上海の中心部にそびえる高層ビル群は、夜になるといつも煌々と明かりがともり、街の繁栄を映し出しているように見えます。ところが、ある中国の動画配信者がビルの内部に入って撮影したところ、いくつものフロアが空室のまま、外壁側の照明だけがついている状態でした。ネット上では、これは当局の「ライトアップ事業」の決まりだという証言も出ています。

 この配信者は先日公開した動画で、上海の陸家嘴(ルージャーズイ)にある超高層ビルを空から撮った映像をネットでよく見かける、と話しています。窓から漏れる光がびっしりと並び、いかにも活気があるように映る。でも夜の八時、九時になって、本当にあれだけの人があのビルの中で「働いたり遊んだり買い物したり」しているのだろうか。それが彼の抱いた疑問でした。

 そこで今回は、明かりのついた高層ビルを一棟、無作為に選んで中に入ってみると語ります。古びた貨物用エレベーターを使って入り込んだビルの内部は、こんな様子でした。

 動画が海外のX(旧ツイッター)に転載されると、大きな反響を呼びました。ビル運営側の狙いではないかと推測する人もいます。「煌々と明かりをつけて繁栄を演出すれば、土地の価値を押し上げられる。エリアの格も商業的な活気も保てるんだ」

 一方、上海当局の指示だと明かす人もいました。「これは政府のライトアップ事業だよ。自分はここで働いてたけど、超高層ビルの夜間照明は全部、政府が決めた時刻に一斉に点けることになってる」

 特定の角度から見たときの効果を狙ったものだ、という地元の人の証言もあります。「外灘(バンド)から見ると最上部の何フロアかだけが見えるビルがあって、そこは明かりがついてる。福州路からそのビルの方へ歩いていくと、上の数フロアしか点いてないのが分かるよ、ははは」

 配信者が撮影したビルの内部と同じことが、統計にも表れています。CBREによると、2026年上半期の上海のオフィスビル全体の空室率は24.5%。四部屋に一部屋は空いている計算で、賃料はこれで14四半期連続の下落です。サヴィルズの集計では、徐家匯エリアの空室率がわずか3カ月で29.2ポイント跳ね上がり、43.1%に達しました。

 「上海の心臓部」と呼ばれる陸家嘴も、決して安泰ではありません。空室率13.5%は市の平均より良いものの、数年前と比べれば明らかに落ち込んでいます。第一世代のビルはすでに築20年を超え、設備も古く間取りも時代遅れで、新興のビジネス街との競争で苦戦が続いています。空きビルは上海だけの現象でもありません。中国の主要18都市のグレードAオフィスの平均空室率は24.7%に達し、成熟した市場で適正とされる20%を大きく超えています。

 上海当局が2018年に決定した「黄浦江両岸景観照明総合プラン」に触れる声もあります。中国メディアの当時の報道によると、このプランは照明のデザインを外灘や陸家嘴といった中心部から数十キロに及ぶ川岸全体へと広げるもので、川をまたぐ橋、埠頭のサイロの外壁、川に面した建物の壁面などが対象に含まれました。担当した上海市の緑化・市容管理局は、両岸の照明について「明るさ、色温度、カラー光、動く光などを一体的に設計する」と説明していました。

 皮肉なのは、中国の住宅都市農村建設省が2021年に出した都市再開発の通知です。うわべだけを飾り立てる工事はしない、実態からかけ離れ人手と金を浪費するような、実績づくりや体面を保つための工事はしない、さらに景観づくりやライトアップをやりすぎない。そう釘を刺してから5年、空っぽのビルに明かりがともる光景は変わっていません。

 ネット上では、こうした工事が守っているのは中国共産党当局の体面であって、そこに使われているのは庶民が汗水流して稼いだ金だ、という批判の声が上がっています。

(翻訳・吉原木子)