今年7月6日、広西チワン族自治区横州市(おうしゅうし)で六藍(ろくらん)ダムが決壊し、多数の死傷者が出ました。この事故を受け、中国では、さらに巨大な水利施設である三峡ダムへの懸念が再び高まっています。そうした中、三峡ダムの内部関係者による告発が相次いで表面化しています。
8月14日、長期にわたり三峡ダムの内部情報を発信しているXのブロガー「羅翔~破幕推牆」は再び投稿し、三峡ダム決壊には「半年前から兆候があった」と主張しました。今年2月に情報提供を受けていたものの、当時は公開しなかったといい、「後悔してもしきれない。まさか本当だったとは夢にも思わなかった」と述べています。
公開されたスクリーンショットには、撮影日として2026年3月1日と記されており、三峡ダム本体のB304L17からF701T44にかけて710カ所以上の亀裂があり、最も幅の広い亀裂は73センチに達しているとされています。また別の亀裂は、幅21センチ、長さ13.5メートルと記されています。
スクリーンショットによると、これらの情報は「丁書記」に報告されていたとされ、内容には現在の三峡集団会長、劉偉平(りゅう·いへい)や、最近「党籍剥奪·公職解任」の処分を受けた元中国共産党中央政治局委員、元新疆ウイグル自治区党委員会書記の馬興瑞(ば·こうずい)の名前も登場します。この「丁書記」について、外部では一般に、中国共産党中央政治局常務委員、国務院副総理の丁薛祥(てい·せつしょう)を指すとみられています。今年6月8日、三峡水運新ルート事業の着工式に出席したのも丁薛祥でした。
これより前にも、同じブロガーは「三峡ダムの内部職員」から寄せられたという告発を相次いで公開していました。この内部関係者は、「横州市で1万7000人が死亡した。それも始まりにすぎない。三峡ダムの決壊は時間の問題だ。死者数は爆発的に増え、被災者は少なくとも4億7000万人に及ぶ」と語っています。さらに、当局はすでに三峡ダム崩壊を想定した分析を行っており、「数百ページに及び、72時間後、1週間後、3カ月後、半年後……と分析され、データは非常に詳細だ」と明かしました。
添付された動画には、「三峡ダム瞬間決壊シナリオ·シミュレーション図」と題する資料が映っており、上海を含む少なくとも29の長江沿岸都市について、影響を受ける人口が記されています。図では、ダムが決壊した場合、洪水のピークはまず湖北省宜昌市(ぎしょうし)周辺に到達し、その後、荊州市(けいしゅうし)、武漢市、安徽省安慶市(あんけいし)、江西省九江市(きゅうこうし)へと順次押し寄せ、1週間以内に影響を受ける人口は約1億3200万人に達するとされています。
こうした告発について、中国当局は現在まで何の反応も示していません。
では、流出したこれらの図面は、単なるネット上のデマなのでしょうか。それとも本当に体制内部から流出したものなのでしょうか。
著名な水利専門家、王維洛(おう·いらく)は、海外の中国語ポッドキャスト「方菲時間(ファンフェイ·シージエン)」のインタビューで、自身の見解を示しました。王維洛は、作図の専門性だけを見ても、これらの図は民間で偽造されたものではなく、三峡集団または水利部長江水利委員会の内部から出た可能性が極めて高いと指摘しています。図面のベースとなっている地図の精度は非常に高く、「グーグルマップでも、中国の北斗地図でも、中国の高徳地図でも、このような地図は入手できない」と説明しました。中国では大縮尺地図が以前から軍によって厳しく管理されているためだといいます。
王維洛はさらに、ある細部に注目しました。図面に示された被災範囲は、ダム地点から上流側にも一定区間延びています。これは、三峡ダム事業について1986年から1988年にかけて行われた実現可能性の検討段階で使われたモデルデータと非常によく一致するといいます。そのため王維洛は、「これらの図は中国(中共)政府が自ら作成したものだ」と判断しています。
王維洛によれば、本当の危険はこうした数字そのものだけではありません。「人々が長期間にわたり、ダムの実際の変位、漏水、変形に関するデータを知ることができないこと自体が、最大のリスクだ」と指摘しています。
著名なメディア関係者、李沐陽(り·もくよう)も、「新聞看點」の番組で同様の見方を示しました。李沐陽は、これらの図が示している情報は、中国共産党にとって重大な秘密である可能性があるとみています。三峡ダムがひとたび決壊すれば、歴史的規模の大災害となり、死傷者は数十万人、場合によっては数百万人規模に達する恐れがあるといいます。言い換えれば、三峡ダムは1億人を超える人々の頭上にぶら下がる剣のような存在だということです。
そして、この「剣」は三峡ダムだけではありません。
Xでは、ブロガーの「李承鵬(大眼哥)」が最近、中国には現在4万カ所を超えるダムがあり、すでに「14億人の頭上にぶら下がる時限爆弾」になっていると投稿しました。中国水利部長の李国英(り·こくえい)が公表したデータによると、2025年時点で、中国には9万4877カ所のダムがあり、その8割以上が1950年代から1970年代に建設されました。このうち、稼働から50年以上が経過したものは4万2000カ所、60年以上のものはさらに2万1000カ所に上ります。その大半は「大躍進」前後の時期に建設された古いダムで、しかも、そのほとんどがアースダムです。
一方、中国の水利当局がアースダムに設定している設計上の耐用年数は50年です。李承鵬は、このことは大半のアースダムがすでに耐用年数を超えて運用されていることを意味すると指摘しています。さらに、メンテナンスも不十分で、「大半が問題を抱えたまま水をせき止めている」としています。中国工程院院士の鈕新強(ちゅう·しんきょう)も、過去に中国で発生したダム決壊事故のうち、アースダムが93%を占めているとのデータを明らかにしています。
中国当局はこれまで、ダム決壊の詳しい状況や件数を国民に正式に公表したことはありません。しかし李承鵬は、中国の水利分野の専門家が示したこれらのデータを見ると、「14億人の頭上には、いつ決壊して水が押し寄せてもおかしくない4万カ所以上のダムがぶら下がっている」とし、これはもはや危機をあおる話ではなく、現実なのだと述べています。
710カ所以上の亀裂、最大73センチの亀裂、耐用年数を超えた4万カ所以上のダム……。こうした数字の背後には、多くの人が知らず、確かめる手段もない実態があります。情報公開と透明性が最も希少なものとなった今、中国の人々は、関心を持ち続け、問い続けるしかなく、最後には自らの命でそのすべてを引き受けることになるのかもしれません。
(翻訳·藍彧)
