近年、経済成長の鈍化や不動産市場の低迷、債務問題の深刻化が重なり、中国の建設業は「冬の時代」を迎えています。かつて膨大な雇用を生み出したこの基幹産業は現在、深刻な人材流出に直面しています。データによると、わずか4年の間に建設業に従事する農民工(出稼ぎ労働者)の数は1400万人以上も激減し、マクロ経済の構造転換に伴う痛みを如実に映し出しています。
農民工の全体規模は依然として拡大を続けていますが、就業構造にはすでに大きな変化が生じています。中国国家統計局の「2025年農民工モニタリング調査報告」によると、2025年の全国の農民工総数は初めて3億人の大台を突破し、3億100万人に達しました。しかし、農民工が主に従事する卸売・小売、交通・倉庫、宿泊・飲食、住民サービス、製造、建設の6大産業の中で、建設業の雇用動向だけが極めて特異な動きを見せています。
表面上、建設業の給与待遇は非常に魅力的に見えます。過去4年間の統計において、建設業の月平均収入は常に6大産業のトップを維持しています。2016年から2025年にかけても、賃金は月額およそ8万5千円 (3687元)からおよそ13万5千円 (5880元)へと上昇し、上昇幅と成長率で他産業をリードしています。しかし、この「高給」とは裏腹に、就業者数は2021年を境に急激な減少に転じました。現在は4155万8700人にまで縮小し、年平均で325万人もの労働力が流出しています。
この転換点は、中国の不動産市場が好調から低迷へと向かう時期と完全に重なっています。2021年はまさに建設業が冬の時代に突入する転換点でした。2022年以降、全国の不動産開発投資の伸び率はマイナス成長から抜け出せずにいます。2021年から2025年の間に不動産開発投資総額は43.9%落ち込み、これに伴い建設業の農民工数も25.2%急減しました。不動産開発主導の経済成長モデルはすでに持続困難となっており、これに依存していた建設業の労働力需要が縮小したのは必然の結果です。
雇用の激減に加え、いわゆる高収入が実際には「見せかけ」であったことも、建設業離れを加速させました。建設業の多くはレンガ運びや鉄筋組み立てなどの過酷な肉体労働であり、劣悪な環境で1日十数時間働くことが常態化しています。さらに深刻なのは、表面上の高給の裏に隠された構造的な問題です。近年、不動産業界でデフォルトが頻発し、多くの建設プロジェクトが頓挫しています。その結果、多重下請け構造に弊害が起こり、年末の「賃金未払い」問題が再び浮き彫りになりました。1年間苦労しても、月平均およそ13万5千円( 5880元) という賃金が期日通りに全額支払われる保証はありません。加えて、臨時雇用が多く労災や社会保険などのセーフティネットが不十分なため、事故が起きれば家庭はたちまち困窮します。このような高リスクで保障に乏しく、賃金未払いの不安を抱える労働環境が、現場の信頼を完全に失わせました。
同時に、この1400万人の流出は、労働者の高齢化と世代間の違いがもたらした必然的な結果でもあります。建設業を支えてきた農民工の高齢化が進む中、近年、多くの地域で安全上の理由から高齢労働者の就労制限が設けられ、60歳以上の男性および50歳以上の女性の現場就労が原則禁止されました。かつて中国の急速な都市化を支えた第一世代の労働者たちは、いま一斉に現場からの退場を余儀なくされています。
一方で、1990年代、2000年代生まれの若い世代の農民工は全く異なる職業観を持っています。過酷な環境に耐え忍んだ親世代とは異なり、尊厳や自由、労働者の権利をより重視する若者の間では「工事現場で働く位なら、フードデリバリーの配達員になる」というのが共通の認識です。このように、建設業における労働力の世代間継承は事実上すでに途絶えています。しかし、現場を離れた若い働き盛りの農民工たちが、製造業やサービス業に新たな活路を見出そうとした先の現実も厳しいものでした。建設業からあふれ出た労働力は、フードデリバリーや配車サービスといったギグエコノミー分野に急速に流入しました。その結果、雇用の受け皿は瞬く間に飽和し、深刻な過当競争を引き起こしています。国内の多くの都市で配車サービスの供給過剰警告が発せられ、配達員の報酬単価も下落し続けています。彼らにとって、これは工事現場での「肉体的な消耗」が街頭での「アルゴリズムによる管理」にすり替わっただけであり、依然として収入減少の危機に直面しています。サービス業や製造業が、この巨大な労働力を完全に吸収することはもはや困難です。
経済全体が停滞する中、農民工が都市部で新しい仕事を見つけるハードルは高まり、彼らの居場所はさらに狭められています。都市部に留まることが難しくなった結果、多くの農民工が帰郷を余儀なくされ、地元の地方都市や農村で生計を立てようとしています。この巨大な集団の動向は、すでに当局の強い警戒を引き起こしています。昨年11月、中国農業農村部は失業問題を議論する会議を開き、「大規模な帰郷と地元での滞留」現象に対して強い懸念を示しました。活気を失う建設現場、ギグエコノミーの過度な競争、そして農民工たちのやむなき帰郷。これらの一連の流れは、単なる基幹産業の衰退を超え、複雑な経済転換期にある今日の中国で、何千万もの一般家庭が直面する生活の苦境を深く映し出しています。
(翻訳・吉原木子)
