中東情勢の緊迫化が続く中、イスラエルの各地ではロケット弾やドローンによる攻撃が頻発しています。先日、中国大使館は緊急退避勧告を出し、現地に滞在する中国人に早期の帰国や避難を呼びかけました。しかし、生命の危機に直面しながらも、数万人に上る現地労働者のうち、少なからぬ人々が退避を拒む選択をしています。命の危険と経済的困窮という板挟みの中で、労働者たちはあまりにもシビアな本音を口にしています。「貧困で死ぬくらいなら、爆弾で死んだ方がましだ」と。
関連業界の推計によると、現在イスラエルで建設や内装等の仕事に従事する中国人労働者は約5万〜6万人に上ります。Xなどで拡散されている動画からは、労働者の日常が戦争の影に覆われつつも、ほとんどの建設現場が稼働している様子がうかがえます。ある作業員は動画内で「仕事は通常通りです。防空サイレンが鳴れば避難しますが、もう慣れました」と語り、当面は帰国しないと明言しています。また労働者の寮で撮影された別の動画でも、作業員が「ここで爆死しても、帰国して飢え死にするわけにはいかない」と率直に語っています。生計を最優先する彼らの悲痛な決断は、ネット上で大きな注目を集めています。
彼らが「危険を冒してでも帰国したくない」と考える最大の理由は、高額な給与と安定した待遇にあります。海外メディアの取材によると、イスラエルの建設現場では一般的に12時間労働が敷かれていますが、収入は中国国内の同等の仕事をはるかに上回ります。一般作業員の基本月給は3万〜4万元(約60万〜80万円)、大工などの技術職になると月収7万〜8万元(約140万〜160万円)に達することもあり、給与の遅配もほとんどありません。ある大工は、イスラエル出稼ぎには5万〜十数万元の仲介手数料が必要で、枠を勝ち取るための「抽選」すらあると明かしています。彼は「大金を払って来た以上、日給1800元の今の仕事は簡単には手放せない。200万元を稼ぐまでは絶対帰国しない」と語っています。
高給に加え、医療や労災保障が比較的整っている点も彼らが現地に留まる理由です。前述の大工は最近、労災で現地の病院にて手術を受けましたが、病院側は高水準の医療とともに専属の中国語通訳まで手配してくれたといいます。さらに、中国国内の建設業界では高齢労働者の就労制限が厳格化する一方、イスラエルの一部中国系プロジェクトでは雇用年齢の上限を60歳まで引き上げています。これが、国内で職探しが困難な1970年代生まれの中高年労働者にとって、家族の生計を支える貴重な機会となっているのです。中国にいるある妻は、夫がイスラエルで鉄筋工をしており家族は毎日気が気でないものの、親の介護と子育てのためには危険を冒すしかないと胸の内を明かしました。
労働者が危険を承知でイスラエルに留まる現象は、中国国内が直面する深刻な雇用不安や経済低迷と対照的な現実を浮き彫りにしています。今年に入り、国内の労働市場はさらに冷え込んでいます。3月上旬、春節の連休直後にもかかわらず、南東沿海部などの主要工業地帯では異例の「早期帰郷ラッシュ」が見られました。上海のある駅で撮影された動画には、職探しに失敗した大量の出稼ぎ労働者が早々に故郷へ引き返す様子が映り、「今年一番乗りの帰省客だ」と自嘲する音声も収められています。ネット上でも就職難を嘆く声は多く、帰郷は他に選択肢がないゆえの苦肉の策と受け止められています。マクロ視点では、外資企業の移転や事業縮小、店舗閉鎖に伴い、減給やリストラ、給与未払いが急増しています。これが市民の消費意欲低下を招き、実体経済は悪循環に陥っているのです。
雇用市場の冷え込みは、北京や上海といった大都市の周縁層へも波及しています。2025年半ばに深セン、広州、上海、北京を取材したブロガーの記録によれば、高架下や地下鉄通路、ファストフード店で夜を明かす路上生活者が増加傾向にあります。注目すべきは、彼らの顔ぶれに起きている構造的な変化です。従来のホームレス層に加え、リストラや工場移転で収入を絶たれた元会社員や出稼ぎ労働者、事業に失敗した個人事業主などが大量に路上へ押し出されています。深センの羅湖広場等では求職者が段ボールを敷いて夜を明かし、上海では深夜営業の店舗が臨時シェルターとなっています。北京の路上生活者の中には、就活に挫折した大卒の若者の姿さえ見受けられます。彼らは政府の公式統計からはこぼれ落ちており、現在の中国経済が抱えるリアルな断面を浮き彫りにしています。
一方には戦火の危険と隣り合わせでも高額な報酬が得られる異国があり、他方には経済的閉塞感に覆われ雇用機会が奪われつつある祖国があります。イスラエルの中国人労働者が退避を放棄する選択は、表面上は戦争リスクへの個人的見解の違いに見えます。しかし実際には、生活の重圧にあえぐ労働者たちの経済的安定に対する切実な渇望を反映したものに他なりません。経済専門家は、大都市周縁部で失業者層が拡大する中、いかに人々の生活困窮を和らげ、雇用市場を活性化させるかが、社会安定と経済回復に向けた最重要課題だと指摘しています。国家レベルの資金配分において人々の生活保障に重点を置けなければ、経済問題から転化した「生き残ることへの不安」は、長期的には社会の安定基盤に対する深刻な脅威となる可能性があるのです。
(翻訳・吉原木子)
