最近、広東省の多くの地域が暴風雨と竜巻に襲われました。ネット上で出回っている動画によると、朝8時頃、空はまだ真っ暗で、雷の轟音を伴った激しい風が吹き荒れ、まるで世界の終わりのような光景でした。

 天候が荒れていたにもかかわらず、多くのサラリーマンは依然として、出勤しています。ある動画には、出勤途中の女性が強風によって、道端に吹き飛ばされる様子が映っており、彼女は苦労して立ち上がった後、風に飛ばされないように近くの街灯柱を必死に掴んでいました。別の動画では、制服を着た痩せた女性が激しい風に立ち向かいながら道を渡ろうとしていましたが、強風で彼女の傘はすぐに壊れ、風に押し戻された後、かろうじて数歩進んで、前方の同僚に手を伸ばして助けを求めました。

 これらの動画は広く注目を集め、多くのネットユーザーから強い共感を呼び、多数のコメントが寄せられました。あるネットユーザーは、「このような悪天候でも仕事に行かなければならないのですか?竜巻や暴風雨に遭遇したら、牛や馬のような動物でさえ避難所を求めるのに、私たちは風雨に耐えながら仕事に向かわなければなりません。これは本当に動物以下です」とコメントしました。

 1990年代に、バブル経済の崩壊により、日本は長期にわたる経済不況に陥りました。この状況下で、企業はコスト削減のために大規模なリストラを開始し、職場には失業の不安とそれに伴う精神的なストレスが漂っていました。生存のため、多くの人が長時間働かざるを得ず、過労やストレスからうつ病の患者が増え、自殺率も上昇していました。この時期、「社畜」という有名な日本語が生まれました。

 ウィキペディアの説明によると、社畜(しゃちく)とは、主に日本で、社員として勤めている会社に飼い慣らされ、自分の意思と良心を放棄し、サービス残業や転勤もいとわない奴隷(家畜)と化した賃金労働者の状態を揶揄、あるいは自嘲する言葉です。

 かつて、「サービス残業」や「休日出勤」は多くの日本企業の代名詞でした。しかし、近年、中国ではこのような現象がさらに顕著になっており、日本よりも深刻な傾向が見られます。

 中国の経済成長が鈍化し、国際情勢が緊迫する中、多くの外資系企業が中国から撤退し始め、地元企業も大量に倒産し、中国では大規模な失業が発生しています。この背景の下、仕事を守るため、多くの人が自発的に労働時間を延長し、「サービス残業」や「休日出勤」も常態化しています。「上司がまだ帰っていないので、自分も帰れない」という現象はかつて日本特有の社会現象とされていましたが、今や中国の職場でも一般的な現象となっています。

 もし労働が適切な報酬を得られれば、多くの人はその努力が報われると感じるかもしれません。しかし、現実は多くの人が精一杯働いても、その報酬が努力に見合わないほど少ないことが多いです。このような社会背景の下、中国では「社畜」と同じ意味を持つ言葉「牛馬」が生まれました。

 中国最大の検索エンジンである「百度」によると、「牛馬」とは本来、牛と馬を指し、今では生活に追われて苦しい労働に従事する人を指します。自分を「社畜」と自嘲した日本のサラリーマンと同様に、多くの中国のサラリーマンが自分たちを「牛馬」と自嘲しています。

 現代中国社会では、多くの労働者が人としての尊厳を失い、生存のために家畜のように個人の感情や思考を捨てざるを得なくなりました。

(翻訳・吉原木子)