先日、中国福建省福州市台江区の住宅密集地で、突如大規模な火災が発生しました。現場は黒煙に包まれ、激しい炎とともに爆発音も鳴り響きました。6月9日の夜、現地は大雨に見舞われていたにもかかわらず、火は猛烈な勢いで燃え広がりました。この不自然な火災はすぐさまインターネット上で大きな注目を集め、福州市内で以前から囁かれていた「立ち退き前には必ず火事が起きる」という噂を、再びクローズアップさせています。

 報道によれば、出火したのは6月9日の午後9時55分頃、台江区の古い市街地です。レンガ造りや木造家屋が密集するこのエリアは、大型病院が近いため、多くの高齢者や病院の介護スタッフが暮らしています。当日の夜、炎は夜空を赤く染め上げるほどで、目撃者によれば、燃え盛る炎の中から何度も爆発音が聞こえたそうです。数時間の消火活動の末、翌日未明にようやく鎮火しました。地元当局が74世帯の住民全員と連絡を取り、死者は出ていないことが確認されています。軽傷を負った2名も、手当てを受けて帰宅しました。

 しかし、一見不慮の火災に思えるこの出来事は、人々に大きな疑問を抱かせました。当日の福州市内は雨が降り続いていたため、「これだけの大雨なのになぜ大火事になるのか」といった驚きと疑念の声が相次ぎました。そして議論が進むにつれ、人々の関心は「立ち退き」というデリケートなキーワードに集中していったのです。

 事情を知るネットユーザーによれば、火災が発生した地区は市の中心部の一等地にあるものの、立ち退きの補償額をめぐる交渉が難航し、再開発プロジェクトが長らく頓挫していました。そのため、「福州市内で火災が起きない立ち退きなどあるのか」「立ち退き前には必ず燃える。これはもう福州の『恒例行事』だ」といった不穏な憶測が飛び交っています。「どの土地も正式な取り壊しが始まる前に、必ず一度は大火事の『洗礼』を受けることになっている」と指摘する声も上がっています。

 実際のところ、こうした「不可解な火災」は、長く過酷な立ち退き攻防戦における、最も極端で目立つ一場面に過ぎません。都合よく火災が発生する前、立ち退きに同意していない住民たちは、すでに想像を絶する精神的、肉体的な苦痛を経験しているのが常です。都市の再開発と商業的利益という巨大な原動力のもと、立ち退きを迫る側はコスト削減と工期の短縮を図るため、住民の実際の生活事情や市場価値とは大きくかけ離れた低い補償額を提示することが少なくありません。折り合いがつかず正式な交渉が暗礁に乗り上げると、一部の業者は外部の人間を雇い入れたり黙認したりして、法律の網の目をくぐるグレーな手段で住民を追い詰め始めます。

 古い街区に取り残された住民にとって、平穏な生活の崩壊は、しばしば生活インフラの遮断から始まります。厳しい寒さや猛暑の時期に、予告なしに行われる「電気や水道の停止」です。冷蔵庫の食べ物は腐り、高齢者は暗闇での階段昇降を強いられ、最低限の飲料水の確保やトイレの利用さえも困難になります。それに続くのが、さまざまな形での脅迫や嫌がらせです。何者かが深夜にドアを激しく叩いたり、壁に脅し文句を赤いペンキで吹き付けたりします。住民の通勤経路に建築ごみを不法投棄したり、ひどい場合には家の前に排泄物を積み上げたりすることすらあります。このような執拗な精神的圧力の目的はただ一つ、住民の心理的防衛線を完全に破壊し、恐怖と無力感の中で、一方的な立ち退き合意書にサインさせることです。

 しかし、こうした常套手段にも屈しない住民がいる場合、さらに極端で責任追及が困難な「事故」が次々と引き起こされるようになります。近年の報道を振り返ると、福州市の各地で確かにこのような出来事が頻発しています。例えば2019年1月の夕方には、市内にある約600平方メートルの立ち退き予定の民家で突如大火災が発生し、100人近くの消防隊員が現場に駆けつけました。この時すでに、多くのネットユーザーが、こうした「放火まがいの立ち退き」は偶然を装った必然であると指摘していました。

 過去に遡っても、同じような悲劇が絶えず繰り返されています。2016年11月の夜には台江区の民家で大火災が発生し、180名近くの隊員が出動しました。さらに2011年7月の未明にも、市内の立ち退き予定の居住棟で不可解な大火災が発生し、建物が完全に焼け落ちています。近隣住民の証言によれば、周辺の家屋は立ち退き交渉が泥沼化しており、十数世帯が留まっていたそうです。火災の夜、隣の建物の壁は焼けつくように熱くなり、恐怖に怯えた住民は延焼の恐怖で一晩中眠れなかったといいます。

 次々と起こる不自然な火災と、生活インフラの遮断や脅迫といった暴力的な立ち退きの強要。これらの一連の出来事を結び合わせたとき、度重なる「偶然」を単なる事故として片付けることは極めて困難です。「もう20年以上も燃やし続けているのに、どうしてまだ燃やし尽くせないのか」。あるネットユーザーが放ったこの皮肉は、この暗黙のルールに対する市民の無力感と悲哀を如実に物語っています。繁華街の片隅でブルドーザーが押し潰しているのは、古いレンガや瓦だけではありません。そこに住む人々の正当な権利と、生活の尊厳そのものです。「放火まがいの立ち退き」や数々の卑劣な嫌がらせが、あたかも暗黙の了解のように横行してしまう背景には、巨額の利益を前にした一部の権力の傲慢さと、法的な監視機能の深刻な欠如が垣間見えます。住民の生命や財産の安全をないがしろにするこうした行為は、急激な都市化が進む中で生じた、深く癒えることのない社会の傷跡と言えるのではないでしょうか。

(翻訳・吉原木子)