中国洛陽市の街で、配送社のマークを付けた四角い小型車が、道路の端をゆっくりと進んでいます。赤信号では自動で速度を落として停止し、住宅団地の入り口に着くと、荷物の受取人に受け取りを案内するショートメッセージを送ります。おとなしく、効率よく働いているように見えます。ところが、朝夕のラッシュ時に交差点へ入ると、その「おとなしさ」が周囲の人をいら立たせる原因になります。9月16日、中国では、無人配送車の急ブレーキや急な方向転換、交差点で進んだり止まったりする動きが渋滞を引き起こしているとして、中国のSNS「微博(ウェイボー)」の話題ランキングで上位に入りました。
洛陽市で20年間タクシーを運転してきた婁(ろう)さんは、こうした車の動きを独特の言葉で説明します。「交差点で曲がろうとしている無人配送車を何度も見たけど、少し進んでは止まり、いつまでもぐずぐずしている。そのうち完全に動かなくなって、判断に時間がかかり、1分以上も止まったままだった。後ろはとっくに車が詰まって、大渋滞になっていたよ」。婁さんは中国メディア「大河網」にそう話しました。道が狭いほど、交通量が多い時間帯ほど、こうした判断の遅れが目立ちます。人間の運転手なら、周囲をちらりと見て相手の動きを察し、譲るかどうかを一瞬で判断できますが、機械はさまざまな条件を何度も検討しなければなりません。婁さんの評価は短く、的確でした。「あまり気が利かないね」
これは、特定の1台にたまたま起きた不具合ではありません。洛陽市内にある郵便・宅配の配送拠点の責任者も、無人配送車が道路上の状況に応じて反応する速さは、現時点では人間に及ばないと認めています。都市の道路が複雑なのは、システムが想定どおりに処理しにくい状況であふれているからです。割り込んでくる電動バイク、突然ドアが開く路上駐車の車、逆走する料理の配達員、どう通ればよいのか分かりにくい仮設の囲い。周囲に判断を難しくする要素が多すぎて、十分に安全な進み方を見つけられないと、車はその場で止まり、「危険がなくなる」のを待つ仕組みになっています。この配送拠点では、車が道路上で急ブレーキをかけた後、システムが動かなくなる事態が2度あり、結局、人を現場に向かわせて手作業で対応するしかありませんでした。企業にとっては運用上のトラブル対応の一つでも、後ろで足止めされた運転手にとっては、不満を訴える先もないまま時間を奪われることになります。
業界の専門家は中国メディアに対し、現在の無人配送車は、道路上で起こるさまざまな突発的な状況にまだ対応できないと指摘しています。突然現れる工事区間や、子どもやペットの急な飛び出しといった予測の難しい場面、さまざまな悪天候などが、安全な走行にとって大きな課題となっています。技術上の難題は、99%を占める通常の場面よりも、残る1%のまれな状況への対応にあります。そして、まさにその1%が、道路がスムーズに流れるか、まひするかを左右します。ひやりとするだけで済むのか、それとも実際に事故になるのかも、そこにかかっています。
さらに対応の難しさが表れているのが、交通取り締まりの現場です。河南省のある県で交通警察部隊の責任者を務める劉さんによると、無人配送車が交差点で長時間止まって渋滞を引き起こしたり、走行中にむやみに車線を変更したりする問題が、たびたび起きています。特に学校の登下校で混み合う時間帯には、交通警察官の誘導や呼びかけを無視し、ひたすら前へ進もうとして、「止めようとしても止められない」といいます。劉さんは、その無力感をこう表現しました。「機械には人間の言葉が分からない。こちらが指示しても、まったく従わないんだ」。従来の交通整理は、手ぶりや笛、目配せなど、人と人がその場で意思を伝え合うことを前提にしています。しかし、無人配送車が従うのは、あらかじめ組み込まれた判断の仕組みと、遠隔の管理システムだけです。車の認識システムから見れば、手を振る交通警察官も、よけて通るべき「障害物」にすぎないのかもしれません。中国メディアによると、こうした場面で警察官と車のにらみ合いが長く続き、最後は道路の流れを回復させるため、警察官が先に人々を移動させ、無人配送車を通すしかなかったといいます。「人が機械に道を譲る」光景が生まれたのです。
違反として処分できない背景には、さらに根深い問題があります。劉さんによると、無人配送車は新しい種類の車両で、取り締まりの根拠となるルールが整っていない部分が多く残されています。最も基本的な問題さえ、いまだに決着していません。この車は、法律上、自動車などと同じ区分に入るのか、それとも自転車などと同じ区分に入るのでしょうか。無人配送車には運転席も運転手もいないため、自動車などに求められるナンバー登録や運転免許のルールを、そのまま当てはめるのは困難です。一方、車体の重量や出力は、自転車などの区分で認められる基準を超えるものが多く、こちらにも当てはまりません。その結果、どの部門が責任を持って管理するのかが曖昧なまま、規制の対象から抜け落ち、交通管理部門も通行を認めるしかないことが多いのです。
ルールづくりがまったく進んでいないわけではありません。新華網の記事「無人配送車の公道走行をめぐる法的課題、早急な解決が必要」によると、北京では無人配送車の管理規則が設けられ、自転車などの専用レーンを定められた進行方向に従って走ることや、歩行者や自転車などに道を譲ることといった通行条件が明確になっています。これは、交通警察が責任の所在を判断する際の参考になります。また、被害者が速やかに補償を受けられるよう、賠償責任保険への加入も義務付けています。ただし、研究者らは、こうした車がもたらす危険の度合いは、自動車などと自転車などの中間に位置しており、どのような原則に基づいて責任を負わせるかについては、なお議論があると指摘しています。こうした規則の多くは、現在、地方での試験運用や、限られた区域内での届け出制度という形にとどまっています。全国共通の車両区分の基準や処罰の根拠はまだなく、多くの都市では具体的な規則も設けられていません。これが、現場の交通管理部門にとって、依然として「取り締まりの根拠がない」理由です。
その一方で、無人配送車は増え続けています。中国物流・購買連合会のスマート物流分会が発表した「2025~2026年無人配送車産業の事業化に関する調査報告書」によると、2025年12月末までに、中国全体の累計導入台数は3万3000台を超え、2026年1月から3月には、業界全体の保有台数が5万台を突破しました。報告書は、2026年に新たに導入される車両は約6万8000台に上り、2030年には年間の生産・販売台数が86万台に達し、累計保有台数が200万台を超える可能性があると予測しています。つまり、今は交差点でたまに見かける程度の「進んでは止まる」光景が、今後数年で毎日何度も目にするものになるかもしれません。そして、車が対応しきれない残り1%のまれな状況に遭遇する回数も、車の増加に応じて同じように増えていくことになります。
9月15日、あるネットユーザーが微博にこう投稿しました。「無人配送車が道路をふさぐ問題は、一見すると技術の問題だが、実際にはルールの問題であり、権限と責任の問題だ。法的な位置付けが定まっていない車が公道を走り、運転手のいない車が事故を起こしても、誰も責任を取らない。交通警察も、どう対応すればよいのか分からない。こうした問題が解決されるまで、道路で足止めされた普通の人々は、待ち続けるしかない」
(翻訳・藍彧)
