今年の台風9号「バービー」は、猛烈な勢いで7月11日の夜から12日の未明にかけて中国の浙江省に2度上陸し、各地にまるで災害映画のワンシーンのような甚大な被害をもたらしました。「巨大なポンプ」とも形容されるこの台風は、上陸地点で猛威を振るうだけでなく、雨雲を遠方まで広げ、北京、天津、河北省をはじめとする内陸部にも記録的な豪雨をもたらしており、社会全体の大きな関心を集めています。
気象データによると、今回の台風の破壊力は驚異的です。7月11日の午後11時20分頃、台風の中心はまず浙江省台州市の沿岸に上陸しました。そのわずか数十分後の12日午前0時頃には、温州市楽清市の沿岸に再び上陸しています。2度の上陸時、中心付近の最大風速はいずれも秒速38メートルから40メートルに達し、中心気圧は955から960ヘクトパスカルまで低下しました。気象当局は、この台風が2026年に入ってから中国に上陸した最も強い台風であるだけでなく、1949年以降の7月に浙江省に上陸した台風としても過去最強であることを確認しています。この歴史的に見ても稀な威力が、今回の被害の大きさを決定づけました。
度重なる暴風雨の襲来により、温州市や台州市などの地域は深刻な被害を受けました。猛烈な風により、楽清市全体で1300本以上の樹木が倒れ、そのうち700本以上が根こそぎ倒されています。金華市に住むあるネットユーザーは、強風で折れた長さ2メートルの木の枝が自宅の屋根に突き刺さるという危機的な状況に遭遇し、車内での避難生活を余儀なくされました。SNSで拡散された映像を総合すると、被災地の現場は目を覆うような惨状です。濁流が住宅地や工場に流れ込み、地下駐車場が水没して複数の車が屋根まで浸かりそうになっていました。また、強風でビルが激しく揺れ、太陽光発電所も甚大な被害を受けています。強風が大きな板や建築廃材を巻き上げて空を舞い、窓ガラスが破壊されたほか、道端の電柱の電力設備も風雨の中で火花を散らしながらショートして煙を上げています。
こうした甚大な被害を受け、SNSのX上では、中国のネットユーザーから憤りや現状を嘆く声が相次いでいます。あるユーザーは、水害が頻発する背景には往々にして人為的な問題が伴っていると指摘し、被災後にアピール目的の救助活動に奔走する当局の姿勢を批判しています。また、歴代王朝の末期に災害が頻発した歴史を引き合いに出し、自然災害の背後に潜む深刻な社会危機を嘆く声や、大洪水が経済や社会に与える巨大な衝撃に警鐘を鳴らすコメントも見受けられました。
実際のところ、今回の台風の脅威は上陸地点にとどまりません。専門家は、台風が上陸したからといって危険が去ったわけではないと警告しています。この台風は直径1500キロメートルにも及ぶ巨大な散水車のようなもので、強風域は通常の台風の3倍から5倍に達します。広大な外周の雨雲と、遠方から流れ込む大量の水蒸気により、強烈な雨は浙江省や安徽省を横断する過程で豪雨をもたらすだけでなく、華北地方や東北地方にまで波及しています。全国で10以上の省や地域がこの暴風雨の直接的、または間接的な影響を受けており、中国国内全体における水害対策の負担は、単なる沿岸部の強風対策をはるかに超えるものとなっています。
記録的な降雨の広がりとともに、警戒レベルも引き上げられています。中央気象台は2年ぶりに最高レベルの「大雨赤色警報」を発表し、同時に台風および局地的な激しい気象現象に対する警報を維持しています。警報によると、12日から13日にかけて、上海と浙江省の沿岸部では秒速20メートルから35メートルの暴風に見舞われる見込みです。同時に、遼寧省、河北省、天津市、福建省などの多くの地域で大雨となり、一部の地域では1時間あたりの降水量が最大90ミリ以上に達すると予想されています。さらに、安徽省の一部では総降水量が250ミリから350ミリに達する記録的な大雨となる恐れがあり、江蘇省や浙江省の一部では竜巻が発生する可能性も排除できません。
台風の動きを振り返ると、11日に浙江省沿岸を直撃した後、12日の昼頃に安徽省内に入り、強い降雨の中心を安徽省の中南部、浙江省の西部、江西省の東部へと移動させました。その後、台風は13日に安徽省の東部で進路を北に変え、降雨帯を江蘇省や山東省へと押し上げ、最終的に14日には山東半島から海へ抜けると予想されています。影響範囲が広く、極めて強い破壊力を持つこの台風に対し、通過する各地で厳重な警戒と防災への対応が続いています。
(翻訳・吉原木子)
