地元政府に対し、未払いの工事代金の支払いを求めていた貴州省の女性実業家が昨年末に逮捕されました。実業家で少数民族の馬芸珈伊さんは、貴州省六盤水市(ろくばんすい-し)の貧困扶助プロジェクト、幼稚園、小学校などに関する10件の政府プロジェクトを請け負いましたが、工事代金は未払いのままでした。8年間にわたって代金の支払いを求め続けた結果、「騒動挑発の罪」で地元警察当局に逮捕されました。

 「中国経営報」の報道によると、馬芸珈伊さんの弁護士や助手など10人以上が、いずれも「騒動挑発の罪」で、馬さんよりも先に刑事拘留されました。「騒動挑発の罪」は、中国の民間では「ポケット罪」と呼ばれ、民間人に対して適切な罪名が見当たらない時に当局が乱用する都合の良い「罪名」だと言われています。

 馬さんは、2016年から地元政府関連業者から貧困扶助プロジェクトを含む10件のプロジェクトを請け負いました。そのうちの貧困扶助プロジェクトは中央政府が出資した特別プロジェクトでした。報道によると、未払いの代金は2億2000万元(日本円で約46億円)に上るといいます。

 馬さんは家族に残した手紙で、自分(←間違えて読みましたが同じ意味なのでそのままにしました)が請け負った10件のプロジェクトのうち、「8件は完成し、2019年8月13日にすべて引き渡し、使用開始されたが、2件は委託先である六盘水市水城区玉舍森林ツーリスト有限公司と野玉海ツーリストリゾート管理委員会が工事代金を支払わず、さらに地元住民の土地収用に対する補償金を支払わなかったため、作業が遅れた」と説明しています。

 手紙ではさらに、地元政府の代金未払いのせいで、2020年2月から機材販売業者、資材販売業者、および各工事請け負い業者から未払い金の支払いを求められ、返済に追われていたと明かしました。 2022年8月20日には殴られて軟部組織を損傷し、左肋を骨折しました。更に、右膝を損傷し今だに正常に歩くことができないと訴えていました。

 2020年12月6日には突然「農民工の賃金支払い拒否」の容疑で刑事拘留されました。その後保釈され、2021年3月に警察側は調査に誤りがあったとして馬さんの容疑を解除しました。

 2021年、馬さんが六盤水市政府と貴州省政府に関連状況を報告した後、六盘水市水城区玉舍森林ツーリスト有限公司と野玉海ツーリストリゾート管理委員会はそれぞれ証明書を出し、馬さん傘下の2つの企業に対する工事代金未払いを認めました。

 2022年8月、馬さんは2人の弁護士を雇い、工事代金を回収するために訴訟を起こしました。 馬さんと弁護士は、六盘水市水城区玉舍森林ツーリスト有限公司の資産が譲渡され、ペーパーカンパニー化(事業実体のない会社に)された疑いがあること、野玉海ツーリストリゾート管理委員会の登録が抹消されていることに気づきました。 さらに、地方政府は上層部に提出した書類で、プロジェクトの代金はすでに支払済みと偽っていることにも気づきました。

 また、弁護士が銀行情報を調べたところ、地方政府が支援するこの2社が国有銀行2行から5億8000万元の融資を受けたものの、借入目的には使用せず、複数の関連企業に不正送金している疑いがあることも判明しました。

 馬さんの弁護士たちはこれらの債務及び訴訟に関する情報を微博(ウェイボー)やTikTokに公開しました。2023年11月20日、馬さんが法律事務所の下で弁護士と話をしているときに、水城区公安局の警察が弁護士を連行しました。 その後、水城区政府関係者は馬さんと交渉し、1200万元だけ支払い、残りの債務をすべて帳消しにするよう要求しましたが、馬さんはこれを拒否しました。 そして数日後の11月27日、馬さんは六盤水市水城区公安局に刑事拘留されました。 弁護士2人と助手9人も拘留されました。

 この事件の事情を知る張さんは「中国経営報」に対し、「農民工の賃金を支払うために、彼女は自分の家と車を担保にして、あちらこちらから借金をして給料を支払った。 農民工の賃金の未払いはなかったが、材料供給業者の支払いが遅れていた。 彼女は、たとえ工事代金が回収できたとしても、ほとんど業者の支払いとここ数年間の借金の利息で消えると言っていた」と述べています。

 この事件は中国の微博(ウェイボー)で関心が寄せられ、6464万人以上の人々の注目を集めました。

 ネットユーザーたちは、「恐ろしい」とコメントし、「中央政府の貧困扶助のための特別プロジェクトなのに、資金はどこに流用されたのか?」「債務者は法から逃れているのに、債権者の方は騒動挑発罪に問われている」「2億2千万元の代金のうち、1200万元しか支払わないと言っている。嫌だと言ったらこのお金すら戻ってこない」と嘆いています。

 これに対して中国の独立系ジャーナリストの高瑜(こう ゆ)さんは、ソーシャルメディア「X」への投稿で、「貴州省六盤水市水城区政府は、中央政府から貧困救済のためにあてがわれた資金を不正に流用し、銀行融資を不正に受けた疑いがあり、政府プロジェクトのための工事代金2億2000万元を8年間も支払っていないばかりか、地元公安当局に企業の代表と弁護士を逮捕するよう指示し、公然と冤罪事件を作り出している」と嘆き、「これはあからさまに経済発展を損ない、法治を損ねる犯罪であり、法律に基づいて処罰されなければ、貴州省と中央政府の法執行機関は犯罪を庇護した責任を負うことになる」と指摘しました。

 実際、2か月前に、馬さんの依頼を受けた侯志涛(こう しとう)弁護士は、助けを求める動画を投稿していました。動画の中で侯弁護士は、自分ともう一人の弁護士が貴州省六盤水市水城区政府の不正を暴露したため迫害されていると述べました。 侯弁護士によると、この件に関与している地方政府の関連企業の職員は交渉に訪れた際に、「債務は合わせて2億元以上になる」が、1200万元を支払うことで解決したいと言ったといいます。

 侯弁護士は、相手のこのような態度に対し、非常に怒りを感じるものの、対抗する手立てがなく、社会に助けを求めるしたないと示しました。

 また、当局は彼らの一部の人のみを迫害しているのではなく、社会の正義を守るのは全ての人々の義務であると述べたうえ、このことで警察に逮捕、または「自殺させられる」可能性も否定できないと述べました。

 この事件に関する詳しい情報は現在、中国で封鎖されています。