アメリカの技術系メディア「Slash Gear」や外交・安全保障誌「ナショナル・インタレスト」などの報道によれば、台湾海峡や南シナ海の情勢が緊迫化する中、地政学的な地点への中国の軍事的なプレゼンスとその近代化の動きに、国際社会の関心がますます高まっています。
専門家は、中国軍の水陸両用攻撃能力が急速に発展しているとはいえ、仮に台湾への上陸作戦を決行した場合、依然として、戦場における補給・輸送や戦力投射の面で多大な困難に直面すると指摘しています。
しかし、中国は従来型の軍用水陸両用輸送力の不足を補うため、自国の大規模な民間商船隊、とりわけ迅速な軍事転用が可能な自動車運搬フェリー、巨大RORO船に目を向けています。企業のロゴが入った民間船の戦場投入は、台湾海峡を横断する輸送能力を著しく強化する可能性がある一方、国際社会の懸念を呼んでいます。
このような戦略転換の背景には、中国が誇る強大な工業力と造船能力が存在します。
現在、中国国内のEV(電気自動車)工場では1分間に1台のペースで新車が生産されるなどしており、中国の工業力は著しい発展を遂げています。
造船産業は、過去25年間で目覚ましい成長を遂げ、世界の船舶生産量の半分以上を占めるまでに拡大しました。
こうした盤石な工業基盤があってこそ、中国は最新型の超大型自動車運搬船の建造を可能にしているのです。
たとえば、広州造船国際が最近完成させた巨大RORO船は、全長約230メートル、全幅40メートル、14層のデッキを備え、最大で1万800台の自動車を積載できます。
平時において、これらの巨大フェリーは主に国産のEVや水素自動車、大型トラックなどをアジアの製造拠点から欧州をはじめとする世界市場へ輸送する役割を担っています。
しかし、安全保障の専門家は、戦時におけるこうした船舶の「デュアルユース(軍民両用)」リスクに警戒を強めています。一定の改装を施すことで、本来は民間用である船舶に、装甲車や軽戦車、さらには主力戦車までも容易に積載可能となります。
こうした軍民一体の海上輸送モデルは、中国においてすでに実践段階に入っています。
2021年の時点で、中国軍は排水量4万5000トンの民間自動車運搬フェリーを利用した合同演習を実施しました。この演習には第81集団軍の1000名以上の兵員や大量の主力戦車といった重装備が参加し、後方支援の輸送効率の向上において、この手法がいかに有効であるかが実証されました。
しかし、民間フェリーの軍事転用には、運用上の現実的な課題も伴います。専用の水陸両用攻撃艦とは異なり、この種の巨大フェリーは兵員や重装備を直接未整備の海岸へ上陸させることができません。上陸させる為には、水深があり、設備の整った港湾施設で、荷降ろしを行う必要があります。
台湾には7つの主要な国際商業港と複数の沿岸港湾があります。仮に中国軍が紛争の初期段階でこれらの港湾インフラを確保できれば、大量の機甲部隊をRORO船によって迅速に上陸させることが可能となります。
その為、この相手方の既存港湾への完全な依存から脱却すべく、中国が関連する戦術施設の開発を積極的に進めています。
衛星画像や米情報機関の分析によれば、中国は現在、大型の艀や海上浮体式桟橋システムの開発を進めています。これは上陸作戦において、正規の港湾施設が利用できない状況であっても、民間フェリーがこれらの浮体システムを介して、部隊や装備の荷降ろしを効率的に行えることを意味しています。
しかしながら、この「デュアルユース」モデルは諸刃の剣でもあり、世界のサプライチェーンやマクロ経済に対して極めて深刻な影響を与えるリスクをはらんでいます。
経済的な視点から見ると、これらの巨大RORO船は、軍事輸送の手段というだけでなく、現在急成長を遂げている中国の自動車輸出産業の「生命線」でもあります。
万が一、台湾海峡で武力衝突が勃発し、中国軍がこの膨大な商船隊を大規模に徴用すれば、世界の海運市場から膨大な自動車輸送能力が一瞬にして失われることを意味します。
これは、中国自身の自動車輸出サプライチェーンを麻痺させ、国内の関連製造業や経済全体に大打撃を与える結果となります。さらに、世界的な車両供給の不足、海運コストの高騰、そして国際物流ネットワークの激しい混乱を引き起こします。したがって、民間の輸出経済を支える中核的な商業資産を軍事用途に転換することは、事実上、莫大な経済的代償と世界的サプライチェーンの混乱と引き換えに、戦略目標を追求することに他なりません。
過去最大クラスのRORO船が次々と進水し、就役する中、商業造船における優位性を活かした中国の機動的な戦力投射能力は、質的な飛躍を遂げつつあります。
台湾、さらには世界の安全保障環境全体にとって、平時は大洋を航行するこの民間フェリー艦隊は、国際的に、もはや決して無視できない、極めて複雑かつ重大な安全保障、そして経済面の脅威となっているのです。
(翻訳・吉原木子)
