竿秤(さおばかり)(ネット写真)

 竿秤(さおばかり)とは“てこ”の原理を利用した重さを量る器具だ。竿と分銅の二つの部分で作られている。

 中国人はよく「半斤八両」という慣用句で二つが同じ物である事を表す。なぜ半斤と八両は同じだろうか?昔の中国の度量衡(どりょうこう)では「一斤」が「十六両」であったので「半斤」と「八両」は重さが同じだという意味だ。一見、簡単に見える竿秤だが、実は色々な学問が隠れている。

 竿秤に関連する言葉は「半斤八両」の他にもある。「権衡(けんこう)」、「権」は竿秤の分銅を表し、軒轅(けんえん)星座を意識して作られた、星宿に属する雷雨にまつわる神様である。「衡」は竿で、紫微(しび)星座を象徴する。中国で良く引用される慣用句の「権衡軽重」も「権衡利益」もここから生み出された。

 その昔、十六両秤は十六金星秤とも呼ばれた。その由来は、「北斗七星」、「南斗六星」に「福」、「禄」、「寿」の三つの星を加えた「十六両秤星」を模して作られたという意味だ。北斗七星は「亡」を南斗六星は「生」を司り、福星、禄星、寿星の三星は一人の人間の一生のあいだの「福」、「禄」、「寿」を司っている。

 竿秤上の秤星(星図形の目盛り)は必ず白色あるいは黄色で「商いは公平、正直であるべき、腹黒いことは止めよう」という象徴だ。また竿に刻まれたひとつ目の星は「定盤星」と呼ばれ、分銅をこの位置に掛けると、鉤(かぎ)を付けた竿が水平になる。「定盤星」を定めるのは竿秤を作るうえで大切なことで、「定盤星」が確実に定まっていれば、良い秤と判断される。よって中国人はしばしば「定盤星」という言葉を「物事の原則」として例える。

 竿秤の上の手堤げ用の紐は「秤毫(チャンハオ)」と呼ばれ、それは「重さを量るとき、明察秋毫(眼力があり、どんな小さなことも見逃さない)となり、注意を怠るな」という意味だ。竿秤を持ち上げると、まず定盤星が見えて、商人に「重さを量るとき、どんな商いであっても計量をごまかしてはならない」という良心を喚起させる。

竿秤を用いて果物を量る商人の姿(ネット写真)

 もし商人が計量をごまかすと懲罰を受け、「一両をごまかすと、福星が商人の福を減らす。二両をごまかすと、禄星は商人の禄を減らす。三両をごまかすと、寿星は商人の寿を減らす」と言われている。昔の人は「人間が何をしようと、天はしっかりと見ている」と信じて、(神様に)畏敬の念を抱き、良心に背くことをしなかった。

 先祖により発明された十六両および竿にある十六星は、物の重さだけでなく、人の心を量ることもできる。秤を作る人も使う人も皆、公正、公平、正義を保たなければならない。人の誠実さ、正義をも量ることができるこの竿秤は、まさに中国伝統文化の内面の伝承だ。

 現在では、すでに竿秤から電子秤に代わってしまったが、先祖代々伝えられた竿秤に含まれる戒めは変えることができない!

星宿:中国の天文学・占星術で用いられた二十八宿(星座群)の中の一つ。

(翻訳・宛漣音)