8月18日、上海浦東空港。シアトル行きの便が離陸した時、機内の座席は半分が空いていました。欠航になったわけでも、乗客が来なかったわけでもありません。乗客たちが足止めされ、搭乗を認められなかったのです。
いったい何が起きているのでしょうか。中国の出国の扉は、ひそかに閉じられつつあるのでしょうか。今回は、この出来事の一部始終を詳しく見ていきます。
中国共産党の新たな出入国管理規定はまだ正式に施行されていませんが、さまざまな兆候から、出国審査は正式施行を待たず、すでに厳格化されていることがうかがえます。
8月19日、あるネットユーザーが、上海浦東国際空港で中国人乗客に「プライバシーなど全くない」と感じるほど詳細な出国情報登録表への記入が求められたと明らかにしました。その結果、同じ便の乗客のうち、なんと半数近くが搭乗を認められなかったといいます。
中国社会で起きる突発事件を長年追っているブロガー「羅翔~破幕推墙(ら・しょう~はまく・すいしょう)」はXで、ある中国人ネットユーザーから寄せられた情報を転載しました。投稿者によると、18日に上海浦東空港からシアトルへ向かい、午後5時24分発の便に乗る予定でした。ところが搭乗券を受け取る際、空港職員から突然、出国情報を記入するよう求められたといいます。本人は、その内容について「恐ろしすぎる」と話しています。
この用紙には、いったい何が書かれていたのでしょうか。
答えは、個人の基本情報、出国の日程、家族構成、海外との関係、インターネットやSNSの利用状況、ネット上での行動、資産や金融状況、さらには「機密保持と安全保障に関する事項」まで含まれていました。つまり、家族は誰なのか、誰と知り合いなのか、ネットで何を見ているのか、お金をどこに持っているのか。すべてを明らかにするよう求められたということです。
投稿者によると、同じ便に乗る多くの乗客が、記入の途中で手が止まり、用紙を前にどうすればよいのか分からなくなっていました。本人も表面上は平静を装っていましたが、周囲を見渡して初めて気づいたといいます。目測では、同じ便の乗客の半数ほどが搭乗を禁止されていました。飛行機が離陸した時には座席の半分が空いており、現場では悲鳴や嘆きの声が相次いでいたということです。
さらに恐ろしい話は、この後です。
もし記入用紙が最悪のケースだと思っているなら、それでもまだ甘いのかもしれません。
投稿者の前に並んでいた乗客の一人は、その場で職員から厳しい質問を受けました。税関職員は本人のスマートフォンを調べ、SNSやチャットアプリを一つひとつ確認したといいます。異常なものは見つからなかったにもかかわらず、この乗客はそのまま足止めされ、搭乗を認められませんでした。
警察はその場で、「スマホのアプリはどれも最近インストールしたものだ。これは予備のスマホだろう。普段使っているスマホはどこだ?」と問いただしました。その後、この乗客は連れて行かれました。
投稿者の順番になると、職員はまず、用紙に事実どおり記入したかを確認しました。その後、投稿者を含む20人余りにスマートフォンのロックを解除させ、職員に渡すよう要求しました。そして数人ずつ別室へ連れて行き、人と機器による二重チェックを行ったといいます。
一枚の登録用紙と、スマートフォンの検査。これも氷山の一角にすぎません。
すでに海外にいるなら安全なのではないか。そう思う人もいるかもしれません。
しかし、必ずしもそうではないようです。
米国のベテランメディア関係者、方偉(ほう・い)は最近、一枚のスクリーンショットを公開しました。ネットユーザーの「Bailey」はコメント欄で、2週間前、サンフランシスコの中国総領事館で中国人の海外在住者がパスポートの更新を申請したところ拒否され、中国へ戻って関連手続きを行うよう求められたと書いています。
方偉が「本当なのか?」と尋ねると、相手は「間違いなく本当だ」と答えました。費用を払って仲介業者に手続きを依頼しても、やはり拒否されたといいます。このネットユーザーによると、長年この仕事をしてきたものの、このようなケースは一度も見たことがなかったということです。
方偉は、通常、華人が領事館へ行く目的は、大きく分けてビザの申請か、パスポートの更新だと分析しています。しかし今の状況について、「誰も行く勇気がないし、行くこともできない」と述べました。そして、「習近平体制の中国共産党がここまでやるとは、もう何と言えばいいのか分からない。国民を自ら切り捨てているということか?」と嘆いています。
次のケースは、「個人の責任」というものに対する認識を覆すかもしれません。
8月16日、先ほどのブロガーは、さらに別のケースを明らかにしました。ある大学で、一人の学生がスペインに滞在したまま帰国しなかったため、全校6万人の学生が、一律で出国を禁止されたというのです。
流出した動画では、一人の中国人女性がカメラに向かって泣き崩れています。画面には「今日、別室に連れて行かれ、出国禁止」と書かれていました。動画によると、彼女のパスポートが無効にされたのは、2026年8月15日です。
別のネットユーザーもスクリーンショットを投稿し、広西チワン族自治区南寧市の空港で出国審査を受けた際、突然ビザを無効にされたと明らかにしました。理由を尋ねると、出入国審査官から、本人が在籍する大学の学生一人がスペインに滞在したまま帰国していないため、全校6万人の学生について、理由を問わず一律で出国を禁止していると説明されたといいます。
一人の選択の代償を、6万人が一緒に払う。これはいったい、どのような論理なのでしょうか。
ここまでのケースでも十分に衝撃的だと感じるかもしれません。しかし次の話は、さらに言葉を失わせるかもしれません。
日本在住の華人企業家が、家族全員で中国へ帰省したところ、日本へ戻る際に搭乗を制限されました。その後、一家は、いわゆる「小部屋」と呼ばれる別室に、丸7日間拘束されたといいます。最終的に本人は日本国籍を放棄し、中国国籍を回復することを余儀なくされ、さらに10年間の出国禁止を言い渡されました。日本で経営していた企業も、その影響ですべての業務が止まりました。
本人は後に、こう振り返っています。「別室で7日間、眠らせてもらえず、家族は別々に取り調べを受けた。協力しなければ、3人の子どもが孤児になり、辺境地域の児童福祉施設に送られる可能性があると告げられた。子どものことを考え、私はカメラの前で、自分の口から『本人の意思で日本国籍を放棄し、中国国籍を回復する』と述べた」
さらに、自分たち一家5人が日本国籍を取得してから13年、日本で20年以上会社を経営し、資産は約16億円(8000万元)、従業員は40人余りいたものの、それらが一瞬にしてすべて止まったと話しています。
「以前、桂民海(けい・みんかい)が中国国籍を回復させられたというニュースを見たことがある。その時はただのニュースだと思っていた。まさか今……」本人はその先を言いませんでしたが、その言葉が意味することは伝わってきます。
一枚の用紙で、乗客の半数近くが足止めされる。一人が海外にとどまれば、6万人が連帯責任を負わされる。子どものために、国籍の放棄を迫られる。これは映画の中の出来事ではなく、今まさに起きている現実です。
(翻訳・藍彧)
