今年の中国の中秋節の連休中、各地で天候が急変しました。チベット自治区のアリ地区が猛烈な大雪に見舞われたほか、四川省のミニヤコンカでは大規模な氷河の崩落が起き、内モンゴル自治区や山西省、四川省などでは相次いでひょうが降りました。

 アリ地区では9月25日午前10時から27日正午にかけて猛烈な大雪となり、最大降雪量は121.9ミリに達しました。路面の凍結も重なり、交通や牧畜、住民の生活に大きな影響が出ています。チベットの気象当局は26日も、4段階のうち下から2番目にあたる「黄色」の大雪警報を出し、アリ地区やシガツェの一部の高地では局地的にさらに激しい雪になる恐れがあるとしました。当局は、雪がやんだ後も雪崩や土石流、がけ崩れに警戒するよう呼びかけています。

 中でも被害が大きいのがプラン県です。県の中心部で足止めされている観光客の張さんによると、チベットの伝統的な土造りの家が雪の重みで数多く倒壊しましたが、当局は今も死傷者の数を公表していないということです。

 「急に大雪が降り出して、二日二晩降り続いたんです。まったく準備してなかったですよ。今も1メートル以上積もってて、土でできた家がたくさん潰れました。土壁もかなり壊れてます。車も全部雪の下です。鳥とか野ウサギとか、寒さや飢えで死んだのがたくさんいます」

 プラン県の北部にそびえるカン・リンポチェは、日本ではカイラス山の名で知られる聖山です。チベット仏教、ヒンドゥー教、ボン教、ジャイナ教の信者から世界の中心としてあがめられ、毎年、国内外から多くの巡礼者が訪れて、山の周りを歩いて巡る「コルラ」を行います。今回の大雪で山は閉鎖され、巡礼に訪れた李さんは、今も山のふもとの放牧地から出られず、食料が底をつきかけています。

 「この雪の深さじゃ、出られないんですよ。冬の放牧地にいるんですけど、まさかこんな大雪になるとは思わなくて。野生の小動物たちも何日も食べてなくて、前に野菜を全部この子たちにあげちゃったから、自分の食べる野菜もないんです。今日はインスタントラーメンを一袋煮ただけです」

 巡礼ツアーのガイドを務める王さんによると、ラサから巡礼の出発地タルチェンまでは、標高5000メートル前後の峠を七つ八つ越えていきます。今は雪が深く、ひどい渋滞が起きていて、山の閉鎖が解除されるのは10月4日以降になる見通しです。足止めされた観光客が多く、宿泊費や食費も跳ね上がっています。

 「今は山が閉鎖されてて、コルラもできないんです。宿も高いし食事も高いし、どこにも行けない。国道のあちこちに雪とブラックアイスバーンがあるから、運転に慣れてない人が事故を起こすと、すぐ十何時間も渋滞する。交通費も倍になってます。来ないほうがいいですよ。お金と体力を無駄にするだけです」

 一方、地元の牧畜民によると、多くの放牧地にはいまだに救援が届かず、人も家畜も食べるものが尽きかけているといいます。プラン県の牧畜民、ドルジェさん(仮名)はこう訴えます。

 「大雪の夜、テントが一つ倒れて、うちでは馬が2頭、ヤクが300頭以上死にました。こんな大雪は初めてだったから、干し草の準備もしてなくて。何日も何も食べてなくて、本当にかわいそうで。政府はまだ来てないんですよ」

 同じころ、四川省西部のミニヤコンカでも驚くような光景が見られました。インターネット上で拡散している映像には、巨大な氷の塊が高い場所から突然崩れ落ち、氷と雪が滝のように流れ落ちていく様子が映っています。ところが現場からは歓声や拍手が上がり、司会者も興奮した様子で、目の前の光景を「氷河の大滝」と表現していました。ここでは当時、9月25日から27日までの日程でトレイルランニングの大会が開かれていて、国内外から3300人の選手が参加していました。

 氷河の崩落は確かに迫力のある光景ですが、近くに人がいれば大きな危険を伴います。歓声に沸く現場の映像は、見る側をひやりとさせるものでした。

 実は、ミニヤコンカの氷河では異変が進んでいます。中国科学院の長年の観測で、海螺溝(かいらこう)氷河の後退が加速していることがわかりました。この氷河はかつて年に20メートルから30メートルほど後退していましたが、2016年から2023年にかけては年50メートル以上、2022年から2024年にかけては年150メートル以上のペースで後退しています。氷が薄くなるにつれ、周囲のモレーン(氷河が運んだ土砂や岩が積もった地形)の斜面も不安定になり、落石や崩落が増えています。

 2024年には、山の東側にある燕子溝で氷河と岩盤の崩落が起きました。最初は高い場所の氷と岩が崩れ落ちただけでしたが、それがたちまち土石流となって一時的な天然ダムをつくり、そのダムが決壊して、最終的には洪水にまで発展しました。目の前の崩落がそれだけで終わるのか、大きな災害の始まりになるのかは、誰にもわかりません。

 各地ではひょうも相次ぎました。連休2日目の26日には内モンゴル自治区のフフホトや山西省の大同で、27日には四川省の紅原県でひょうが降りました。拾ったひょうをノギスで測ったら直径がおよそ3.5センチあったという人や、車のガラスに穴が開いたという人もいます。
チベットの大雪、ミニヤコンカの氷河崩落、そして各地のひょう。その直前には、四川省や重慶市が濁流に見舞われたばかりでした。この中秋節の連休、中国の天気はめまぐるしく姿を変え続けました。

(翻訳・吉原木子)