ある研究によると、幼稚園入園時に算数・読み書き・人間関係の構築といったスキルに秀でた子供は、その後も学業で成功を収めやすくなることが判明しました。その結果「幼稚園入園前の教育」がプレ幼稚園の目標になり、多くの保護者がそれを求めるようになっています。

ワシントン大学の研究者は、最新の研究成果を引用し「学習目標には『言語能力』という観点も追加されるべきです」と主張しています。幼少時から様々な言葉や文法を使用することによって、将来に言葉の上達が期待できるだけでなく、なんと他の科目の学力向上にも影響するというのです。言い換えれば、「言語能力」は、学問的・社会的な成功に役立つということです。ワシントン大学聴覚科学科のエイミー・ペース助教授は次のように指摘します。

「数学、科学、読み書きの能力等に焦点を当てた過去の研究は、『言語能力』が重要な役割を果たしている点を見逃してきました。実際には、言語能力は幼児教育研究の様々な場面で強力な予測因子として現れています」

この調査は、まず未就学児童が持つ様々な能力をチェックして、それらうち、どの能力が後の成功に寄与するかを特定する目的で実施されました。同研究の共同執筆者で、テンプル大学幼児言語研究所のキャシー・ハーシュ・パセック教授は、「『言語能力』とは、多くの単語を学んだり、単語を文章へと練り上げる能力を指します。こうした能力こそが重要なのです」と述べています。

テンプル大学、デラウェア大学、ノースカロライナ大学の研究者らは、この大規模な研究のためになんと1,200人以上の児童からデータを集めました。そしてこの研究結果は4月30日に幼児教育の専門誌に掲載されました。

この調査では、各児童は年齢や幼稚園の学年のみならず、児童の入園時の評価も考慮され、各々のグループに分けられました。そして、複数の学術的・社会的スキルの指標を用いて評価されました。こうした手法を採用したのは、子供の技能発達に関する従来の研究が、算数や読書のような「単一」の科目領域内における学習パターンのみに焦点を当てていたからです。

ワシントン大学の研究者は、「能力の組み合わせ」と学習能力との関係を明らかにすることを企図し、幼稚園入学時点でどのような組み合わせが子供の能力をより高めるかを予想したのです。

その結果、幼稚園児の「読み」の能力は、後に読書・数学・語学の学力と高い相関を示すことが判明しました。そして、算数の能力は読解力に対して相関関係がみられました。

ペース助教授は同調査の意義を次のように説明します。
「多くの人々は『言語能力』と『読み書き能力』を混同することが多いですが、私たちの指す『言語能力』とは、文字と音の組み合わせを解読し、単語の意味や文脈を理解する能力を意味します。これこそ『言語能力』が他の分野に影響を与える理由と言えるでしょう。なぜなら、たとえ数学や理科教育を行っている時であれ、児童は『言語』を通してそれを理解するからです」

「『言語能力』はまた、社会的相互作用の基礎を提供します。つまり『言語能力』が強い児童は友達や教師とのコミュニケーションが得意になります。また、『言語能力』は、教師からの指示を理解し、それに従う能力にも関係しています。このほか、抽象概念の理解は言語の知識と深い関連があるため、数学や科学の能力向上も期待できます」

同研究チームは、幼稚園入園前の教育成果は小学校3年生までに消えていくと予測していました。しかし、同調査によれば、幼児期の子供の能力はその後の学力と高い関係があることが分かったのです。なお、こうした関係は言語・数学・読み書きなどの分野でも同様に見られました。つまり、5才までの幼児教育が、その後の学問的な成功と深く関係している可能性があるのです。

ペース助教授は、これらの研究結果は実際の教育現場でも役立つと付け加えました。
「児童と親、または教師などとの質の高いやりとりは、強力なコミュニケーション基盤を児童に提供します。そしてこの基盤は将来にも有用です」

(翻訳・今野秀樹)