米国のAI企業Anthropicは9月10日、150ページに及ぶ最新の脅威レポートを発表し、コードネーム「GTG-10007」と呼ばれる継続的なサイバースパイ活動を暴露するとともに、中国のAI企業7社が同社の「Claude」モデルに対して「違法な蒸留(Distillation)」を行ったと非難した。
報告書によると、このスパイ活動は主に中国湖南省のオペレーターによって仕掛けられたもので、オペレーターの中には、湖南にある大学のコンピュータ・通信工学部の学生も含まれている。
ハッカーたちは、Anthropic社が開発したAIモデル「Claude」を「オーケストレーション層」(Orchestration Layer)として利用し、世界中の政府ネットワークに対して精巧な攻撃を仕掛けた。
同報告書は特に、本件に関与した同大学の学生のうち、1人が中国のサイバーセキュリティ企業「Sangfor」でインターンシップを経験しており、作戦期間中に別のサイバーセキュリティ企業「QiAnXin」の攻撃型サイバー作戦の職に積極的に応募していたことを指摘している。
このハッカー集団は、Claudeを自動化の中枢として活用し、中東、ヨーロッパ、東南アジアの複数の政府ネットワークに対する偵察や侵入の試みを統括して実行するとともに、世界的に広く使用されている主要なエンドポイントセキュリティ(Endpoint Security)製品を対象とした脆弱性調査や攻撃ツールの開発を行った。
注目すべきは、このグループが自動化されたハッキングツールセットと並行ワークフローを構築し、オペレーターがオフラインの状態やコンピュータから離れている間も、脆弱性調査および情報収集プラットフォームが24時間体制で稼働し続けるようにしていた点である。
さらに報告書は、中国共産党と関連のあるアカウントが、Claudeを利用して現地語でプロパガンダコンテンツを生成し、採用担当者を装ってシリア国内のウイグル人を対象に勧誘や情報工作を行っていたことを明らかにした。同時に、AIを活用して多言語のソーシャルメディアコンテンツを生成し、国境を越えたオンライン影響力作戦を展開していた。
同報告書は、中国企業による「違法な蒸留(Distillation)」――すなわち、Claudeの能力を密かに抽出して自社の競合モデルを学習させる行為――について初めて詳細に記述した。Anthropicは、アリババ、ムーンショット、DeepSeek、智譜AI、シャオミ、センスタイム(商湯科技)、MiniMaxの計7つの中国AI企業を名指しした。そのうち、ムーンショットはわずか10日間で、5,380の偽アカウントを通じて30万回近くのリクエストを送信した。5月から7月にかけて、同社に関連するインタラクションは2,300万回にも上った。
Anthropicが発表した脅威報告書では、同社が中国共産党によるカトリック、チベット仏教、法輪功、および台湾のキリスト教団体を対象とした宗教関連の情報工作を摘発したことも明らかにされた。
同報告書によると、Anthropicは、中国共産党政府が支援する中国国内の情報活動に関与しているとみられる一連のアカウントを凍結した。攻撃者たちは、Anthropicのチャットボット「Claude」に対し、自らが率いる分析チームの一員として、アジア各地の宗教指導者や華人コミュニティに関する中国語のファイルを作成するよう要求していた。
Anthropic社によると、この活動の目標は、中国共産党の宗教事務・統一戦線機関の優先事項と完全に一致しているという。報告書は、これらの攻撃者が中国本土に拠点を置いていることを明らかにしており、そのうちの1人のユーザーは、自身が中国共産党政府の情報セキュリティ担当官であることを認めている。
報告書によると、これらの攻撃者たちは、Claudeに対し、公式の内部治安部門が使用する分析文書――「人物調査の下書き」、「手がかり報告書」、および日次の「状況認識」要約など――を生成するよう指示した。また、各記録において、特定の標的となる人物の中国関連活動、ネガティブな情報、および「工作の切り口」(これは中国共産党統一戦線工作部の用語であり、利用可能な切り札を指す)を詳細に列挙するよう求めた。
彼らのターゲットには、アジア各地のカトリック教会の枢機卿、台湾長老教会の指導部、チベット仏教の民間団体のメンバー、チベット亡命政府、ならびに法輪功および法輪功の信者たちが設立したメディアが含まれている。調査対象は、ベテランの宗教指導者から一般市民まで多岐にわたる。
報告書によると、攻撃者たちは標的の生年月日、出生地、移住日、ソーシャルメディアのアカウント情報を収集していた。また、偵察を行い、宗教施設の平面図、外観図、構造図を作成していた。
この取り組みは、WeChat、小紅書、抖音(中国版TikTok)、新浪微博をはじめ、LinkedIn、Instagram、Threads、X、Facebookなど、中国国内外の複数のソーシャルメディアプラットフォームを対象としており、毎日更新レポートの作成が求められていた。
攻撃者たちは、Claudeへの指示の中で「中国(中国共産党)の立場」を取るよう求めており、例えば、チベット亡命政府を「違法な分離主義政権」と位置づけるよう指示していた。
Anthropicの分析によると、この攻撃者たちは宗教関連の情報収集を担当していた可能性がある。というのも、彼らはClaudeに対し、4つのワークフローを同時に実行し、多言語で生の資料を受け取り、内部テンプレートに基づいて構造化された中国語のファイルを作成するよう指示していたからだ。各テンプレートでは、対象者に関する中国関連の活動、スキャンダル、および利用可能な弱点の概要を記載することが求められていた。
Anthropicによると、これらの攻撃者たちは、海外の法輪功グループに関連する教育者や実践者の情報を収集しており、これは海外のコミュニティを対象とした活動の一環であるという。
Anthropic社は、関連するアカウントを全面的に凍結するとともに、大規模言語モデルの悪用による国家レベルのサイバー攻撃や情報収集行為を阻止するため、公的・民間のセキュリティ機関と脅威情報を共有したと発表した。
(翻訳・文遠)

