「温水でカエルを茹でる」 国境なき記者団が中国共産党の認知戦を暴く
(pxhere, CC0 パブリックドメイン)

 中国共産党は、台湾に対して言葉による攻撃や武力による威嚇を行うだけでなく、絶えず認知戦を展開している。

 「国境なき記者団」が発表した調査によると、中国共産党政府と協力関係にある中国企業は、健康や自己啓発を主に発信するFacebookアカウントを通じて、時折、中国共産党の政治的目的を盛り込んだ記事を紛れ込ませ、外部からは気づきにくい認知戦を展開している。

 ロイター通信も中国共産党が国民党の政治家や台湾のインフルエンサーを利用して、台湾で統一戦線工作を行っている、と指摘している。

対台湾認知戦

 「国境なき記者団」の調査によると、健康・ウェルネスを主なテーマとするFacebookアカウントの「50+健康生活」は、今年3月に米国がイランとの戦争に参戦した直後、イランは米国を打ち負かす必要はなく消耗戦に転じるべきだ、と主張する長文の分析記事を投稿した。その内容は中国共産党当局の主張と極めて似ていた。当該投稿はその後削除されたものの、スクリーンショットによってその内容は残されている。

 ある調査によると、河北省の「無境界集団」という民間企業は数百ものこうした専用ページを管理しており、時折、中国共産党の立場に沿った記事を掲載しているという。2020年6月、中国共産党傘下の秦皇島放送局は、「無境界集団」との戦略的提携関係を結んだと発表した。このような国営メディアと民間企業との提携は、あまり見られない。

 2025年9月、SNSの「Threads」上で、台北の地下鉄で子供が倒れているにもかかわらず、周囲の誰も助けようとしない、という動画が拡散された。調査の結果、撮影場所は中国の杭州の地下鉄駅であることが判明した。米ランド研究所の研究員である王宏恩氏がさらに調査を進めたところ、当該投稿のアカウントが「無境界集団」に属していることが明らかになった。

 ネットユーザーらは、「こうしたコンテンツが注目を浴びるような見出しを使ってユーザーのアクセスを誘導しており、台湾のイメージを悪くすることこそが目的だ」と指摘している。

 「真の統一戦線とは、中国を好きにさせることではなく、自国の政府を憎ませ、台湾を嫌悪させることだ」。

 「台湾政府を中傷するデマが本当に多い」。

 台湾国家安全局は、「無境界集団」を、中国共産党が台湾で展開する認知戦における協力組織の一つとして指定した。『2025年中国共産党の対台湾認知戦作戦手法の分析』という報告書によると、同社はFacebook、Threads、Xなどのプラットフォームでアカウントを運営しており、そこで発信されるコンテンツは主に「非政治的またはソフトなテーマ」を扱っているが、時折政治的なメッセージを織り交ぜている。その拡散戦略は、まず影響力を拡大しその後政治的な投稿を公開して世論に影響を与えるというものだ。

台湾での統一戦線

 フランス国際放送(RFI)はロイター通信の報道を引用し、中国共産党が台湾の野党や台湾のインフルエンサーによる政府批判を利用して情報戦を展開し、与党への攻撃を拡大していると報道した。

 中国共産党の国営メディアは、TikTokにとある動画を投稿した。内容は台湾野党である国民党の鄭麗文主席が頼清徳総統を非難し、「独立を追求すれば中国の侵略を招く」と指摘する動画である。この動画はすぐにFacebookやYouTube、その他台湾の人気プラットフォームにも広まった。

 台湾情報環境研究センターの分析によると、中国共産党は、国民党の政治家や台湾のインフルエンサーによる与党への公然たる批判を、国営メディアや中国のソーシャルメディアを通じて与党に反対する大量のメッセージへと変換し、拡散させている。

 これらの動画は再編集され、台湾の人々に馴染みのある言葉遣いや訛り、人物像を用いて、台湾の人々がよく利用するFacebook、TikTok、YouTube上で拡散されている。時には繁体字で装飾され、中国共産党の介入の痕跡を曖昧にすることもある。

 報告書によると、中国共産党が最も好んで利用しているのは鄭麗文であり、次いで台湾のネット有名人「館長」である。

 鄭麗文は「私は中国人だ」と繰り返し公言しており、2026年の「鄭習会談」における習近平の主張と強く呼応しているため、中国共産党が「一つの中国」への帰属意識を誘導する上で最もよく利用している。

 ネット有名人「館長」は「米国への疑念、日本への敵意、台湾の敗北論」をよく主張しており、彼が中国を旅行した際に「中国は台湾より進んでいる」と感嘆した動画は、中国共産党の官製メディアによって宣伝用テンプレートとして加工さえされた。

認知戦への対処法

 台湾の与党は記者会見で、中国共産党がAIを活用して進化させた認知戦に対し、台湾は真剣に対処しなければならないと述べた。

 中国共産党は、ソーシャルメディアのアカウントを大規模に監視し、主要なオピニオンリーダーを特定するとともに、AIを用いてコンテンツを生成・改変し、擬人化されたアカウントと組み合わせて、様々なソーシャルメディアプラットフォームで同時並行的に活動を行っている。これは、中国共産党の情報戦が全面的にエスカレートし、認知への影響から世論操作へと移行していることを示している。

 台湾の与党は、中国共産党が台湾を統一戦線の実験場として利用し、その成功モデルを他の民主主義国へと拡大しようとしていると強調している。台湾社会は、メディアリテラシーと判断力を全面的に強化しなければならない。

 最近、「無境界集団」が日本語と英語の専門人材を募集する広告を出していることから、同社は引き続き事業を拡大しており、新たな情報発信分野への参入を計画し、その影響力を急速に世界へと広げようとしていることがうかがえる。

(翻訳・文遠)