最近、中国の女性ブロガーが動画を投稿し、自分の目の前で起きた出来事を語っていました。配車アプリの運転手が、ほとんど絶望寸前まで追い込まれていく様子で、聞いているだけで胸が苦しくなる内容です。彼女はこう話します。「今いちばん絶望するのは、車がないとか家がないとか、結婚できないとか、そういうことじゃない。ある日突然、大勢の人が家に押しかけてきて、長年住んできた家から追い出され、これまで積み重ねてきたものが全部水の泡になって、その後も毎月決まった金額を払い続けなきゃいけない、そんな状況がいちばんつらい」

 女性ブロガーによると、数日前に配車アプリの車に乗ったとき、運転手の男性が途中で受けた電話の内容で崩れ落ちるように取り乱し、急ブレーキで路肩に止めて号泣しました。ハンドルを強くたたきながら「もう終わった、人生終わった」と叫び、さらに頭でドアを打ちつけ、車体が揺れるほど激しく暴れる様子は、見ている側も震撼させたほどでした。

 女性ブロガーは慌ててエンジンを切り、運転手を支えて路肩に座らせました。ところが運転手は、地面で転がりながら泣き崩れ、まるで魂が抜けたような状態だったそうです。

 運転手は少し落ち着いたあと、ブロガーに自分の身に起きたことを話しました。住宅ローンの返済が滞り、先ほどかかってきた電話は「家が競売にかけられる」という通知だったのです。その家は、住宅価格が最も高かった2019年に購入したもので、頭金は両親が一生の貯金を出してくれたものです。ところが、わずか2年で価格がほぼ半分まで下がり、頭金分は事実上消えてしまいました。競売になれば、家を失うだけでなく、銀行に多額の借金が残ってしまうというのです。

 運転手は以前、月収約12万円(6000元)あまり稼いでいました。本当は家を買うつもりはなかったそうですが、家を買わないと結婚できないと考え、歯を食いしばって購入を決断しました。実家の援助もあって、月約10万円(5000元)の住宅ローンをなんとか払えていたといいます。ところが半年前にリストラされました。30代で仕事が見つからず、配車アプリの運転手をやるしかなくなったのです。

 住宅ローンを工面するため、彼は配車アプリとフードデリバリーを掛け持ちしています。配車アプリで休憩しなければならない時間は配達に回り、配達が休憩しなければならない時間は配車アプリを走っていました。命を削るように働き続けたのは、ほとんど住む時間もないその家を、どうにか手放さないためでした。この仕事を受けた時点で、彼はすでに丸一日以上眠っていなかったそうです。また、奥さんも離婚を言い出しています。運転手はつらそうにこう漏らしました。「普通に生きたいだけなんだ。家が欲しいだけなんだ。それがどうしてこんなに難しいんだろう!」

 女性ブロガーは、その場で運転手にこう声をかけました。「この結果はあなたのせいじゃない。あなたは何も悪くない。必死で働いて稼いできたし、飲酒やギャンブルで散財したわけでもないし、違法なことをしたわけでもない。悪いのはこの社会だ。だから、自分を傷つけないで。気持ちを切り替えて。生きていれば、いくらでもやり直せる」。その慰めの言葉で、ようやく少しだけ気持ちが落ち着いたそうです。

 女性ブロガーは感慨深げにこう語りました。「一軒の家がどれだけ多くの人を追い詰めたのか!買っても地獄、買わなくても地獄。買わないと結婚できないように追い立てられ、買えば買ったで縛りつけられ、延々とお金を注ぎ込み続けなければならない。ひとたび払えなくなれば、すべてを失う。建国からわずか70年しか経っていないのに、30年もの住宅ローンを背負わせる。この30年間が順風満帆だと誰が保証できるのか?何かあった瞬間に、すべてが水の泡になってしまう」

 別のブロガー「生活鹅」が2023年11月にまとめた非公式の資料によると、当時、全国でおよそ348の未完成物件があり、約900万戸の住宅が関係していたそうです。900万戸の持ち主だけでなく、当時、財布を空にしてまで購入を支えた親世代も含め、多くの人が一気に追い詰められました。

 中国の国営メディア「証券時報」が2025年10月16日に報じたところでは、中国最大級の独立系不動産専門シンクタンク・データ提供機関「中指研究院」の競売データベースによると、2025年1月〜9月の中国全体の競売物件数は54.7万戸がある一方、実際に落札されたのは累計で約12.2万戸にとどまりました。

 実際、競売であれローン返済不能であれ、いずれも持ち主を絶望へ追い込みます。

 貯金をすべて注ぎ込んで未完成物件を買ってしまった人は、どれほど追い詰められるのでしょうか。

 中国では、マイホームを買うだけで、夫婦2人の貯金だけでなく、双方の親、場合によっては祖父母まで、三世代の蓄えをほぼ全部つぎ込むことがあります。その結果、援助した年長世代までローン地獄に巻き込まれてしまいます。今、中国経済は下り坂で、住宅価格も大きく下がり、いわゆる「ローンの残りが家の価値を上回る」状態が広がっています。これだけで精神的に限界に追い込まれる人が出ています。さらに失業や減給で返済が続けられず、競売にかけられるリスクを抱える持ち主も少なくありません。苦しくなるのは若い夫婦だけではなく、かつて購入を助けた親世代も一気に負債を抱え、「何も残らない」という状況に追い込まれていきます。

 重い経済的な圧力の中で、各地では未完成物件の持ち主たちが集まり、デベロッパーに引き渡しや返金を求める動きが繰り返し起きています。ここ数年は、未完成物件が急増したため、追い詰められた持ち主が「ローン返済を止める」という選択に踏み切るケースまで出ました。

 たとえば2022年7月には、鄭州市、武漢市、南昌市、長沙市、太原市、西安市などの都市を含め、工事停止や未完成となった52の案件の持ち主が、返済停止を告知する文書を発表しました。報道によると、関係するデベロッパーには恒大集団や新力控股などが含まれていました。

 Xでは、ネットユーザーが次のようにコメントしています。
 「中国共産党の暴政の下では『国家』が罠を仕掛ける側だ」
 「これは搾取型の『国家』で、国民から搾取するばかりで何の救済措置もない」
 「なぜ中国全体が『躺平(タンピン)』を叫んでいるのかが、今になってようやくわかった」

(翻訳・藍彧)