安全が確認されていない乳幼児用ワクチンを出荷した中国の製薬会社が大衆の怒りを買っている(画像:pixabay / CC0 1.0)

 ある中国の製薬会社は、安全が確認されていない乳幼児用ワクチンを25万本以上も出荷したことで大衆から怒りを買った。この事件に関して、中国当局は情報検閲や議論の監視によって隠ぺいを図っている。

 問題の会社である「長生バイオテクノロジー」は、ジフテリア、百日咳、破傷風に対する幼児向け複合ワクチン「DTap」を生産している。

 2017年10月頃、中国の国立食品医薬品局(NIFDC)が実施した調査の結果、同社が安全が確認されていないワクチンを生産していたことが判明した。

 また調査によって、25万2,600回分もの規格外品質の「DTap」の存在が確認された。しかしNIFDCは、山東省の食品医薬品局(FDA)に「DTap」の回収を命じるという方法で事態の収拾を図った――すなわち、事件を隠蔽しようとしたのだ。しかし、このことが逆に世間の注目を集める結果となった。

 一方で、「DTap」の回収作業は2017年11月まで実施されなかった。そのため1カ月間で大量の規格外「DTap」が販売され、20万人以上の子供に接種されてしまったのである。

2017年11月までに、規格外品質のワクチンが販売され、20万人以上の子供に接種された(画像:pixabay / CC0 1.0)

 こうした隠ぺいは、7月15日、中国のFDAが長生バイオの拠点である吉林省で、同社支店に対し狂犬病ワクチンの試験データ改ざんについて調査を行ったのがきっかけで露見することとなった。

 数日後、FDAは「長寿社」に対し罰金を課すと同時に「DTap」の製造を命じた。しかし時すでに遅し。同社は「約25万回分のワクチンを山東省病気予防センターに売却済みで、そのうちのほとんどが使用された」と公に認めたのであった。

 このスキャンダルは中国全土で怒りと議論を引き起こした。また香港には自身の子供に予防接種を受けさせたい本土の中国人が殺到した。

 習近平主席や李克強首相などの指導者たちは、このスキャンダルを非難し、責任者を司法に訴えるよう要求したが、一方で、政府はソーシャルメディアを検閲し、この話題を厳重に禁じた。そのため多くのネットユーザーは、中国当局が介入する可能性が低い米国大使館のWeiboのアカウント上で議論を行っている。

 中国がワクチン絡みの大規模スキャンダルを経験したのはこれが初めてではない。2016年には、山東省の医療関係者が5年間にわたって24もの県で汚染されたワクチンを販売していたことが判明している。

 

2016年には、山東省の医療関係者が5年間にわたって24の州で汚染されたワクチンを販売していたことが判明(画像:pixabay / CC0 1.0)

 2006年~2007年には、汚染されたワクチンが山西省の児童100万人に接種され、多くの児童が重篤な疾病で亡くなったり、深刻な後遺症を負う結果を招いた。

 山西省疾病予防センターの元局長・陳氏は、ラジオ『フリーアジア』のインタビューで、製薬会社と地元当局の癒着について語った。同氏によれば、関係者の利益のために安全規制がしばしば無視されることがあるという。

 「中国では『市場』と『規制』は独立していません。つまり、規制当局は『規制』を建前に市場関係者からお金を巻き上げているのです。こんな状況で、いったいだれが監督を行うというのでしょうか?」

(翻訳・今野 秀樹)

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