(イメージ:Vision Times Japan)

 古来、謙虚な君子は他人の功績を奪わないものだ。中国の戦国時代に斉国の丞相を務めた晏嬰(あん えい、?―紀元前500年)もそうした君子のひとりであった。晏嬰の言行を記載した「晏子春秋」(あんししゅんじゅう)という本がある。その中には、晏嬰が自分の知恵で斉の景公の病気を治す話がある。晏嬰は斉の景公の悩みを解消し、彼の病気まで治したにも関わらず、その功績を自慢しなかったため斉の景公に称賛され、多くの報奨を得た。

 冬至、斉の景公は現代で言う腎炎を患い、十数日間も寝込んだままだった。ある日、彼は自分が二つの太陽と戦い、最後には負けるという夢を見て、冷や汗をかいた。

 翌日、斉の景公は謁見しにきた晏嬰に聞いた。「昨日二つの太陽と戦って負けるという夢を見たけど、それは自分の死を示しているか?」
晏嬰はちょっと考え、夢占いの人を呼び寄せて夢を占ってもらうのがよいと進言した。斉の景公は晏嬰の言うままにした。

 宮殿を出た後、晏嬰はすぐ夢占いの人を迎えに行った。夢占い人は「丞相はなぜ私を召したのか」と晏嬰に聞いた。晏嬰は斉の景公が見た夢と悩みを伝えた。

 夢占いの人はしばらく考え、晏嬰「それでは、王様の夢をいい意味で占うことはいかがでしょうか」と聞いた。晏嬰は「いいえ。王様がかかっている病気は陰です。一方で、王様が夢で見た二つの太陽は陽です。一つの陰は二つの陽に勝てません。すなわち、この夢は王様の病気がもうすぐ治ることを示しています。このように説明すれば良いでしょう」と答えた。

 夢占いの人は宮殿に入り、斉の景公に質問されました。「自分は二つの太陽と戦って負けたという夢を見たのだが、それは私がまもなく死ぬと示しているのか?」夢占いの人は晏嬰に言われたとおりに答えた。「王様がかかっている病気は陰であり、二つの太陽は陽です。一つの陰は二つの陽に勝てないのは当然です。この夢は王様の病気がそろそろ治ること示しています」。

 斉の景公は夢占いの人の話を聞いてほっとした。心の重荷がなくなり、薬と食事による治療の元に、三日後には病気が治った。斉の景公は夢占いの人に多額の褒賞を与えようとした。

夢占いの人は斉の景公に言った。「今回は私に功労はありませんすべて晏嬰に教えられたものです。」そこで斉の景公は晏嬰に多くの褒賞を与えようとした。しかし晏嬰は「あの話は夢占いの人が言ったからこそ効果があります。仮に私が言ったとしても、王様は絶対に信じてくれないでしょう。したがって今回の功労はすべて夢占いの人にあり、私になんの功績もありません」と言った。

 結局晏嬰も夢占いの人も斉の景公から多くの褒賞をもらった。斉の景公はこう賛嘆した。「晏嬰は他人の功績を奪わず、夢占いの人は他人の知恵を隠そうとしない。これこそ君子が備えるべき貴い人格である」

(翻訳・謝如初)