上記の1万人近くの生徒のうち、半数近くの「片親が拘留された」と9割近くの「両親が拘留された」を含め、半数以上の生徒が寄宿施設に入っていたという。また、数万人の親が留置されたままであることも明らかにしている。

 ゼンツ氏は、彼が昨年入手した数万の政府文書によると、新疆ウイグル自治区ホータン地区の子供たちが「寄宿施設に収容されている」状況はヤルカンド県にかなり似ているという。彼はこのような状況は南疆(天山山脈の南の地域)ではかなり普遍的だと信じている。

 また、2017年から2019年にかけて、新疆の小中学校の寄宿生徒数は50万人近くから88万人へと増加しており、これは政府による地方の少数民族地域での大規模な拘留活動時間の増大と重なっている。

 中国における宗教と人権の自由に焦点を当てたネットメディア「寒冬」は最近、新疆の情報筋の話を引用し、ゼンツ氏の最新レポートの調査結果の一部を確認したという。

 記事によると、ウルムチに住んでいたウイグル人女性イナベトさんは、2018年に漢族の上司に協力してホータン市から遠くない辺鄙な村で3週間にわたって「親戚訪問」という仕事を行ったという。当時彼女は、村で幼い子供の世話をしているお年寄りの姿しか見られなかった。両親が「再教育収容所」に送られた子供たちの面倒を見るために、現地では大きな福祉施設が建設されており、2つ目の建設も計画されていた。

(翻訳・藍彧)