中国海監の監視船「海監51」(Bt4wang, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons)

 米国と同盟国の軍艦がインド太平洋地域で頻繁に活動するにつれ、米中の綱引きが顕著になってきた。中国共産党(以下、中共)海事局は29日、9月1日から外国船舶が中国の「領海」に進入する際に報告を義務づける通知を出した。その通知は海上衝突の時限爆弾になりかねないと懸念する学者もいる。

 中共第13期全国人民代表大会(全人代)常務委員会第28回会議では、今年4月に新たに改正された「海上交通安全法」が可決され、9月1日に施行される。

 関連内容を受けて、中華民国国防安全研究院の蘇紫雲氏(資源と産業研究所所長)はかつてメディアに対して、中共はこの法案を利用して紛争のグレーゾーンを拡大しており、各国はこの法案が海上衝突の時限爆弾になることを懸念していると指摘していた。また、中共が新法を厳格に適用すれば、南シナ海や台湾海峡などで緊張が高まる恐れがあるとの見方が一般的である。

 同氏はまた、「中共の管轄下にある海洋地域」とは、「中国の領海、排他的経済水域、その他中共の管轄下にある海洋地域」を指すと指摘した。この定義は「沿海水域」よりも広い。中共は南シナ海に多くの人工島を建設し、その周辺の12海浬が自国の領海であると主張し、強制的な排他性を生み出している。これにより、各国がインド太平洋地域で自由航行する際に、中共に同法を施行する口実を与える可能性がある。

 また、中共海事局が昨日発表した公告では、外国船舶が中共の領海に入る際に、潜水艦、原子力船、放射性物質を運搬する船舶や、「ガソリン、化学物質、液化ガスなどの有害物質を運ぶ船舶」のほか、「法律・行政法規または国務院が定めた中国の海上交通の安全を脅かす可能性のある船舶」が対象となり、海事局に報告することを求めている。

 通知では、対象となる外国船に対し、船名や出発地と目的地、積載している危険物質の種類と量などの報告を求めた。領海内にいるときは、船舶の自動識別システムを作動させ、2時間ごとに船の位置を報告することなどを要求した。

 中国公式メディア「環球時報」はこのほど、専門家の話として「海における国家安全を守るという中国の決意を示す措置だ」と伝えた。

(翻訳・吉原木子)