中国・海南省三亜市の通りは、わずか数時間のうちに川へと変わりました。水は膝の高さにまで達し、逆流した海水によって群れをなす海水魚が陸に打ち上げられ、路上でピチピチと跳ね回っていました。ズボンの裾をまくり上げて水に入り、素手で魚を捕まえる人も現れ、SNSではすぐに「台風のおかげで海鮮が獲り放題だ」「道路があっという間に漁場になった」といった冗談めいた声が広がりました。

 しかし、広く出回っているこうした映像の裏には、全く別の光景が広がっていました。同じように溢れた水は、マンションの地下駐車場や一般の家庭にも流れ込んでいたのです。暴風雨が襲いかかった時、水はほとんど一瞬にして室内に押し寄せ、テレビやテレビ台、ソファなどがすべて水浸しになりました。林さんという住民は、浸水した自宅を見つめながら、「ベッドまでびしょ濡れで、今夜はもう寝られません」とただ一言つぶやきました。

 三亜の街を一夜にして一変させたのは、今年の台風10号でした。これは2026年に入って初めて中国に直接上陸した台風です。中国の中央気象台によると、7月3日午後6時20分ごろ、台風10号は海南省陵水リー族自治県椰林鎮付近の沿岸に上陸しました。上陸時の中心付近の最大風速は毎秒23メートルに達し、中心の最低気圧は990ヘクトパスカルでした。

 上陸後も、台風の勢いは海南省だけにとどまりませんでした。予報によると、台風は海南島全体を横断してトンキン湾へと抜け、7月4日の夜に広西チワン族自治区とベトナム北部の国境付近の沿岸部に再上陸する見込みです。

 人々の不意を突いたのは、台風がもたらした極端な大雨でした。7月3日から4日にかけての丸一日で、広東省の西部と南部、広西チワン族自治区の東南部、および海南島の一部地域で激しい雨が降りました。海南島南部の一部では猛烈な雨となり、局地的な降水量は250ミリから300ミリに達しています。海上でも、南シナ海の大半、瓊州海峡、トンキン湾一帯で強風が吹き荒れ、一部の海域では最大瞬間風速がおよそ30メートルに達しました。

 このような猛烈な台風を前に、海南省の都市機能はほぼストップしました。7月3日と4日は海南島を発着する列車がすべて運休し、島を一周する高速鉄道や近郊列車も全線運休となりました。三亜鳳凰国際空港は3日午後5時から航空機の発着を一時停止し、この日だけで92便が欠航しています。海南島と中国本土を結ぶ瓊州海峡のフェリーも、早くも3日午前2時には運航を見合わせており、運休は1日から2日間続くと予想されています。学校の休みも前倒しされ、三亜市のすべての小中学校で3日昼から休校措置が取られました。

 風雨の影響は、決して海南省だけにとどまりませんでした。広東省では、恵州、深圳、広州、湛江など多くの地域で相次いで台風警報が発令され、一部の河川では2メートルから6メートルの増水が発生する見込みで、警戒水位を超える観測所も出ると予想されました。海上の作業施設からは事前の避難が行われ、恵州以西の海域にある35基の洋上風力発電施設の作業員1772人全員が陸に退避しました。隣接する広西チワン族自治区の沿岸部でも、3日午後の時点で886隻の船舶が港に避難し、渡し船、観光地、海上レジャー施設は全面的に営業を取りやめました。

 台風はやがて過ぎ去り、水もいつかは引いていきます。しかし、その被害を受けた人々にとって、この一夜が残したものは、片付けなければならない泥だけではありません。三亜市に住むあるネットユーザーは、「前日までは透き通った美しい海だったのに、一夜にして濁った泥水の海になってしまった」と語りました。また、水に流されたすべてを眺めながら、「1年間の努力と苦労が、たった一夜で何もかも消え去ってしまった」と書き込む人もいました。さらには、「一晩にして借金を背負うことになった」と、より切実な声を上げる人もいます。

 海を頼りに生きる人々にとって、これこそが天候次第の暮らしということなのかもしれません。水が引き、街が再び姿を現した時、打ち上げられた魚は誰かに片付けられるでしょう。しかし、水に浸かってしまった日常は、また一日一日と、少しずつ立て直していくしかないのです。

(翻訳・吉原木子)