「生きたまま臓器摘出?」 名古屋上映で広がる衝撃.
3月22日、ドキュメンタリー映画『国家の臓器(State Organs)』の上映会が名古屋市のイーブルなごやホールで開催された(新唐人)

 ドキュメンタリー映画『国家の臓器(State Organs)』の上映会が名古屋市のイーブルなごやホールで開催され、来場者の間で強い衝撃と議論が巻き起こっている。2023年にカナダで制作された本作は、拘束中に行方不明となった家族を20年以上にわたり捜し続ける中国人家族の姿を軸に、臓器移植を巡る深刻な人権問題に迫る内容だ。上映は3月22日に行われ、入場無料という形で一般公開されたこともあり、幅広い層の観客が訪れた。

 本作は、米国の権威ある放送賞「ピーボディ賞」を受賞したレイモンド・チャン監督が7年の歳月をかけて制作したもので、第97回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門の選考対象にも選ばれている。さらに、レオ・アワードの同部門最優秀監督賞や最優秀音楽賞、ニューヨーク・マンハッタン映画祭での最高人権ドキュメンタリー賞など、国際的な評価も高く、これまでに18以上の映画祭で受賞歴を持つ。

 会場では上映後、観客や関係者へのインタビューが行われ、それぞれの立場から率直な感想や問題意識が語られた。四日市市の萩須智之市議は「これまでの作品とは異なり、実際の被害者家族の視点から描かれている点が非常にリアルで、関係者の心の痛みが強く伝わってきた」と述べた。萩須智之市議自身も以前から中国における臓器摘出問題を認識していたが、「改めて家族の苦しみや悲しみが強く印象に残った」と語る。

四日市市の萩須智之市議(新唐人)

 また、日本国内における情報発信の難しさにも言及し、「メディアが十分に報道しない背景には、政治的な配慮や制約があるのではないか」との見方を示した。その上で、インターネットや第三国からの情報発信の重要性を強調し、「こうした問題は広く知られることで状況を変える可能性がある」と指摘した。

JTB名古屋事業部の山田博部長(新唐人)

 企業関係者からも驚きの声が上がった。JTB名古屋事業部の山田博部長は「生きたまま臓器摘出が行われているという内容に大きな衝撃を受けた」と語り、「臓器移植がこれほど人権を無視した形で行われている可能性があることを初めて知った」と述べた。また、日本における臓器提供制度についても触れ、「本人の意思表示と実際の運用との間に課題がある」とし、制度面での改善の必要性を指摘した。

日本中部地区台湾同郷会会長の陳恵貞氏(新唐人)

 台湾出身で、日本中部地区台湾同郷会会長の陳恵貞氏は、以前から問題自体は知っていたが、「映像を通して初めてその残酷さを実感した」と語る。「家族が長年にわたり真実を求め続ける姿には、言葉にできないほどの悲しみと無念さがある」とドキュメンタリーの持つ力を評価した。その上で、「国際社会が世論を形成し、こうした行為に対してブレーキをかけることが必要だ」と訴えた。

 さらに、長年中国とのビジネスに関わってきた関係者からは、「国家が関与している可能性を知り、人間の尊厳という観点から強い違和感を覚えた」との声もあった。こうした発言からは、本作が単なる映像作品にとどまらず、観る者の価値観や認識に直接問いかける力を持っていることがうかがえる。

 教育関係者からも、「問題があまりにも深く、日常生活からは遠いと感じるが、だからこそ多くの人が知る必要がある」との指摘があった。国家や制度の枠を超えた普遍的な人権問題として、より広い議論が求められているという認識で一致している。

 上映会の主催者側は、今後も日本各地での上映を拡大したい意向を示しているが、関係者によれば「関心の広がりにはまだ課題がある」という。政治的なリスクや社会的な関心の低さなど、さまざまな要因が障壁となっている現状も指摘されている。それでも、「一人でも多くの人に現実を知ってもらうことが第一歩」として、草の根レベルでの活動を続けていく方針だ。

 今回の上映会は、ドキュメンタリー映画が持つ告発性と記録性、そして観客の意識を変える力を改めて示す機会となった。来場者の多くが口にしたのは「知らなかった」という言葉であり、それは同時に、この問題がいかに広く共有されていないかを浮き彫りにしている。作品を通じて提示された数々の証言と映像は、単なる遠い国の出来事ではなく、現代社会における人権の在り方そのものを問いかけている。

(文・黎宜明)