今年の台風18号は、浙江省に上陸したあと勢力を落とし、いったんは台風としての扱いを終えていました。ところが9月1日の未明、南シナ海の北西部の海上でふたたび台風にまで発達し、来た道を引き返すように中国大陸へ向かいました。香港天文台の元台長、林超英さんはSNSにこう書いています。この台風は浙江省に入ってから弱まってはいたものの、渦の形はずっと保ったままで、しかも南西へ斜めに進み続け、最後には熱帯低気圧として息を吹き返した、と。気象の仕事に40年携わってきて、こんな台風は見たことがないといい、人間はいつも先端技術を誇るけれど、天気の底知れなさにはとても及ばない、と書き添えています。今後数日はこの台風が香港の近くをうろつくとして、地元の人たちに注意を呼びかけました。

 中国の中央気象台は9月1日、台風の青色警報を出しました。これから3日間は、台風とモンスーントラフ、それに寒気が重なり、長江以南の一帯や華南の東部と南部で大雨から豪雨になり、場所によっては記録的な豪雨になると見ています。福建省北東部の一部では雨量が250から280ミリに達する見込みで、1時間に20から50ミリ、多いところでは70ミリを超える激しい雨が短い時間に降るほか、雷を伴う突風などの荒れた天気も予想されています。

 この台風が息を吹き返す前、最初に通り過ぎた時点で、すでに各地に爪痕が残っていました。8月30日の夕方、安徽省宣城市は記録的な豪雨に見舞われ、長江の支流である水陽江と青弋江の水位が急に上がって、市街地のいくつもの道路に川の水が逆流しました。31日の午前になっても、多くの車や店、地下駐車場が水に浸かったままでした。この二つの川の上流には、大きなダムがいくつも並んでいます。ここまで被害が大きくなったのはダムの放流のせいではないかというのが、地元の人たちに広く共有された見方でした。

 同じ疑いは、ほかの被災地からも上がっています。福建省福清市では、8月29日から30日にかけての記録的な豪雨のあと、市内の何か所もの道路が水に浸かりました。地元の人によると、このところ多くのダムが水を放しており、そのせいで下流に水があふれているといいます。雲南省昭通市の塩津県は、中国でいちばん細長い町として知られています。二つの山に挟まれ、いちばん広いところで300メートルほど、狭いところは30メートルほどしかありません。川の両岸には宙に張り出した高床式の建物が並び、上流にはいくつもの水力発電所があります。住民の話では、最近になって発電所が水門を開けて放流し、財産に被害が出たうえ、水に流された人まで出ました。広東省汕頭市でも雨が降り続き、市内の複数の町で水があふれて道路が川のようになり、31日の午前になっても水が引かない場所が残っていました。

 9月1日、引き返してきた台風がまず襲ったのが福建省です。この日の午後、莆田市の気象台は大雨のオレンジ警報を、最も高いレッド警報へ一気に引き上げました。ほどなく仙游県で洪水が起き、市街地の道路や住宅地が水に浸かり、場所によっては車が屋根まで沈み、流れは激しく渦を巻きました。ネットに出回った映像には、濁った泥水に浸かった団地が映っています。水の中で2人がもがいており、動きからすると泳げないようです。上の階の住民は携帯を構えて撮ることしかできず、助けに行くことはできませんでした。この2人の生死は今もわかっていません。

 中国メディアは、別の2件についても伝えています。仙游県の郊外を走る道路では、みるみる水かさを増した洪水に乗用車が飲まれ、車内にいた大人1人と子ども4人が屋根の上に逃れて、最後は救助されました。市街地の別の通りでも乗用車が水に沈み、車を捨てて逃げた運転手が激しい流れに数十メートル押し流されながら、命は助かりました。

 同じ日の未明には、隣の泉州市でも洪水が起きています。流出した映像では、市街地の道路が川と化し、何台もの車が水に押し流されていました。死傷者がどれだけ出たのかは、今もわかっていません。

(翻訳・吉原木子)