9月16日午後、内モンゴル自治区オルドス市のある通りが、わずか10分ほどで「氷の川」に変わりました。大豆ほどの大きさのひょうが強風とともに降り注ぎ、路面は白い氷に覆われました。排水が追いつかず、水が通りにあふれ出しました。地元の住民は、こんな光景は何年も見ていないと話しています。

 しかし、この通りの様子以上に不安を感じさせるのが、同じ時期の中国全土の気象状況です。北部ではひょうが相次ぎ、東北部では小さな虫が大群で飛び交い、山東省では干ばつで地面にひびが入り、西南部や中国中部の華中地方では秋雨が繰り返し降っています。寒さ、暑さ、干ばつ、水害が、秋の収穫まであと数週間という時期に重なったのです。今年、秋に収穫する穀物は、いったいどれだけ無事に収穫できるのでしょうか。

 まず、オルドス市の状況に戻ります。中国当局の発表によると、当日の午後2時から9時にかけて、オトク前旗では短時間の激しい雨やひょう、雷を伴う強風が発生しました。観測された最大のひょうは直径1.3センチ、重さ約1グラムでした。東勝区(とうしょうく)の一部の住宅地周辺でも、午後5時ごろに大豆ほどのひょうが降り、約10分間続きました。気象当局によると、ひょうは春の終わりから夏にかけて発生することが多く、秋には比較的珍しいということです。

 9月中旬には、四川省のカンゼ市でも、激しく降り注ぐひょうの様子が撮影されました。地面は瞬く間に厚く積もった氷の粒に覆われました。農家にとって、この時期のひょうはとりわけ気がかりです。国営メディアによると、カンゼ県のハダカムギの主な産地では、9月7日からまとまった農地で一斉に刈り取りが始まりました。これを機に、県内におよそ8300ヘクタール、東京ドーム約1800個分あるハダカムギ畑が、本格的な秋の収穫期を迎えました。当局は、今年の総収穫量が3万トンを超えると見込んでいます。今回のひょうが地元のハダカムギにどれほどの影響を与えたのか、現時点では当局の発表は確認されていません。天候も依然として不安定です。中国の気象情報サイト「中国天気網」は9月20日、四川省では今後3日間、雨が続き、四川盆地や省西部の高原では、局地的に大雨や豪雨になると予報しました。

 ただ、収穫直前の農家を襲う痛ましいひょうの被害は、その数日前にも東北部で起きていました。9月12日午後、黒竜江省の建三江(けんさんこう)農場では、複数の地区でひょうが降り、地面が真っ白になりました。広い範囲で稲が倒れ、海倫市(かいりんし)のある村では、畑の白菜がひょうに打たれて傷み、トウモロコシも被害を受けました。倒れた稲を前に、ある農家の人は「あと数日で刈り取るところだったのに」とため息をつきました。この人は、減収はもう避けられず、倒れた稲は刈り取るのも難しいと話しています。

 そして最近、東北部の人々をぞっとさせているのは、ひょうだけではありません。「人を刺さず、毒もない」という虫が東北部の一部地域で突然大量に現れました。黒竜江省伊春市(いしゅんし)の馮さんという女性が16日に撮影した動画には、小さな虫が群れをなし、日差しの中を上下に飛び回りながら、通行人の目の前を漂う様子が映っています。馮さんによると、黄色などの明るい色の服を着ていると、服に虫がびっしりとまるということです。瀋陽市(しんようし)でも、この虫が高層ビルの30階より上まで飛んでくると報じられています。外出時にはマスクや保護メガネを着け、全身をしっかり覆わざるを得ない人もいます。

 複数の専門家によると、この虫の正体は羽のあるアブラムシで、人を刺すことはなく、毒もありません。瀋陽市の地元報道によると、アブラムシは普段、植物に付いて草花や農作物に被害を与えますが、秋になると羽のある個体が現れ、冬を越す卵を産む場所を探して、群れで移動します。今年は例年より明らかに数が多く、秋の気温の高さが関係しているといいます。アブラムシは、気温が高く雨の少ない環境を好むためです。この虫の大群が、今年や来年の農業生産に被害をもたらすかどうか、現時点では専門家の評価は確認されていません。

 東北部から山東省に目を向けると、今度は水不足の深刻な状況が見えてきます。ネット上に出回る数多くの映像には、一部の地域でトウモロコシの葉が枯れて丸まり、乾いた地面にひびが入り、黄河の川底が広い範囲で露出する様子が映っています。木々が燃えている映像もあります。当局が公表した情報からも、水不足の状況がうかがえます。山東省気象局は8月31日の時点で、9月の省全体の平均降水量は平年の同じ時期より1割から2割少なく、気温はやや高くなると予測していました。さらに、省内ではすでに雨不足による干ばつが一定程度発生していると明らかにしていました。

 最近の複数のメディアの報道によると、9月に入ってから、山東省の各地で「一滴も雨が降っていない」といいます。気象観測では、一部の地域で雨不足による干ばつが最も深刻な段階に達しています。中国天気網は、今年の夏以降、中国中部から東部にかけての降水量が「南北で多く、その間で少ない」という分布になっていると分析しています。太平洋高気圧の影響で、湿った空気の通り道が南側と北側に分かれ、その間に位置する山東省には雨雲がかかりにくくなっているのです。ところが、つい数週間前の8月末には、山東省徳州市(とくしゅうし)で長雨が続き、トウモロコシの葉にさびのような斑点が出る南方さび病など、例年はあまり見られない病気が一時、多発していました。わずか数週間の間に、長雨と干ばつが相次いで襲ったのです。

 一方、西南部や華中地方の一部では、逆に雨が降りすぎています。報道によると、9月17日から19日にかけて、四川省東部、重慶市、湖北省の一部で大雨や豪雨となり、局地的には非常に激しい雨が降りました。重慶市の一部の区や県では、期間中の総雨量が100ミリを超え、奉節県(ほうせつけん)の一部の観測所では250ミリを上回りました。中国天気網は、現在の気象状況を「三つの季節が同時に現れている」と表現しています。南部では真夏の暑さが残り、西部では激しい秋雨が降り、北部の一部地域ではすでに冬に入っているのです。

 ひょう、干ばつ、豪雨、虫の被害。一見すると、互いに関係のない出来事に見えます。しかし、同じ地図の上に重ねてみると、すべてが一つの問題につながっていることが分かります。食糧です。

 秋に収穫する穀物は、中国の年間穀物生産量のおよそ4分の3を占めています。秋の収穫が、その年全体の収穫を大きく左右するのです。今年8月下旬、李強首相は黒竜江省と吉林省を視察し、秋の豊作を確保するために全力を尽くすよう、地方当局に求めました。当局は一貫して、作物の生育は全体として正常だと強調しています。しかし、各地の災害によって実際にどれほど収穫量が減るのか、現時点では大半の地域で具体的な数字が公表されていません。災害が相次ぐ中、ネット上では「今年は少し食糧を備蓄しておいたほうがいいのでは」と、互いに呼びかける声が上がっています。

 9月に入り、被災地の農家にとっては厳しい日々が続いています。東北部の広い範囲では、収穫作業がこの先も数週間続きます。その一方で、冷たい空気はなお南下しています。これから天候がどう変わるのか。そして最後に、どれだけの穀物を倉庫に収められるのか。どちらも、まだ見通せない状況です。

(翻訳・藍彧)