中国の多くの地域で、新型コロナウイルスの陽性率が数週間にわたって上昇を続けています。中国疾病予防管理センター(中国CDC)の最新の定点観測データによると、外来や救急を受診したインフルエンザ様症状の患者から採取した呼吸器検体のうち、新型コロナの陽性率は20.3%に達しました。前週から4ポイントの上昇で、モニタリング対象の病原体の中では最も高い割合です。インフルエンザのような症状を訴える患者の5人に1人が、新型コロナの陽性判定を受けている計算になります。重症の急性呼吸器感染症で入院している患者の間でも、新型コロナウイルスが最も多く検出されています。今回の感染拡大では、南部の陽性率が北部を上回っているほか、15歳から59歳の世代で感染率が最も高いという特徴も見られます。

 上海の病院で感染症科の責任者を務めるある医師は、この数字はあくまで定点観測に基づくものであり、全体の感染率を示すわけではないとしながらも、上昇傾向そのものは無視できず、依然として感染拡大の最中にあると指摘しています。ただし中国当局は、これまで実際の感染状況を過小評価してきた経緯があり、公表されるデータは常に外部から疑問の目を向けられています。

 感染率の上昇とともに、市民からは悲鳴に近い声が相次いでいます。複数の取材対象者が口をそろえるのは、今回の感染で最もつらいのは発熱ではなく、長引く激しい咳と、次々に現れる多様な症状だということです。

 さらに多くの人を戸惑わせているのが、油断している間に病状が一気に悪化し、気づかないうちに感染してしまうケースの多さです。上海に住むある女性は、当初はエアコンの冷えによる微熱だと思い、医師からも普通の風邪として様子を見るよう言われていました。ところが夜のうちに病状が悪化し、翌朝には39.1度の高熱に達しました。天井が回るほどのめまいに襲われ、薬を飲まなければとても耐えられなかったといいます。

 病院を受診したことでかえって感染してしまった人もいます。湖北省に住むある人は、肋骨の骨折で入院・手術を受けた後、再診の際に新型コロナの陽性と判定されました。以来、咳が出そうになっても肋骨の痛みを恐れて我慢するしかなく、非常に苦しい状態が続いています。

 急増する感染者数は、患者の身体的な苦痛を悪化させるだけでなく、各地の病院に再び長い行列を生み、抗ウイルス薬の入手すら難しい状況を招いています。複数の取材対象者によれば、受診から会計まで数時間かかるのは今や当たり前だといいます。ある男性は救急外来を受診した際、診察と検査結果待ち、再診までに合わせて4時間半を費やしました。インフルエンザとの同時感染を防ぐため、極力外出を控えるよう医師から念を押されたほどです。

 薬の入手をめぐっては、未成年者や一部地域の患者がより大きな壁に直面しています。江蘇省南京市のある高校3年生は、感染後に微熱と激しい咳、嗅覚障害に悩まされ、咳のたびに吐き気がこみ上げ、涙が出るほどだったといいます。しかし18歳未満であるため、臨床試験データと安全性の観点から、医師は成人用の特効薬を処方できませんでした。結局、市販の風邪薬で症状を和らげながら、一人で自宅隔離するしかありませんでした。大人の患者が薬を買えないケースも一部地域で起きています。経済メディアの報道によれば、北京のある会社員の女性は二度目の感染をした際、街の薬局に新型コロナの薬がないだけでなく、デリバリーアプリでも購入できないことに気づいたといいます。記者による独自の取材でも、北京の複数の薬局で新型コロナ治療薬が品薄になっていることが確認されています。

 拡大を続ける感染状況について、中国疾病予防管理センターはこれを、感染が日常化した中での周期的な波の一つと位置づけ、規模は過去2年間と同程度だと強調しています。一方、国外の専門家の見方は異なります。米陸軍出身のある微生物学者は取材に対し、公式発表の文言を見る限り、中国本土がすでに明確な夏の感染拡大の波の中にあることは間違いなく、その行間から防疫への圧力がうかがえると指摘しました。さらに、データの透明性が欠けているため重症者や死者の実態は依然として不透明であり、外部に公表される公式データは、実際の感染規模という氷山の一角に過ぎない可能性が高いと強調しています。

(翻訳・吉原木子)