アウンサンスーチー氏とミン・アウン・フライン国軍総司令(Claude TRUONG-NGOC, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons、パブリック・ドメイン)

 2021年2月1日早朝、ミャンマー国軍は突如政変を起こし、ミャンマーの実質上の最高指導者・アウンサンスーチー氏とウィンミン大統領らを拘束した。

 目下、ミャンマー国軍はすでにミャンマーの多くの地方政府と議会を掌握し、国家権力をミン・アウン・フライン国軍総司令に委ね、今後1年間にわたる国家非常事態を宣言した。

 2020年11月にミャンマーで総選挙が実施され、アウンサンスーチー氏が率いて与党・国民民主連盟(NLD)は多数の議席を獲得し、圧勝した。選挙の結果を受けて、2021年2月1日から国会が始まる予定だった。

 しかし、ミャンマー国軍は今回の総選挙に不正の疑いがあると主張し、2月1日に軍事クーデターを起こした。軍のスポークスマンはソーシャルメディアで、「1年以内に、公平かつ公正な選挙を実施し、その後、勝利した政党に政権を手渡す」と声明を発表した。

 現在、ミャンマーには国軍とアウンサンスーチー氏が代表する政府、という二つの勢力がある。この二つの勢力の権力闘争は、アメリカ大統領選とよく似ているが、一緒に論じてはならない。アメリカ大統領選は正義と闇勢力との間の闘いである、と多くの評論家が言っているが、ミャンマーの場合、二つの勢力はどちらも、ミャンマーの国益或いは国民の利益の為ではなく、自らの利益のために戦っているとしか言いようがない。

 2015年に行ったミャンマー総選挙では、アウンサンスーチー氏が率いるミャンマーNLDが勝利を獲得した。アウンサンスーチー氏は、夫と息子のイギリス国籍問題で、ミャンマー憲法の規定により、大統領になれなかった。そのため、ミャンマーNLDは政権を掌握した後、「国家顧問」というポストを新たに作った。ウィンミンが大統領に就任したが、政治代理人でしかなく、実際の国家権力者はアウンサンスーチー氏だった。その関係はハリス氏とバイデン氏の現状と非常に似ている。

 最近、多くのメディアは、「ミャンマー軍事クーデター前、中共の外相・王毅氏がミャンマーを訪れ、ミャンマー国軍のミン・アウン・フライン総司令と会談し、両国は『兄弟』だと述べた」と報じた。ミャンマー軍は中共に親しく、軍事クーデターが中共からの支持を得ているのではないかと疑われている。しかし、アウンサンスーチー氏も中共と親しい関係にある。この二つの勢力はどちらも中共の力を借りようとしている。

 フランス国際放送の報道によると、2020年1月18日、習近平がミャンマー訪問をした際、アウンサンスーチー氏と会見し、ミャンマー首都のネピドーで正式会談を行った。アウンサンスーチー氏は、「ミャンマーNLDが中国との友好関係を非常に重要視し、中共の友人であり続けたい」、「積極的にミャンマー中国経済回廊の建設を推進し、多くの分野での協力関係を進め、共に『ミャンマー・中国運命共同体』を構築する」と言ったという。さらに、アウンサンスーチー氏は「一部の国が人権や民族、宗教問題を口実にして他国の内政に干渉している。ミャンマーは決してこのような圧力と干渉に屈しない」、「国際舞台で、中国に引き続きミャンマーのような中小国のために正義の声を上げてほしい、ミャンマーの国内和平にも建設的な役割を果たしてほしい」とも言ったそうだ。

 アウンサンスーチー氏は中共と呼吸がぴったり合っていた。彼女の発言は自らの親中共の立場を十分に表明した。彼女は中共をマフィアのボスにしているのだ。

 アウンサンスーチー氏はマンデラ、オバマ等と同様、左翼の主流メディアに神聖化された政治家である。主流メディアの正体をすでによく知っている我々は、メディアに煽てられた人物について、必ずじっくり考え、分析しなければならない。

 アウンサンスーチー氏はノーベル平和賞を受賞した。しかし、だからと言って問題がないわけではない。オバマもノーベル平和賞を受賞しており、「ブラック・ライヴズ・マター(BLM)」も2021年度のノーベル平和賞にノミネートされている。もし「ブラック・ライヴズ・マター」が2021年度のノーベル平和賞を受賞すれば、それこそ馬鹿げたことではないだろうか? 

 アメリカの保守派メディア『ナショナル・ファイル』(National File)は、アウンサンスーチー氏がヒラリー元米国務長官、オバマ元米大統領、投資家ジョージ・ソロス氏等、ディープステートの重要人物と関係が深いと報道した。

 同紙によると、ヒラリー元米国務長官は2011年にアウンサンスーチー氏と初対面してから、互いに密接な関係を築き、すぐに「戦略的協力」を始めたという。ヒラリー氏は著書『困難な選択(Hard Choices)』の中で、「ミャンマーのこの有名な政治家について長年関心を持っていて、私たちはようやく対面した」、「昔からの知り合いのような気がして、すぐに古い友のように話し、戦略を考え、笑い合った」と記した。アウンサンスーチー氏もヒラリー氏を絶賛した。

 ヒラリー氏は、アウンサンスーチー氏に2012年のミャンマー選挙で議会の席を獲得するよう提案したため、アウンサンスーチー氏のミャンマーでの本格的な政治キャリアがスタートした。

 アウンサンスーチー氏は、オバマ前大統領からも大きな支持を得ていた。1990年代から、アウンサンスーチー氏は反政府活動に関与したため、何度も「国家転覆罪」で逮捕された。オバマ氏はミャンマー当局に彼女の釈放を頻繁に呼びかけた。2012年、オバマ前大統領が米国の「議会名誉黄金勲章」を彼女に授与した。アウンサンスーチー氏は「人生で最も感動したできごとの一つである」と述べた。その後、オバマ政権はミャンマーに制裁を課し、アウンサンスーチー氏が政治的役割を果たした場合に限って制裁を解除すると堅持し、2015年の彼女の台頭を促した。アウンサンスーチー氏がミャンマーの政権を握れたのは、オバマ、ヒラリーの力強い支持があったからだ。

 アウンサンスーチー氏のもう1人の重要な盟友は、億万長者のジョージ・ソロス氏である。彼が設立したNGO のネットワーク組織もずっとアウンサンスーチー氏の活動を大いに支持してきた。

 2012年、ジョージ・ソロス氏はアウンサンスーチー氏と会談してから、「ミャンマーの活動に参与している過程において、彼女のビジョンに大いに導かれた」と言った。現在89歳のジョージ・ソロス氏は自らの財団を通して、ミャンマーの政治に介入しているのではないか、と社会評論家らが指摘している。

 ジョージ・ソロス氏のオープンソサエティ財団(OSF)は、1994年から「ミャンマー・プロジェクト」を立ち上げ、長年にわたってミャンマー政府に影響を及ぼしてきた。ミャンマーのメディアの報道によると、ミャンマーで活躍している100以上のNPO組織はソロス氏からの支援を受けており、そのため、ソロス氏がミャンマーの政治を操っていると考える人が多いという。

 また、ミャンマーの総選挙でアメリカ大統領選と同じ集計機を使っているとの噂が飛び交っている。もちろん、それは憶測に過ぎず、確実な証拠がまだない。もし、ミャンマー国軍が本当に総選挙での不正を明らかにし、動かぬ証拠を世間に見せることができれば、それはミャンマー政権だけではなく、アメリカにも衝撃を与えるだろう。ミャンマーがアメリカと同じ手口を使い、同じ投票システムを使っているならば、バイデン政府はその真相を追及するだろうか?ミャンマー国軍に原因究明をさせるだろうか?このまま調査を行っていれば、その黒幕が暴かれ、ミャンマーだけでなく、アメリカに、そして甚だしい場合、同じ集計機を使用しているすべての国々に飛び火するだろう。もしかすると、これまで伝えられたアメリカ大統領選の不正問題は、意外にもミャンマーで明らかにされるかも知れない。

 ミャンマー政変に対して、アメリカ政府は強く非難をした。左翼メディアのニューヨーク・タイムズは、「バイデン氏はとても強い声明を発表した。『民主国家では、武力で国民の意志或いは誠実な選挙結果を覆すことは絶対に許されない』と強く述べた」、と報じた。バイデン氏はここで「誠実な選挙結果」と強調したが、人々が選挙結果を疑うことを恐れているように聴こえた。

 バイデン氏は、「この困難の時こそ、アメリカはミャンマーの人民と一緒にいる」と言い、さらに、「ミャンマーに再度制裁を課す可能性もある」と示唆した。

 今回、ミャンマー国軍は総選挙に不正があると指摘してクーデターを起こした。ミャンマーの総選挙に不正があったかどうかについて、関係部門の更なる調査が必要とするが、選挙に不正がないと証明されれば、ミャンマー国軍は選挙結果を受け入れなければならないであろう。

(文・李道真/翻訳・一心)

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