アジア一の大富豪、李 嘉誠氏は、様々な場所で自らのビジネス哲学について論じてきました。
その彼が講演で頻繁に取り上げるテーマのひとつに、「友人を信じ、人々を信頼する」というものがあります。

まず、李氏について日本の読者に簡単に紹介しておきましょう。
李 嘉誠氏は1928年に中国の広東省潮州で生まれ、日中戦争から逃れるため1940年に香港へ移りました。彼は22歳の時に最初のビジネスを始め、その後、彼の会社「長江実業グループ」は香港最大の企業へと成長を遂げました。

そんな李氏が常に注意を払っていたのは、ビジネス界における「人脈」でした。彼はかつてこのように発言しています。
「お金を借りることによって、あなたはその人の質を判断することができる」

李氏はまた、次のように述べたこともあります。
「最も難しい事は何かって?それは借金ですね!お金を貸してくれる人はあなたの救世主です。もし、契約書を交わすことなくお金を貸してくれる人がいたなら、その人はあなたの最も大切な救世主です。今どきそのような人はほとんどいません。もしあなたが一人でもそのような人と出会えたのなら、その人を大切にしなければなりません。」

李氏の言いたい事とは何でしょうか?
彼は「苦しい時にお金を貸してくれる人は、余計にお金を持っているわけではなく、あなたを助けたいからそうしている」、そして、「彼らはお金を貸しているのはではなく、あなたの自信、信頼、意欲、そして能力に投資している」と力説しているのです。

「お金を借りることによって、あなたはその人の質を判断することができる」(画像:pixabay / CC0 1.0)

李氏は、自身の友人たちが倫理に忠実であることを望んでいます。「信頼の喪失は人生の中で最大の破産である」という彼の持論は、同時に、忠実な友人からは生涯にわたって得られる利益があるという事も意味しています。
例えば、お金を積極的に支払ってくれる友人というのは、お金が有り余っているのではなく、お金以上に友情を大切にしているからそうするのです。

他人と共にビジネスをする際、あなたのパートナーがあなたに利益の大部分を保有してほしいと考えていたなら、それはパートナーが馬鹿だからではなく、分かち合う方法を知っているからそうするのです。
また、ある人がより多く仕事をしようとするのは、気が狂っているからではなく、責任を負う方法を知っているからそうするのです。
ある人が喧嘩の後に自ら謝罪するのは、彼らが間違っているからではなく、他人を大切にする方法を知っているからそうするのです。
彼らがあなたを助けようとするのは、あなたに借りがあるからではなく、あなたを友人として扱うからそうするのです。

あなたを助けるかどうかは他人次第であり、そうしなければならない必要はないのです。

信頼の喪失は人生の中で最大の破産である(画像:pixabay / CC0 1.0)

(翻訳・今野秀樹)