(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 中国国家安全省や軍部とつながりのある深センの企業、振華数拠信息技術(Zhenhua Data/略:振華データ)は、世界240万人の個人情報の収集・保管に携わっており、各国の政界要人、将校、著名人、さらにはオーストラリアのモリソン首相の情報までも含まれている。

 オーストラリアの放送局(ABC)は14日、北京大学に勤務していた米国人経済学者クリス・バルディング氏が、世界240万人の個人情報を含むデータベース「振華データ」から情報を入手したことを明らかにした。サイバーセキュリティの専門家が同データの10%を抽出して分析したところ、アメリカ人5.2万人、オーストラリア人3.5万人、インド人1万人、イギリス人9700人、カナダ人5000人、インドネシア人2100人、マレーシア人1400人、日本人558人、パプアニューギニア人138人が含まれていると判明した。

 オーストラリアのモリソン首相を始め、ジェフ・ラビー元駐中国大使、ボブ・カー元外相などの連邦や州の高官、ソフトウェア会社アトラシアンの共同創業者マイク・キャノン=ブルークス氏、オーストラリア商工会議所(BCA)のジェニファー・ウェスタコット最高経営責任者などの実業家の情報が含まれている。

 ABCによると、5万人以上の米国民の中に、要人のほか、政府のプロジェクトに従事する請負業者の従業員、スタートアップの若手テック実業家、米軍の中堅将校などが含まれているという。 米海軍の大佐について、「この人物は原子力空母の艦長に昇進する可能性が高い」と将来の予測まで記されていた。

 振華データが収集した個人情報には、生年月日、住所、婚姻状況、個人写真、政治的立場、家族構成、ソーシャルメディアのアカウントなどが含まれている。英国のガーディアン紙は、Twitter、Facebook、LinkedIn、Instagram、TikTokなどの公的な情報源からほとんどの資料を入手できるが、プライバシーに属する銀行記録、就職情報、心理カウンセリングのファイルなどは、特殊な方法で入手した可能性があると指摘した。

 ボイス・オブ・アメリカによると、振華データは、中国軍や共産党の組織が主なクライアントである。米国IBMに勤務していた深セン振華データ最高責任者の王雪峰は、かつて「中国共産党政権が同社のオフショアデータベースを使って他国に対する世論戦や心理戦を行うことに賛成する」とウィーチャットで発言した。

 英紙デイリー・テレグラフの報道によると、振華データは今年初めに「アンチ中国活動家(anti-china activist)」にて同会社のコンピュータシステムから情報を盗まれ、その後、何らかのルートを介して、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドからなる国際的な諜報ネットワーク「ファイブ・アイズ」に渡ったという。しかし、今回のABCとオーストラリア・ビジネス・レビュー(AFR)による調査は、異なったルートで行われた。

 バルディング教授は北京大学商学院で9年間勤務し、2018年に中国を離れ、ベトナムの大学に転任した。彼はファーウェイを例に現代中国の「サイバー軍産複合体」を分析しているうちに、偶然にも「内部告発者」と繋がり、振華データを取得したという。

 現在、共通の関心事としては、振華データに記載されている「各国にある200の海外データ処理センター」はどこにあるのかということだ。

(看中国記者・黎小葵/翻訳・藍彧)