莫高窟(Zhangzhugang, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

一、「第96窟」と「弥勒菩薩像」

 世界遺産莫高窟(ばっこうくつ)は、千仏洞とも呼ばれる敦煌近郊にある石窟寺院であり、約1,600メートルにわたって492の石窟が残される仏教美術の宝庫です。敦煌はシルクロードの経由地点として栄え、4世紀頃から約1,000年かけて莫高窟が増築・修繕されてきました。

 莫高窟の第96窟は、鳴沙山の断崖絶壁に掘られ、高さ約43メートルにも及ぶ九層の朱色の木造楼閣をもち、莫高窟の最も大きな建築物で、莫高窟のシンボルになっています。

 この第96窟は「九層楼」、「北大仏殿」、「大雄宝殿」とも呼ばれています。当初は石窟の前に四層の木造建築を付随させた形でしたが、時代と共に改築され、中華民国の時に現在の形となったとされています。 

 この石窟は、695年の唐の時代に仏教信者だった則天武后によって造られました。石窟内には高さ約34.5メートル、幅約12.5メートルの弥勒菩薩像が安置されています。

 この弥勒菩薩像は莫高窟の仏像の中では最も大きく、その高さは11~12階のビルに相当し、中国国内でも5番目に大きいものとされています。大仏を見上げるとその迫力に圧倒され、莫高窟を訪れる観光客の誰もが、つい手を合わせて拝みます。

 弥勒菩薩像は、まず崖面を掘り、大仏のおおよその輪郭を削り出し、漆喰(しっくい)で造形して彩色し、その後、泥で補修し、顔つきや体は白色に仕上げ、今の大仏の形に出来上がったそうです。荒削りの形に漆喰、泥をかぶせて細かな表面に仕上げる技法は石胎塑像(せきたいでいそ)と呼ばれており、鳴沙山の崖を掘った莫高窟ではこの石胎塑像が多く見られます。第96窟の弥勒菩薩像は世界最大の石胎塑像であると言われています。

 弥勒菩薩像は寄りかかった姿勢で座っており、足は自然に垂れ下がり、視線は伏せられているため、背が高く荘厳な印象を与えます。

第96窟弥勒菩薩(ネット写真)
第96窟弥勒菩薩-1924年撮影(ネット写真)

二、未来仏 弥勒菩薩は既にこの世に降臨したのか?

 弥勒はサンスクリット語のMaitreyaの音読みで、慈しみを語源とし、慈氏菩薩(じしぼさつ)と意訳されます。仏教において、弥勒菩薩は現在仏である釈迦牟尼仏の次に現れる未来仏で、釈迦入滅後のはるか未来にこの世に下り、悟りを開き、多くの衆生を救い済度するとされています。中国、朝鮮半島、日本では、未来に弥勒菩薩がこの世に降臨し、竜華樹(りゅうげじゅ)の下で三度にわたって説法し、衆生救済を果たすと広く信じられています。  

韓国全羅南道の順天市須弥山禅院の佛像に咲いた優曇華(写真・徐良玉/大紀元)

 一方、仏典によれば、3000年に一度咲く優曇華(うどんげ)の花が咲いた頃、未来の仏陀の弥勒菩薩が地上に降り、法を説くともされています。                               

 仏教の経典「法華文句(ほっけもんぐ)」(注1)には、「优昙花者,此花灵瑞,三千年一现,现则金轮王出」、つまり、「優曇華は吉祥の花であり、3000年に一度現れ、その時、金輪王がこの世に出現する」と明記されており、 「慧琳音義(えりんおんぎ)」(注2)にも、「優曇華は殊勝で、この世にない小さな花である。 もし弥勒菩薩が生まれ、金輪王がこの世に現れれば、大いなる加護の力によって、この花を咲かせるであろう」と書かれています。

 「 金輪王」とは、仏典で予言されている未来仏のことで、「弥勒菩薩」のことを指しており、別名「転輪聖王」、または「転輪法王」とも呼ばれます。

  1997年、韓国の仏教寺院で金色の仏像の顔に優曇華が出現したことがマスコミで報道され始めて以来、世界各地で優曇華が出現したというニュースが流れています。それは未来仏である弥勒菩薩が真の仏法を説くために、この世に降りてきたことを示していると思われています。

 近年では、地震や津波、異常気象、疫病、戦争などが、世界中で集中的に発生しています。 世界飢饉も、ロシアとウクライナの戦争勃発によって、その危険性が高まり、又、第三次世界大戦による人類滅亡をもたらす核戦争が起きるのではないかと危惧する声も少なくありません。世界経済の低迷、広まりゆく道徳の崩壊、伝統文化の衰退、危険性が潜む人工知能技術の急速な発展等、まさしく世界の終末時に近づいているのではないでしょうか。

 仏教では、末法の世に未来仏の弥勒菩薩が下生して、人々を救済するとの言い伝えがありますが、他の様々な民族にも、人類の最も危険な時に、善良な人々を救うために神様が必ず復活するとの予言も伝えられています。聖書の「黙示録」には、世界の終末時、メシア(救世主)が再臨し、全人類に対する神による最後の審判を行い、そして、その大審判に先立ち、正義と邪悪との間の熾烈な争いがあり、人類は道徳的衰退と疫病の災いに見舞われるとも書かれています。

 我々は危機と希望が隣り合わせる時代に生きています。

 人類を救済する未来仏である弥勒菩薩に、お目にかかることができるでしょうか。もしお目にかかることができれば、我々はどれだけ幸運でしょうか。

(注1) 中国隋代の仏教書。10巻(各上下20巻)

(注2)慧琳著「一切経音義」の異称。783~807年の間に書かれたもので、1300部の三蔵にわたる仏典の難解な字句に対する注解辞典。100巻。

(文・一心)

看中国・伝統文化: 無限の天機を秘めた「三千年に一度だけ咲く花」全世界で咲く!

敦煌莫高窟96窟のYouTube動画:

https://youtube.com/watch?v=_x2bwS270m4&feature=share

3000年に1度しか咲かない奇跡の花 次々と開花(新唐人テレビ):