中国河北省保定市のショッピングモール前で、1台の車がバックで大通りに飛び出したあと元の場所へ引き返し、そのまま加速して店の入り口に突っ込む様子が監視カメラに映っていました。当局は「運転手の操作ミス」と発表しましたが、ネット上では疑問の声が相次いでいます。

 9月20日午後5時22分ごろ、保定市のショッピングモール「北国先天下」の前で、止まっていた白いボルボのセダンが突然動き出しました。ネット上に出回っている通り向かいの監視カメラ映像を見ると、この車はもともとモール前の駐車スペースに、前をモールの入り口に向けて止められていました。動き出した車はまず勢いよくバックし、後ろに止めてあった電動バイク数台を倒しながら乗り上げました。そのうち1台に乗っていた女性も巻き込まれて転倒しましたが、けがは軽かったようで、すぐに起き上がってその場から離れていきました。

 車はそのまま大通りに出て、中央分離帯の柵と別の乗用車にぶつかってようやく止まりました。ところが、しばらくすると再び動き出して元の場所へ引き返し、倒れた電動バイクの上をもう一度乗り越えると、一気に加速してモールの入り口に突っ込みました。車は建物の奥まで進み、柱にぶつかってようやく止まりました。車の前部は原形をとどめないほど大きく壊れており、相当なスピードが出ていたとみられます。入り口付近では巻き込まれた人がいた可能性もあり、モールの外には倒れたまま動けずにいる女性の姿もありました。入り口のガラスは粉々に割れ、店内は物が散乱して騒然としていました。

 一部始終を見ていた男性は、撮影した動画の中で「マジかよ、バックして、入ってった。バックしてからまたアクセル踏んで、そのまま突っ込んでったよ」と話しています。店内にいた人も動画を撮りながら「嘘だろ、爆発とかしないよな。なんで車が入ってくるんだよ」とつぶやいていました。

 同日夜10時ごろ、保定の警察は、運転していた孫という姓の人物が操作を誤り、車が制御不能になったことが原因だと発表しました。けが人は2人で、いずれも軽傷だとしています。飲酒運転や薬物使用の疑いはなく、引き続き調査を進めるということです。

 しかし、監視カメラの映像を見た人たちは納得していません。ネット上には「どう見ても操作ミスには見えないだろ」という声や、「操作ミスってずいぶん便利な言葉だな」と皮肉るコメントも寄せられています。

 地元に住む王さん(仮名)は、今回の件は中国でいう「報復社会」、つまり社会への不満を無関係の人たちに向けた行為だと考えているそうです。ただ、具体的な動機はまだわからないとしています。王さんが現場に着いたとき、車にはすでに黒い布がかぶせられていました。現場には保定の警察だけでなく、国家安全当局の職員や河北省政府の関係者まで来ていたといいます。警察は集まった人たちを現場から遠ざけ、写真を撮らせないようにしたうえ、スマホの動画や写真を消すよう求められた人もいたということです。運転手がどこの病院に運ばれたのかもわかっておらず、モールの近くには救急病院もないといいます。

 中国ではこのところ、社会への不満を無関係の人たちに向ける痛ましい事件が各地で相次いでいます。数日前の9月14日には、広州市の大学が集まる地区にあるショッピングモールで、男が刃物を持って女性ばかりを次々と襲い、顔などに大けがをした人が複数出ました。今年3月29日の昼には、北京市房山区のにぎわう市場に男が重機で突っ込み、露店や買い物客が次々と巻き込まれました。目撃者によると、その場で命を落とした人もいて、犠牲者とけが人は合わせて数十人にのぼったといいます。この目撃者は、あまりのショックに2日間眠れなかったと話しています。

(翻訳・吉原木子)