中国の食品安全問題は後を絶たず、最近では包装済みのパンが問題視されています。手頃な価格で保存が容易なことから、包装パンは消費者に広く受け入れられ、市場規模も急速に拡大しています。しかし、その一方で食品安全に関する苦情が急増し、多くの消費者がカビや異物の混入を訴えています。さらに、外食チェーン業界においても深刻な食品安全問題が指摘されています。
公開データによると、2019年から2023年にかけて、中国の包装済みベーカリー市場は1248億元から3108億元へと倍増し、2024年から2028年にかけてはさらに倍増し、7730億元に達すると予測されています。しかし、市場の拡大と同時に、食品の品質管理に関する問題も浮き彫りになっています。苦情受付サイト「黒猫投訴」によると、「パンのカビ」に関する苦情は3410件、「パンの異物混入」に関する苦情は1496件、「髪の毛や金属などの異物が混入したパン」に関する苦情は2082件に上っています。消費者からの報告によれば、賞味期限内のパンにカビや虫、髪の毛が混入している事例が相次いでおり、これには大手ブランドの「桃李」や「豪士」だけでなく、ECサイトで販売される中小ブランドの商品も含まれています。
特にカビの問題については、昨年12月に「豪士」ブランドのパンがカビの繁殖により、微博のトレンド入りしました。湖北省襄陽市のあるスーパーで販売されていた「豪士小面包」から、基準値の6倍を超える1000CFU/gのカビが検出されました。この問題が発覚した後、「豪士」の会長である葉躍輝氏と息子が製造現場でライブ配信を行い、消費者に謝罪をし」ました。しかし、「豪士」ブランドにおけるカビ問題は今回に限ったことではありません。2018年から2023年にかけて、ほぼ毎年、「豪士」ブランドの製品は菌数の基準値超過で行政から指摘を受けています。また、「桃李」ブランドのパンに関しても多くの苦情が寄せられており、「黒猫投訴」によると、3月12日時点で548件の苦情が報告されており、髪の毛や異物、ハエの混入、さらには賞味期限内のカビ発生など、深刻な問題が指摘されています。
2024年に入ってから現在までに、各地の市場監督管理局が発表したベーカリー製品の細菌数基準違反の報告は30件を超えており、「豪士」、「好利亜」、「美味壹客」などのブランドが含まれています。販売経路としては、「永輝スーパー」や「家家福」などの大手スーパーマーケット、さらには小売店なども対象となっています。専門家の見解によれば、パンのカビ発生は細菌数や保存温度、包装の密閉性、包装材の品質などの複数の要因が関係していると考えられています。完全に無菌状態を保つことは技術的に難しく、自社工場を持つブランドであっても、安全管理が不十分で、穴が生じる可能性は避けられないとのことです。
市場の急速な拡大に対して、自動化設備の普及が追いついていない点も食品安全問題を深刻化させる要因の一つとされています。新思界産業研究センターの調査によると、2022年の中国ベーカリー市場は前年から10.17%増の2兆8471億元に達しました。しかし、、同年の業務用ベーカリー機器市場は438.6億元にとどまり、成長率は6.82%に過ぎません。このデータからも、業界の拡大ペースが自動化設備の普及を大きく上回っており、生産管理が追いついていないことが明らかになっています。さらに、業界全体がまだ発展途上にあるため、多くの中小企業が新規参入し、品質管理が徹底されていないケースも少なくありません。
包装済み食品業界の問題に加えて、外食チェーン業界でも深刻な食品安全問題が相次いで発覚しています。最近では、中国の有名な外食チェーン「楊銘宇黄焖鶏」が食品安全違反で大きな波紋を呼んでいます。「新京報」の記者が複数の店舗を潜入調査した結果、腐敗が進んだ酸っぱい食材を使用したり、客が食べ残した料理を回収して再利用したりするケースが確認されました。さらに、一部の店舗では、前日の黒ずんだ牛肉に着色料を加え、新鮮な肉として提供するなどの悪質な行為も行われていました。従業員の採用に関しても、安全管理が徹底されていないことが明らかになっています。多くの店舗では、従業員に健康診断証明書の提出を求めず、未検査のまま勤務させている状況が確認されました。この問題が発覚した3月12日には、「楊銘宇黄焖鶏が食べ残しを再利用」というニュースがSNSで急速に拡散され、大きな批判を浴びました。
公式ウェブサイトによると、「楊銘宇黄焖鶏」は全国500以上の都市でフランチャイズ展開しており、「南方都市報」の報道によれば、2024年9月時点で全国に2703店舗を有しています。事業規模が急拡大する中で、衛生管理が追いついていない実態が浮き彫りとなりました。
食品業界全体として、市場の急成長に伴い食品安全問題の発覚件数も増加しています。包装済み食品や外食チェーンのいずれにおいても、企業は市場競争の中で利益を追求するだけでなく、食品の安全管理を徹底し、消費者の健康と権利を最優先に考える必要があります。監督機関も監視体制を強化し、違反企業への処分を厳格化することで、業界の健全な発展を促進するべきです。
また、消費者も食品安全に対する意識を高め、ブランドの評判や行政機関の検査結果を積極的に確認することが求められます。安全性の高い食品を選択するだけでなく、問題が発生した際には適切な通報や苦情を行い、企業に対する監視を強化することが重要です。メディアや消費者の監視が強化され、通報システムが整備されれば、企業の意識改革が進み、業界全体の食品安全基準の向上につながることが期待されます。
(翻訳・吉原木子)