中国四川省成都の歩道橋に巨大な反共スローガンが掲げられた事件は、中南海を震撼させました。先日、海外在住の元内モンゴル自治区の官僚である杜文氏は、スローガンを掲げた勇士の名は梅世林氏であり、現在、行方不明で生死不明、極めて危険な状況にあると明かされました。
4月15日早朝、四川省成都の茶店子バスターミナル外の高架橋に、白地に赤文字の三本の横断幕が掲げられた写真がインターネット上で急速に拡散されました。横断幕にはそれぞれ、「政治体制改革なくして民族復興なし」、「人民に絶対的な権力を持つ政党は不要」、「中国に方向を指し示す誰かは不要、民主主義こそが進むべき道」と書かれていました。
事件発生後、抗議者が行方不明になったとの情報が流れました。この出来事は中南海を震撼させ、習近平総書記の注意を引き、中共中央規律検査委員会と国家安全部の秘密警察による合同捜査が行われていると伝えられています。
この出来事は瞬く間にインターネット上で拡散され、広範な議論を呼び起こしました。成都の人権活動家である趙さんは、自由アジア放送の取材に対して次のように語りました。「三年間のパンデミックを経て、人々は政府に多少の期待を寄せていました。しかし、失業と経済苦境によって社会矛盾は激化しました。今回成都で発生した横断幕事件は、体制への不満と現実に対する絶望の直接的な表れです。」趙さんはまた、このような匿名の抗議行動が、当局の封鎖型統治手段に対する深刻な挑戦となっていると指摘しました。
この事件はまた、2022年に発生した「四通橋事件」を想起させます。当時、彭立発氏は北京の四通橋にて「PCR検査よりも食事を、ロックダウンよりも自由を」、「嘘よりも尊厳を、文化大革命よりも改革を」、「指導者ではなく選挙を、奴隷ではなく市民を」などの横断幕を掲げ、即座に警察に連行され、現在に至るまで消息不明となっています。
海外在住の杜文氏は、4月24日に自身のYouTubeチャンネルで、成都の歩道橋にスローガンを掲げた事件の独占映像を入手したと明かしました。「これは行動者が逮捕される直前に私に送ってくれた、極めて貴重な映像です」と語っています。
杜文氏によると、この勇士は27歳の梅世林氏です。4月15日に成都茶店子の歩道橋に反習近平独裁の横断幕を掲げた後、完全に行方不明となったといいます。過去に多くの異議を唱える者を支援してきた経験から、杜文氏は、梅世林氏がすでに拘束され、命の危険に晒されている可能性が高いと推測しています。
梅世林氏は行動前に「この標語は一年以上前から準備してきた。どうか拡散に協力してほしい」と杜文氏にメッセージを残していました。杜文氏は彼の危険な状況を察知し、繰り返し早急な出国と携帯電話の破棄を促しました。しかし、梅世林氏はあえてこの時期に行動する道を選びました。
同日午後11時14分、杜文氏が再度連絡を試みた際には、すでに連絡が取れず、逮捕された可能性が高いとみられています。杜文氏は、現在、梅世林氏の安全を確保するためには、国際社会の広範な関心を喚起し、当局に圧力をかけるしかないと訴えました。これにより、少なくとも、秘密裏に処刑されたり、精神病院に送られて非人道的な拷問を受けたりすることを抑止できる可能性があるとしています。
杜文氏は、中共政権は表面上は強硬に見えるものの、実際には極めて脆弱で恐怖に満ちていると指摘しました。民間のどんな小さな独立思考も恐れており、一本の動画、一つの投稿、さらには一つのグループチャットさえも脅威とみなしていると述べました。中共の支配は虚偽と暴力によって成り立っており、国民を敵視し、徹底した弾圧で表面的な安定を維持していると批判しました。
杜文氏は最後に、彭立発氏や梅世林氏らの安全を守るため、世界中の人々に声を上げ続けるよう呼びかけました。「私たちは真実を語り続け、嘘に迎合せず、信仰と良心を守り、互いに支え合わなければなりません」と訴えました。
さらに、今回の事件については、より詳しい情報も明らかになっています。オーストラリア在住の法学者、袁紅氷氏によれば、今回の横断幕は交通量の多い繁華街に掲げられたにもかかわらず、掲示後2時間の間、誰からも通報されなかったといいます。
袁紅氷氏が体制内の消息筋から得た情報によると、2時間後に巡回中の警官が横断幕を発見して上層部に報告したものの、上層部はすぐに撤去を命じるのではなく、「証拠保全」の名目で現場の保護を指示しました。その後、横断幕はさらに30~40分間掲げられ、合計でほぼ3時間後にようやく撤去されたといいます。
袁紅氷氏は、繁華街でこれほど目立つ抗議スローガンが掲げられたにもかかわらず、警察が消極的な対応を取ったことは、体制内部で習近平政権に対する不満と怒りが表面化しつつある兆候であると分析しました。今回の事件は、中共の維持管理体制の瓦解を示すものであり、政権内部の亀裂が拡大していることを裏付ける重要なシグナルだと指摘しています。
(翻訳・吉原木子)