深夜、福建省にある創立100年を超える名門校の寮で、千人を超える生徒たちが一斉に洗面器や手すりをたたき、「家に帰りたい!」と声を上げました。
続いて、生徒たちは歌い始めました。流行の歌ではありません。中国の国歌「義勇軍行進曲」です。
生徒たちは、いったい何を求めていたのでしょうか。学校はどう対応したのでしょうか。さらに注目すべきなのは、こうした光景が、ここ2年足らずの間に中国各地の学校で繰り返されていることです。
現場は、福建省寧徳(ねいとく)市にある霞浦(かほ)第一中学校です。
霞浦第一中学校は、寧徳市だけでなく福建省内でも広く知られる、創立100年を超える名門校です。中学校と高校が併設されており、教職員はおよそ300人、生徒はおよそ3000人から4000人います。
9月22日から24日にかけて、この学校の生徒たちが連日、集団で抗議しました。きっかけは、一見ささいなことに思えるかもしれません。中秋節の連休に入る前の晩にも、学校が夜間自習を予定していたのです。これは、夜も学校に残り、決められた時間まで勉強するもので、この学校では普段、夜10時まで続きます。
中国国務院弁公庁が発表した日程によると、今年の中秋節の連休は9月25日から27日、10月初めの大型連休は10月1日から7日です。二つの連休の間には、平日が3日しかありません。生徒たちの要求は単純でした。連休前夜の自習をやめて、早く家に帰らせてほしいというものです。
高校3年生の一人は、大紀元の取材に対し、次のように話しました。「学校で抗議があったのは確か。でも、私は病気で休んでいたから、その場にはいなかった。今は高校3年で、自宅から通っている。高校1、2年生は寮生活だ」
取材に応じた生徒の沈(しん)さんは、さらに具体的に説明しました。「千人を超える生徒が抗議した。寮で『家に帰りたい』と叫んで、国歌も歌った。途中でデモ行進もした」
では、この抗議は、どのように広がっていったのでしょうか。
海外の複数の中国語メディアによると、23日夜、まず高校1、2年生が拍手をしたり、手すりをたたいたりしながら、「家に帰りたい」と叫び始めました。抗議はすぐに高校3年生にも広がり、複数の校舎に波及しました。
男子生徒たちが寮に戻ったあとも、洗面器や手すりをたたき続ける生徒がいました。学校側が抗議を抑え込み、ようやく騒ぎが収まり始めたのは、夜11時を過ぎてからでした。
しかし、それで終わったわけではありません。翌日の午前、2時間目の授業が終わったあとの休み時間に、生徒たちは再び教室の外へ出ました。一部の生徒が学年の責任者や警備員に連れていかれ、ほかの生徒たちが一時、学校側の職員を取り囲みました。職員は最終的に、生徒たちの要望を上に伝えると約束しました。
同じ日の午後には、校長に直接電話をかけ、なぜ連休前夜にも自習をしなければならないのかと訴えた生徒もいました。生徒の説明によると、校長は通話中に何度も生徒の話を遮り、疑問をぶつけられても、逆に問い返す形で応じたといいます。生徒の代表も学校側と話し合いましたが、学校は当初の予定を変えませんでした。
その後、学校は管理を厳しくし始めました。沈さんによると、学校側は生徒たちに、これ以上「騒ぎを起こさないように」と警告し、「さもなければ処分する」と伝えたといいます。報道によると、生徒が再び集まるのを防ぐため、学校側は各階で通行を制限しました。24日夜には、生徒指導を担当する部署も校舎に職員を派遣し、監視に当たりました。
それでも、その夜、男子寮では生徒たちが行進し、「義勇軍行進曲」を歌い続けました。
ここまで聞いて、なぜ生徒たちは、あえて国歌を歌ったのかと疑問に思う方もいるかもしれません。この歌は、「立ち上がれ!奴隷となることを望まぬ人々よ!」という一節で始まります。
連休前夜も教室に残るよう求められた高校生たちが、寮で声をそろえてこの歌詞を歌ったのです。生徒たちがこの歌詞を借りて、学校の厳しい管理に対する強い不満を表していたことは明らかです。
結果はどうだったのでしょうか。沈さんは、こう話しました。「結局、夜間自習は取りやめにならなかった。抗議は成功しなかった。30日も夜間自習があると聞いている」
もし、これが一つの学校だけで起きた出来事なら、それほど注目されなかったかもしれません。しかし、霞浦第一中学校だけの話ではありません。
2026年7月10日、湖北省安陸(あんりく)市の高校、第一高級中学校では、学校側が当初20日間だった夏休みを5日間に短縮しました。高校1年生が集団で授業をボイコットし、校内を行進しました。「権力の集中に反対し、平等を求める」と書かれた横断幕を掲げ、学校側に「なぜ毎年、生徒が反発するのか」と問いただしました。
5月16日には、山東省済寧(さいねい)市の汶上(ぶんじょう)第一中学校で、2000人を超える生徒が校内の広場に集まり、「休みをくれ」と叫びました。
2月1日には、山東省徳州(とくしゅう)市にある、外部との行き来を厳しく制限した全寮制のインターネット依存矯正学校で、生徒たちが抑圧に耐えかねて抗議しました。寮の設備が壊され、指導員たちは逃げ出しました。ネット上では、生徒たちの行動を支持する声が数多く上がりました。
さらにさかのぼると、2025年には、広西チワン族自治区の玉林(ぎょくりん)市で、職業学校の生徒数千人がスマートフォンの使用を制限する新たな規則に抗議しました。河北省の遵化(じゅんか)市では、数百人の生徒が学校側による一方的な休暇日程の変更に抗議しました。貴州省の畢節(ひっせつ)市では、寮生活を送る生徒たちがスマートフォンの持ち込み禁止に抗議し、寮の設備を壊す生徒もいました。江蘇省の興化(こうか)市では、3校の中学校·高校で数千人の生徒が抗議し、最終的に学校側は冬休みの補習を取りやめました。
中でも胸が痛むのは、2025年5月に河南省の許昌(きょしょう)第六中学校で起きた事件です。女子生徒1人が飛び降りて亡くなり、教師から体罰を受けたことが原因ではないかとされています。その後、大勢の住民や生徒が学校周辺に集まり、抗議の声を上げました。学校の設備などを壊す行為に加わった生徒たちは拘束されました。
こうした個々の出来事の背景には、さらに注目すべき数字があります。
アメリカに本部を置く人権団体「フリーダムハウス」の調査プロジェクト「中国異見モニタリング」によると、2025年7月から9月に、中国で記録された抗議などの異議表明の動きは1392件でした。前年の同じ時期より45%増え、3か月ごとに集計した件数は、6期連続で前年の同じ時期を上回りました。2025年の年間件数は5343件で、2024年より44%増えました。
参加者の多くを占めたのは、労働者、住宅の所有者、農村住民でした。しかし、保護者や生徒などの姿も、抗議の現場でますます多く見られるようになっています。2025年7月から9月だけでも、学校の安全に関する抗議が128件記録されました。報告書は、こうした抗議は規模が大きくなる傾向があり、弾圧も受けやすいと指摘しています。
霞浦第一中学校では、結局、夜間自習が予定どおり行われました。毎日深夜まで勉強する子どもたちが、寮で叫んでいたのは、ただ「家に帰りたい」という言葉でした。
次に、こうした声が上がるのは、どの学校なのでしょうか。
(翻訳・藍彧)
