(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 「赤」という色は中国で様々な場面で使用される色だ。しかし、中国ではサンタクロースが赤色の服を着用することは許されない。北京の近くに位置する廊坊市は、12月15日、クリスマスに関連するすべての商品の販売と展示を禁止したからだ。

 同市の警察当局は「街路のクリスマスツリー、サンタクロース、そしてクリスマス関連商品を取り締まる」よう命令された。また「宗教的宣伝活動のために公園や広場、その他の公共スペースが使用される場合、これを完全に管理する」とのことである。

 共産主義は無神論の立場にあり、実際に信仰・宗教と対立してきた。歴史を振り返ると、ソビエト共産党やナチ党はクリスマスに関連する活動を抑圧した。

 新疆でのウイグル人の迫害やキリスト教徒の逮捕によって世界的な非難の声が高まっているにもかかわらず、中国共産党はここ数カ月の間、西欧の宗教に対する抑圧と迫害を強化している。

 また、こうした弾圧が行われる以前にも、中国共産党は精神修煉の一種として知られる「法輪功」に対し20年近く迫害を行ってきた。

 警察の文書には「サンタクロース、クリスマスツリーなど、すべてのクリスマス関連商品の売り上げを完全に排除する」と書かれており、「12月23日からクリスマス当日まで、すべての警察官は自らの職務に従事するように。あらゆる種類の宣伝活動・販売活動を厳重に管理し、商店街の取り締まりを徹底のこと」との念押しされていた。

 中国の都市で一般的に行われる街頭販売は、まさに警察当局の標的だ。宗教関係者に対する取り締まりが強化されていることを考えれば、今回のクリスマス商戦によって大量の逮捕者が出る可能性も否定できない。

 なお、警察当局のメモには「違反者が発見された場合は、注意深く監視し、上に報告する」と書かれていたという。

伝統文化に反対する共産主義

 共産主義には宗教を抑圧してきた歴史がある。ソビエト時代のロシアでは、武装した無神論者のグループが「宗教に反対する日」を作り、クリスマスツリーの作成を禁止した。中国でも文化大革命から同様の流れが始まり、多くの新しい休日が作られる一方で、伝統的な休日が廃止された。

 また中国共産党は、文化的に重要とされてきた中国の祝日を変更した。最も重要な休日である「春節」は、現在、中国本土では単に「春の祭り」と呼ばれている。休日は単に「家族が一緒に食事をするための時間」となり、元々あったお祝いの風習は失われた。

 こうした変化は、若い世代が海外の休日に関心を寄せていることもその一因と考えられる。大多数の中国人はクリスマスを宗教行事とは捉えていないが、西洋の文化の1つとして関心を持っている。

 中国語では「りんご」と「クリスマスイブ」の発音と文字が似ていることから、特に若い中国人を中心に、「クリスマスイブには愛する人にりんごをプレゼントする」という習慣が新たに生まれた。

 冒頭の廊坊市では、もはやクリスマスのイベントを行うことはできない。これは大変残念なことではないだろうか。

(翻訳・今野秀樹)