2019年1月17日ペンタゴンで演説するトランプ大統領(イメージ:White House /パブリック・ドメイン)

 ドナルド・トランプ大統領は、選挙で民主党のヒラリー・クリントンに勝利し、2017年1月20日に就任した。現在は米国の第45代大統領として3年目を迎えたところだ。

 「アメリカ第一主義」と「 偉大なアメリカを再び(Make America Great Again)」の旗印の下、トランプ大統領は国家主義的な政策の実施を試みてきた。具体的には、貿易関係の再検討・冷戦後に形成されたアメリカ中心の世界秩序・違法入国を制限するための国境の壁建設などの政策があげられる。

 民主党と共和党が「国境の壁」に対する資金調達法を採決しなかったため、数週間の間、政府は部分的に閉鎖される事態となった。トランプ大統領は米国・メキシコ間の「国境の壁」の建設資金調達を法律に含まなければならないと主張している。一方の民主党はこの提案を不道徳かつ税金のムダと一蹴している。

 2018年の中間選挙で共和党は議席を減らしたが、トランプ大統領は好調な株式市場と力強い雇用成長をもたらした。また、中国・北朝鮮・イランなどの権威主義国家による侵略に対して強硬な姿勢を取った。こうした政策は、2018年の世界に次のような大きな変化を巻き起こした。

トランプ大統領は中国共産党と対決姿勢

 トランプ政権は特に、過去数十年に急激な経済的発展を遂げた中国共産党に対する政策を大幅に変更した。中国政府による人権弾圧や不正な貿易慣行、また海外政策については国際的な非難の声が高まっている。

 2018年半ばから、米国政府は中国からの輸出品に数千億ドル相当の高い関税を課した。中国側も独自の関税を導入したが、米中貿易戦争は高い失業率、低いGDP成長率、そして巨大な不動産バブルのようなやがて訪れる危機を恐れる中国経済に悪影響を及ぼしている。

 トランプ政権はまた、不当なビジネス慣行の是正を中国に命じた。ワシントンの推定によると、米国企業は中国の不正によって数百億ドル規模の損失を被っているという。その結果、米国政府は中国人民解放軍による南シナ海の軍事化や「一帯一路」の推進など、中国の経済的・軍事的な野心に一層の注意を払うようになった。

 12月、カナダ当局は米司法省の要請を受け、中国軍とも関係する通信大手・ファーウェイの孟晩舟氏を逮捕した。ファーウェイは海外製品をコピーし、世界市場でそれらを販売して競合他社を追いやることで中国共産党を長らく支援してきたと言われている。

 米国と中国の対立が激化するにつれ、ワシントンはイデオロギー的な観点からも中国への警戒を強め、中国との経済取引を企図した過去の政策を転換した。昨年8月、米国議会は政府に対し、中国という国家と共産主義指導部を切り離して考えるよう促した。そして10月4日「中国は台湾のような民主主義体制を取り入れるべきである」という、マイク・ペンス米副大統領の発言にもつながっていった。

 習近平国家主席は米国の要求に対して、外向きには反対反発姿勢を維持しているものの、交渉の席では米国の要求に応じる姿勢を見せている。

 米国等からの外的圧力に伴い国内の不和高まっている中国では、指導者の交代を余儀なくさせる可能性をはらんでいる。中国共産党の派閥と長い内部闘争を繰り広げてきた習氏は最近、不測の事態を含む危機の到来に用心するよう党の同僚に警告したという。

(つづく)

(原文・Leo Timm / 翻訳・今野秀樹)