ナタ自動車が経営再建手続きに入ったあと、再び中国中央テレビに名指しされ、世論の焦点となりました。4月21日夜、中国中央電視台の番組『焦点訪談』は、「企業誘致か、それとも損失を招くのか」というタイトルで特集を放送し、ナタ自動車の親会社である合衆新能源が、2021年から2023年の3年間で累計約4300億円(183億元)の純損失を出していたと明らかにしました。さらに、各地の国有資本による投資も回収が極めて困難な状況にあると指摘されています。
一見すると、この報道は企業経営の失敗や地方政府の過剰な誘致競争を問題視したものに見えます。しかし、実際には、中国の新エネルギー車産業が急拡大したあとに抱える、より深い構造的な問題を映し出しています。
ナタ自動車は、決して無名の企業ではありません。かつては中国のEV業界で最も注目されたブランドの一つでした。2022年には年間販売台数が15万台を突破し、一時はEV販売でトップに立つほどの勢いを見せていました。当時は、資本市場、地方政府、産業政策という三つの力が重なり、ナタは「中国EV成功モデル」の代表例とまで見られていたのです。
その勢いのまま、浙江省桐郷市、江西省宜春市、広西チワン族自治区南寧市などに生産拠点を次々と展開し、海外市場への進出も急速に進めていきました。
最も輝かしい時期には、香港もそのグローバル戦略に組み込まれていました。2023年、ナタ自動車は香港サイエンスパークと協力覚書を締結し、国際本部の設立を発表しました。香港の金融・研究開発の基盤を活用して世界市場に進出する計画でした。その後、香港政府から補助金や資金支援を受ける可能性も報じられました。
これらの計画が後にどの程度実現したかはともかく、当時の市場ムードは極めて明確でした。新エネルギー車は政策による奨励対象と見なされており、「電動化」「海外進出」「技術革新」といったキーワードを掲げれば、資金や支援が集まりやすい環境にあったのです。
しかし、この華やかな状況の裏で、ナタの収益構造は非常に脆弱でした。公開されたデータによると、合衆新能源は3年間で約4300億円(183億元)の赤字を計上し、1台販売するごとに約190万円以上の損失が出ていました。
つまり、販売台数の増加は健全な経営にはつながらず、むしろ赤字を拡大させていたのです。
やがて資金供給が鈍化し、市場競争は激化し、価格競争も全面化しました。その結果、資金は完全に枯渇しました。2024年以降、ナタ自動車の各地の工場は次々と稼働停止に追い込まれ、2025年には経営再建手続きに入ることになります。創業者の方運舟も債務不履行者リストに載せられました。
ナタ自動車の崩壊によって影響を受けたのは、この企業だけではありません。
中国中央テレビの報道では、江西省宜春市の事例が重点的に取り上げられました。映像には、広さ約600ムーの工場が映し出され、かつて稼働していた生産ラインはすでに埃に覆われていました。
この地方都市は企業誘致のために、財政的な余力を削ってまで投資を行い、自動車産業の基盤がほとんどない中で、総額約1200億円(50億元)の契約を結びました。地方政府は土地や資金を提供するだけでなく、本来企業や市場が負うべきリスクまで背負っていたのです。
こうした状況は宜春市だけではありません。ナタ自動車の他の拠点である南寧市や桐郷市でも、地方の国有資本が関与していました。
ここ数年、多くの地方政府は新エネルギー車を新たな経済成長の柱と位置づけ、BYDやCATLの成功を再現しようとしてきました。不動産市場の冷え込みや土地収入の減少を背景に、新たな税収や雇用を確保する必要があったためです。その結果、企業誘致競争は激化し、1社の自動車メーカーに対して複数の都市が優遇条件を提示する「持ち出し型」の誘致が常態化していきました。
ナタ自動車の海外展開も同様に行き詰まりました。タイでは販売代理店が約9.8億円(2億バーツ)の未払い金の支払いを求めて集団で動き、政府も現地生産要件を満たしていないとして補助金の支払いを停止しました。インドネシアやブラジルでも販売ネットワークは完全に停止しています。かつての「海外戦略」は、結果として債務の拡大に終わりました。
では、なぜ今このタイミングで中国中央テレビはナタ自動車を取り上げたのでしょうか。その狙いは、新エネルギー車産業そのものを否定することではありません。すでに経営破綻に陥った企業を例にすることで、地方政府に対して財政規律の重要性を強調する意図があると考えられます。
ナタ自動車は非常に象徴的な存在でした。かつての販売トップでありながら急速に崩壊し、複数の地方国有資本が深く関与し、補助金政策もグレーゾーンに位置していたのです。
そのため、「一部の地方政府による越権行為や企業の経営失敗」として問題を整理することができる一方で、「国家の産業政策そのものの失敗」には踏み込まずに済むという側面があります。しかし、ナタ自動車の問題は決して個別の事例ではありません。宜春市の国有投資会社の責任者は取材に対し、「この投資は市場原理に合っていなかった」と認めました。この言葉は、ここ数年の地方政府の投資判断の本質を端的に示しています。
土地依存の財政が限界に近づき、従来の経済成長モデルが機能しなくなる中で、新エネルギー車、太陽光発電、リチウム電池といった分野は「最後の希望」として位置づけられてきました。しかし、その結果として深刻な供給過剰が生まれました。
公式データによると、2025年の中国自動車産業の総生産能力は5000万台を超え、実際の生産量の約2倍に達しています。過剰な供給は市場の繁栄ではなく、業界全体の利益の低下を招きました。
2025年の自動車業界の利益率はわずか4.1%で、2019年の6%以上から大きく低下しています。つまり、約400万円の車を販売しても、得られる利益は最新のスマートフォン1台分にも満たない水準です。
これに対し、トヨタ自動車の2024年から2025年にかけての純利益は、中国の上場自動車企業上位18社の合計の2.4倍に達しています。この差は非常に大きなものです。
高合、バイトン、ボルジュン、そしてナタと、新興EVメーカーの破綻は次々と続いています。戦略国際問題研究所も、中国のEV業界は激しい競争の中にあり、多くの企業が生き残れない可能性があると分析しています。
本来であれば企業が負うべきリスクを公的資金で補い、政策の追い風によって問題を覆い隠す。その結果として最終的な負担を背負うのは納税者です。
宜春市に残された、埃に覆われた生産ライン。そこに映し出されているのは、単なる一企業の失敗ではありません。それは、ある一つの成長モデルそのものが限界に達したことを示す象徴でもあるのです。
(翻訳・藍彧)
