(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 ロシアにはこんな逸話がある。パンディト・ハンボ・ラマ(Pandido Khambo Lama)12世であるイチゲロフ(Itigilow)僧は、チベット仏教のハンボ・ラマ11世の転生霊童(生まれ変わり)であり、1927年に入寂してから90年以上経った今も、その肉身は腐らず、まるで生きているように見える。

 1926年、イチゲロフ僧は僧侶たちに「赤い恐怖がやってくる」、すなわち共産主義運動の人類に対する大虐殺がじきに始まると予言した。この予言はまもなく現実となった。ソビエト連邦共産党(以下「ソ共」)はその後の10年間で、3000万人のロシア人を不条理な死に追い込んだ。

 ソ共は自国民を虐殺しただけでなく、対外的にも暴力的な恐怖を浸透させた。ソビエト連邦による宗教団体への弾圧運動では、弾圧に関与する「粛反者」に1人1日10件の「案件処理ノルマ」があり、ノルマを超えた場合にはボーナスが与えられる。粛反者の中にはボーナスのために、1日に60件、1週間に数百件の案件を処理する者もいた。

 1927年6月15日、ハンボ・ラマ12世が入寂した。入寂の前に、30年後にまた見にくるようと僧侶たちに言い残した。1955年と1973年に僧侶たちが棺を開けてみると、ハンボ・ラマの肉体は腐敗しておらず、坐禅の姿勢のままであった。

 ソ共による宗教弾圧と暴力運動がロシア中に蔓延していたため、僧侶たちはこの発見を秘密として守りつづけた。

 2002年、病理学者のユーリィ・タンペリーエフ(Yuriy Tampereyev)はハンボ・ラマの腐らない遺体を徹底的に検査したが、遺体に人為的な処理をされた形跡は一つも見つけなかった。ラマの遺体は非常によく保存されていたが、ミイラの状態でもなかった。

 ロシア連邦法医学センターの専門家であるビクトール・ズヴヤーギン(Viktor Zvyagin)教授は、仏院の同意を得て、ハンボ・ラマの髪、皮膚、爪を少量採取して研究したところ、肉体のタンパク質が活発であることが判明し、棺の中に死臭もなかった。

 ハンボ・ラマがまだ生きていると判断していいかと聞かれると、ズヴャーギン教授は「いいえ。ラマの体温が20度を下回っている。これは紛れもなく死亡の状態である」と語った。

 ロシア国立人文大学のガリナ・イェルショワ(Galina Yershova)教授は、ハンボ・ラマが眠る石棺を開けた時、いい香りがしたと語った。ラマの関節は支障なく曲がることができ、筋肉は生きている人間のように弾力があった。

 通常、抽出されたタンパク質は、氷点下80℃の環境で、3~5年間保存できる。しかし、ハンボ・ラマの体内のタンパク質は、時間や温度、環境の影響を受けず、90年間以上も保存できた。

 ハンボ・ラマ12世の腐らない肉身は、人々に精神領域に存在する現象を探求する扉を開けた。人間は修行を経て、道徳を向上させると同時に、肉体を不腐の領域に達することができる。これはありえないようなことではなく、古今東西多くの実証が存在する。

 なぜハンボ・ラマは自身の腐らない肉身を残したのか。彼は生前、「人々が信仰を失った時には、私が現れ、人々に生きる意味を考えてさせるだろう!」と語った。

(翻訳・心静)