清華大学元教授、セミナー中に警察沙汰...中国経済への見解めぐり受講生が通報.
鄭毓煌氏は北京で講演中、警察に会場から連れ出され、事情聴取を受けた。(ネット写真)

 清華大学の元教授が北京でセミナーを開催し、中国経済の先行きについて悲観的な見方を示したところ、受講生に通報され、駆け付けた警察官によって講義が一時中断される出来事が起きた。その様子を記録した動画は中国のSNS(ソーシャルメディア)上で拡散され、議論を呼んでいる。

 6月28日、ビジネス評論家として活動する鄭毓煌(ジェン・ユーホアン)元教授は北京の高級ホテルでセミナーを開催していた。鄭氏は、「中国のマクロ経済の見通しは悲観的だが、個々の起業家には依然として楽観的になれる余地がある」と述べ、「マクロ経済の悲観と個人レベルでの楽観」という乖離は、「今後20~30年続くだろう」と予測した。しかし、講義を終える前に警察が到着し、鄭氏を会場外に連れ出した。

 鄭氏はその後、自身のSNSで「経済セミナーが違法集会ではないかと疑われたようだ」「警察と話して、すぐにセミナーを再開できた」と釈明した。

 この出来事は、「学術的な議論を理由に、学生が自分の教師を警察へ通報することはどうなのか」という問題提起とともに多くの注目を集めた。公開されたセミナーの映像では、鄭氏が中国国内の格差や過度なナショナリズムについて率直な意見を述べる様子が確認できる。

 鄭氏は、退職した政府官僚が毎月1万人民元(約237,967円)から2万人民元(約475,934円)の年金を受給している一方、一般市民は生活苦に直面していると指摘した。また、既得権益層についても批判し、例えば北京市民が、自らの利益を守るために戸籍制度の改革や自動車保有規制の緩和に反対していると語った。

 さらに、中国当局が「国際的な視野を持て」と声高に宣伝する傍ら、中国国民の多くは一度もパスポートを取得したことがないという現実を指摘し、「(共産党)体制内」と「(共産党)体制外」の人々を峻別する社会構造にも異議を唱えた。

 鄭氏はまた、国民のナショナリズムをビジネス転用することは有害だと主張した。そして、中国の富豪は先進的な科学技術ではなく、ペットボトル入りの天然水を販売することで財を成したことを例に挙げた。その背景にあるのは、中国の水道水が依然として安心して飲むことができないという現状であり、これは成功の証ではなく、むしろ発展の遅れを示していると述べた。

 また、外国企業を中国市場から排除すれば、中国企業に改善を促す競争圧力が失われると警告した。テスラの従業員向け医療保険制度や退職金制度を例に挙げ、中国企業はそれに対抗したり排斥したりするのではなく、学ぶべきだと語った。

 中国経済の減速については、その主因は世界経済ではなく中国国内にあるとの見方を示した。ベトナム、インド、さらにはアルゼンチンなどの国々は、中国よりも力強い成長を示していると述べ、キューバでも市場改革が進められていることに言及した。インフラ投資については、アメリカでは2026年ワールドカップの会場が投資としてペイする見通しが立っているのに対し、中国では大型イベントのために建設された大型建築は往々にして利活用されず、最終的には納税者が維持費を負担するケースが多いと語った。

 鄭氏に関するこれらの動画はX(旧Twitter)でも大きな議論を呼び、多くのユーザーは「中国において自由に議論する余地がさらに縮小していることを示す証拠」だと考えている。コメントには、「真実を語ることがまた危険になってしまった」という嘆きや、「鄭氏は真実を率直に語る数少ない人物だ」という称賛、さらには通報した学生への批判などが見られた。

 鄭氏は米コロンビア大学ビジネススクールの出身で、清華大学では博士課程の指導教官を務めた。これまでも中国経済に関する評論を行ってきたが、自身のSNSでは「あまり多く語ることはできない」とも述べている。

(翻訳・竹内優子)