北京市がドローンの規制をさらに強めています。北京市人民代表大会(議会に相当)の常務委員会はこのほど、「北京市無人航空機管理規定」の改正案を可決しました。施行は11月15日です。これまでの飛行禁止、販売禁止、持ち込み禁止に加え、今回は「全域保管禁止」という原則が新たに定められました。北京市内では個人も企業も、ドローンやその主要部品を所持・保管することができず、倉庫や一時的な保管場所を設けることも認められません。電源を切って自宅の棚にしまっておくだけでも、今後は違法になります。

 前回の規定が施行されてから、まだ半年もたっていません。北京市は今年3月、「首都の低空の安全が脅かされている」として、当時「史上最も厳しい」と言われたドローン規制を打ち出し、5月1日から施行しました。この時点で個人による飛行や売買、持ち込みは事実上禁止され、すでに持っている機体は本人名義での登録が義務づけられていました。当時は「持っていてもいいが、北京では飛ばせない」という考え方でした。それが今回、持つことすら許されなくなりました。

 新しい規定では、禁止に反して飛行させた場合、警察が機体を没収したうえで1000元から1万元の罰金を科します。所持や保管、持ち込み、販売などに違反した場合は、個人に500元から5000元、企業に5000元から5万元の罰金が科されます。テロ対策や治安維持、災害救助、大規模イベントのほか、学校や研究機関、企業、農林業での利用などについては、警察の審査を経たうえで特例として認められます。

 市民がすでに持っているドローンについて、当局は四つの処分方法を示しています。自分で北京の外へ持ち出す、郵送で市外へ送る、廃棄して回収に出す、指定の窓口で買い取ってもらう、の四つです。ネット上に出回っている説明によると、10月31日までに買い取りに出せば補助率は約3割、上限は3000元で、11月1日以降は補助が半分になります。すべての機体は11月15日までに北京から運び出さなければなりません。

 同じ時期に、さらに広い範囲での規制も明らかになりました。中国の民間航空当局がノータム(航空情報)を発出し、天安門周辺を中心とする半径300キロの円を「首都飛行禁止区域」に指定しました。運用開始は9月20日で、地上から高度無制限まで24時間適用され、期限は「恒久」とされています。範囲は東が秦皇島の北戴河、西が山西省の大同、南が山東省の徳州にまで及び、天津や石家荘、保定、唐山、張家口、承徳もすべて含まれます。旅客機の運航や救助活動などを除き、ほかの飛行は制限の対象になります。中国メディアは当初、短い記事で伝えただけで具体的な範囲には触れておらず、詳しい座標はアメリカ連邦航空局のウェブサイトに掲載された通知で初めて明らかになりました。

 一連の動きは、今年6月に起きた「中国尊」衝突事件と関係があるとみられています。6月26日の夕方、北京郊外の飛行場を離陸した小型機が予定のルートを外れ、北京で最も高いビル、中信大厦(通称「中国尊」)に衝突しました。操縦士は死亡し、地上にいた13人がけがをしました。当局はその後、66歳の劉という姓の操縦士が「長年、不眠と不安に悩んでいた」とし、個人的な理由による犯行だと発表しています。事件のあと、中国全土でレジャー用の小型固定翼機が一時飛行停止となりました。

 SNS上では、いくつかの出来事を並べて論じる投稿も見られます。中国尊への衝突、イスラエルによるハマス幹部の標的殺害、アメリカによる武装組織指導者へのピンポイント攻撃、そして今年のイラン最高指導部を狙った大規模空爆です。投稿者は、現代の戦争では必ずしも大軍を送り込む必要はなく、一人の人物を見つけ出せば事足りる場合もあると指摘しています。そのうえで、北京が周辺300キロの空を厳しく管理し始めたのは事故を防ぐためなのか、それとももっと過激な事態に備えるためなのかと疑問を投げかけています。

 また、今回の規制の本当の背景は、北京市内で光ファイバー制御のドローンが使われた形跡が見つかったことだとする投稿も出回っています。投稿によると、海外の技術者が北京で技術面の準備を済ませ、倉庫やオフィスを借りたうえで、技術の知識がまったくない作業員を雇って機体の組み立てと通信設定をさせていたといいます。最終的には光ファイバー回線とインターネットを通じてドローンを遠隔操作し、窓やベランダから直接飛ばして攻撃する手口だったとされています。光ファイバーで制御するドローンは無線信号を使わないため、ウクライナの戦場でも多用されており、従来の電波妨害型の対策ではほとんど防げません。この情報は今のところ確認が取れていませんが、事実であれば、新しい規定が「保管」や「倉庫」まで禁止の対象にした理由も説明がつきます。

 規定の発表後、ネット上では疑問の声が相次いでいます。

 「外国人が持っちゃダメなのはまだわかるけど、なんで自国民までダメなの?身内を警戒してるってこと?」

 「飛ばすなっていうのは安全のためって言えなくもない。でも買って家に置いとくのもダメってなると、話が全然違うでしょ。結局この理屈だと、『安全』って言葉さえ出せば、個人の財産も選択も全部後回しにされるんだよ。」

 皮肉まじりの書き込みもあります。

 「次は一軒一軒にテレスクリーンを付けてドローンがないかチェックして、玄関ごとに手荷物検査機と検査員を置くんだろうね。」

 テレスクリーンは、オーウェルの小説『1984年』に登場する監視装置です。

 完全には執行できず、細かい運用ルールもない規定は、誰もが違反者になり得る状況を生み、当局は相手を選んで取り締まれるようになるという指摘もあります。そうした状況が権力の裁量を広げ、利権の温床にもなるというのです。こんな声も上がっています。

 「昔は銃を取り上げて、今度はドローンか。あいつらは、どんな物でも好きなように決められるんだよ。」

 飛行禁止から販売禁止へ、持ち込み禁止から保管禁止へ。北京はわずか半年足らずで、身近な電子機器のひとつを街から締め出したことになります。