(ツイッター動画のスクリーンショット)

 北朝鮮からの脱北者である朱賢健(男、39)受刑者が11月28日、中国吉林省吉林市の刑務所から脱走して41日目に、同市豊満区の松花湖で拘束された。拘束時に足を銃撃され、抵抗しなかったという。中国のネットユーザーは、この脱北者に同情するコメントを投稿した。

 中国の公式メディアによると、朱賢健は11月28日午前10時頃、吉林市豊満区の松花湖付近で警察に逮捕された。地元の村人によると、朱は食べ物を盗んでいたところを村人に見つかった。村人が提供した写真によると、潜伏していたと思われる場所には、布団やミネラルウォーターのボトルが残されていた。村人は、排水トンネルの中は湿っていて寒いが、屋外で生活するよりはましだと話し、朱がここで生活していたのは4日ほどだと推測した。

 また、一部のネットユーザーは、朱が釣りの動画配信者に発見されたと明かした。湖畔にある釣り人用の小屋に隠れた朱は、釣りに来た人の物を盗んでいたため、ある釣り人に気づかれ、警察に通報された。逮捕現場の動画も通報者が撮影したものと思われる。

 現場の目撃者によると、朱は足を銃撃された後に捕まった。 ネットユーザーは、朱が捕まった時の写真や動画を投稿した。動画には、朱の苦しそうな表情が映っている。

 これに先立ち、吉林省の刑務所と警察は複数の「懸賞通知」を発令した。朱の逃亡から1カ月後の11月18日、地元警察は犯人の直接逮捕に対して70万元(約1250万円)の報奨金を出すと発表した。

 朱は1982年10月13日生まれ、身長160cm。情報筋によると、朱は元特殊部隊の兵士で、姉の脱北の罰を受け、炭鉱で9年間石炭を掘った後、中国に逃れてきた。2013年7月22日、朱は中国の警察に逮捕された。2014年3月25日、国境を越えた密入国、窃盗、強盗の罪で懲役11年3カ月の実刑判決後に強制送還を言い渡された。2024年10月21日に終了する予定だった刑期は、刑期中に14ヶ月の減刑を受けたため、2023年8月21日に終了することになっていた。 彼は、北朝鮮への強制送還を恐れて、今年10月18日の労働終了時に刑務所を脱走した。

 中国共産党当局は、1951年に国連が採択した「難民の地位に関する条約」に加入しているものの、脱北者を北朝鮮に強制送還している。一方、同条約は、迫害や拷問の危険がある地域からの難民を送還してはいけないと取り決めている。

 朱の逮捕されたニュースはウェイボー(微博、Weibo)のホット検索にのぼり、中国のネットユーザーは朱への同情を示した。

 「朱は自分の服で刑務所の電気柵を破り、高さ6メートルの壁から飛び降りて逃亡した。監視カメラとインターネットの時代に、何万人もの警察官が1カ月以上も彼を追って、ようやく捕まえた。特殊部隊の兵士の能力だけでなく、人間として生き延びようとする意志の強さが伺える」

 「密入国した時、彼は刃物で人を傷つけた。どのような状況でそのことをしたのかはわからないが、密入国した人の心の中には、北朝鮮に送り返されることへの恐怖はあったはず。しかも、その傷害のため、11年の懲役を払い、すでに罰を受けていた。今、彼が望んでいるのは生きることだ」

 「脱獄したというのはもっともなことだと思う。結局、刑期を終えて北朝鮮に送還されると、彼は北朝鮮当局にすぐに銃殺されるだろうから、中国の刑務所にいたほうがいいのではないかと思う。ましてや、 中国の刑務所の食事は、彼が北朝鮮の兵士として受けた食事よりも良いだろう。刑期満了前に脱獄したのは、おそらく追加の刑期を望んだからだろう。結局、帰って撃たれるよりも、中国の刑務所に入った方がましなのだ。せいぜい自由を失うだけで、命を失うことはない」

 「北朝鮮に帰れば、確実に死ぬことになる。だからこそ、朱は刑務所から脱出しなければならないのだ」

 「行動から判断すると、彼は最初に国境を越えて中国に入り、ものを盗んで捕まったとき、家主を傷つけたが、良心がとがめて殺さなかったのだ。また、収監後の行動も良好で、何度か減刑されて報われた。脱獄した後も、他の罪のない人々を傷つけることなく、ただ自分の身を守るために原生林に逃げ込んだ。非常に危険な人物だが、今までを振り返ると、彼に対する憎しみはなく、むしろ同情を覚えることもある」

(翻訳・徳永木里子)