9月初め、新学期が始まった日、天津市静海区(せいかいく)で、小学3年生の男の子が宿題をしている最中に感情を抑えきれなくなり、泣き出しました。そのときの母親とのやり取りを撮影した短い動画が、中国の主な交流サイトで瞬く間に拡散しました。

子ども:頑張ったって何の役に立つんだよ。大人になったら、どうせ金持ちにこき使われるだけじゃないか。

母親:だから、今もっと勉強すれば、大人になったときに自分がお金持ちになれるのよ。

子ども:それ、本当なの?聞いてるんだよ。本当にそうなの?どんなに試験でいい点を取ったって、仕事が見つからなければ、結局は力仕事をするしかないんでしょ。こき使われることになるんじゃないの?この世の中って、最初から大きな落とし穴じゃないか。

母親:ちゃんと頑張れば、仕事は見つかるわよ。ほかの人よりたくさん努力するの。

子ども:それは想像でしょ。現実じゃないよ。

母親:想像じゃないわよ。本当のことを言ってるの。でも、ほかの人より努力してこそ、ほかの人より一歩先に進めるんじゃない?

子ども:それが現実なの?ねえ、僕にどうしろっていうの?どんなに試験でいい点を取ったって、仕事が見つからなければ、結局こき使われるんじゃないか。

母親:じゃあ、一生懸命頑張って、もっともっと頑張って、全国1位になったら?

子ども:そりゃ、すごい話だね!でも、それって空想でしょ?こっちは現実の話をしてるのに、お母さんの話はSFみたいじゃないか。

母親:皆さん、もうお手上げよ。私もどうしたらいいか分からない。お母さんも子どものころ、あなたみたいに世の中のことが分かっていたら、今ごろもっと気楽に生きていただろうね。じゃあ、ちょっと聞くけど、大人になったら人にこき使われるって分かっているなら、今から全部投げ出して、何もしなければいいってこと?

子ども:そうだよ。

母親:じゃあ、どうして毎日勉強して、毎日宿題をしてるの?

子ども:お母さんが無理やりやらせてるんじゃないか。もう自閉症になりそうなくらい追い詰められてるんだよ。分かってるの?

母親:じゃあ、いったんやめよう。もう宿題はやらなくていいから。泣かないで、泣かないで。もうやめよう、やめよう。

 この動画はネット上で急速に広まり、14万5000件を超える「いいね」が付きました。ネットユーザーからは、「この子は世の中のことを分かってる」「悟るのが早すぎた」「40歳の大人よりよく分かってる」「この子に夢や目標がないんじゃない。現実がよく見えてるんだ」「勉強が役に立つなら、ニュースアプリ『今日頭条』の投稿サービスなんて、とっくにつぶれてるよ」といった声が相次ぎました。

 「子どもに無理やり勉強ばかりさせて、終わりのない競争に追い込むくらいなら、まずは幸せな子ども時代を過ごさせてあげたほうがいい」「『努力すれば成功できる』なんて気休めを吹き込むより、何年か思い切り遊ばせてあげたほうがいい。どうせ人にこき使われる日々は長く続くんだから。子どもでいられる時間は、1日過ぎるごとに減っていくんだ」という意見もありました。

 さらに、こんな率直な声も上がりました。「小学3年生の子が、泣き崩れる姿を通して、中国中の親に大切なことを教えた。この子が現実に気づくのが早すぎたんじゃない。この社会が現実に気づくのが遅すぎたんだ。『努力すれば運命を変えられる』という言葉が、真実から気休めに変わり、気休めからうそに変わったとき、考えるべきなのは、なぜ子どもが泣いているのかではなく、なぜ大人はまだ笑っていられるのか、ということだ」

 この親子の会話が広く共感を呼んだ背景には、近年、中国の若者の失業率が上昇し続けていることがあります。9月17日、中国国家統計局が発表したデータによると、在学中の学生を除く都市部の16歳から24歳の若者の失業率は、8月に18.9%に達し、今年最も高くなりました。これでも当局が実態よりよく見せた数字だという見方が広がっています。

 この数字は、中国の若者が仕事を見つけることの難しさを浮き彫りにしています。そして、社会全体に広がる不安は、すでに小中学生にも影響を及ぼしています。かつての「勉強すれば運命を変えられる」という考えから、今再び広がる「勉強しても役に立たない」という考えへ。その背景には、就職難だけでなく、教育の価値に対する若い世代の失望や、将来の暮らしへの不安があります。

 2026年に中国の大学などを卒業する人は、2025年より48万人多い1270万人に達する見通しです。そこに、卒業後も仕事が見つかっていない人や海外留学から帰国した人、大学院の入学試験や公務員の採用試験に不合格となった人たちも加わり、夏の就職活動は一段と厳しさを増しています。

 中国当局が公表するデータは、中国の本当の失業状況を反映していないという分析もあります。仕事が見つからず求職活動を諦めた人や、フードデリバリーの配達、配車サービスの運転、単発の仕事などで何とか生計を立てている人たちの実情は、この数字に十分反映されていないというのです。

 ここ2年ほど、中国当局は「新しい就業形態」「柔軟な働き方」「時間をかけた就職」といった言葉を頻繁に使い、厳しい雇用情勢を覆い隠して、失業や十分な仕事を得られない実態を目立たなくしています。当局は「柔軟な働き方」を、「仕事の報酬や事業収入を得るために、週に1時間以上働くこと」と定義しています。配車サービスの運転手、宅配便の配達員、フードデリバリーの配達員、ネットのライブ配信者、家事代行スタッフなどが、これに含まれます。

 台湾紙「工商時報」によると、首都経済貿易大学と中国就業促進会が共同で設立した「中国新就業形態研究センター」は、6月に「2025年中国の現場労働者の就業に関する調査報告」を発表しました。大量のデータの継続的な分析や、対象者を属性ごとに分けたアンケート、現地訪問などを通じて、中国の現場労働者の最新の雇用状況をまとめたものです。報告によると、「柔軟な働き方」をする人は2021年に2億人を超え、ここ2年は毎年およそ4000万人のペースで急増しています。2024年には2億4000万人、2025年には2億8000万人となり、今年はさらに3億2000万人に増えると予測されています。

 中国国家統計局のデータでは、実際に働いている人の数は、おおむね7億2500万人前後で推移しています。この数字と先ほどの報告を照らし合わせると、「柔軟な働き方」をする人が3億2000万人に達した場合、働く人のおよそ44%が不安定な就業状態にあることになります。そのうちかなりの人が、実際には統計に表れない失業状態や、十分な仕事を得られない状態にあるということです。

 ほかの研究機関やメディアの調査によると、「柔軟な働き方」をする人のうち、短大や専門学校に相当する学校を卒業した人や、それ以上の学歴を持つ人の割合は、年々上昇しています。もともとIT、不動産、金融、インターネット関連などの業界で働くことを望んでいた会社員や大学卒業者の多くが、失業や求人の減少などを背景に、最終的にはフードデリバリーの配達、配車サービスの運転、ネットのライブ配信など、比較的始めやすい仕事に流れ込んでいます。

 海外のネットユーザーからは、「失業は失業なのに、わざわざ『柔軟な働き方』と言い換える。結局、自分たちの政権を守れなくなるのが怖いんだ」「『柔軟な働き方』をする人が3億人いると認めた時点で、実際はその数字を超えているということだ」「農村の失業者も加えたら、何億人になるか分からない」といった声が上がっています。

(翻訳・藍彧)