7月6日午前、中国広西チワン族自治区、南寧市の横州市での出来事です。現場の映像では、悲鳴が鳴りやまないうちに、濁流が村全体を飲み込んでいきます。ある村人は「村が丸ごとなくなってしまった」と泣き叫んでいました。
事故が起きた「六藍ダム」は、横州市で最大規模の中型ダムであり、普段は下流に住む17万人の生活用水を支えています。最も恐ろしいのは、ダムが決壊する4時間以上前に、放流ゲートがすべて開かれていたことです。それでも水を食い止めることはできませんでした。この4時間の間に、一体何が起きたのでしょうか。
振り返りますと、この決壊には明確な経緯があります。
7月4日以降、台風10号の影響で、南寧市の各地で豪雨が降り続きました。賓陽県では24時間雨量が713.3ミリに達しています。7月5日の夜、六藍ダムは放流を開始しました。7月6日午前2時30分には水位が111.2メートルに達し、設計上の洪水位を突破します。管理側は直ちに緊急通知を発令しました。午前6時に放流ゲートを全開にすると決め、下流の自治体には、住民を河川から遠ざけるよう求めました。
しかし、ゲートを全開にした後も、水位はむしろ上昇を続けたのです。午前10時20分前後、頂上を越え続けた洪水が、ダム本体の2箇所、総延長約50メートルを決壊させました。あるメディアの推計では、1日でダムに流れ込んだ水量は、ダム全体の貯水容量にほぼ匹敵するといいます。1958年に着工されたこのアースダム、つまり土を固めて造られたダムは、66年間の稼働の末、この大雨に耐え切れませんでした。
ダムのすぐ下には村が隣接しています。洪水が到達した時、逃げる時間はほとんど残されていませんでした。ネット上には、「大雨でゆっくり水位が上がったのではない。ダムが決壊し、洪水が一気に押し寄せて、全く対応できなかった」という声が寄せられています。街は飲み込まれ、水深は2階に迫りました。農地は水没し、駐車してあった車は濁流に巻き込まれていきました。
しかし、本当に心を痛める光景は、洪水のピークが過ぎ去った後にありました。
かつては平穏だった村は、ぽつぽつと屋根だけが水面から覗く状態になりました。激しい濁流の中で、十数人が水面を浮き沈みしています。漂流する乗用車の中でも、生き延びようと必死にもがく人がいました。ネット上では、親戚の子供が水に流され、助けに入った両親もろとも家族全員が急流に飲み込まれた、という情報も飛び交っています。ただ、現時点で公式な確認は取れていません。避難が間に合わなかった村人たちは、自宅の屋根に這い上がりました。断水、停電、そして通信の途絶。村に取り残されたのは、多くの高齢者や子供たちでした。
そして、浸水したのは六藍村だけではありません。
横州市の雲表ダム、三岔ダム、茶園ダムも、同時に危機的状況に陥りました。賓陽県の六旺ダムでは、水が越えて溢れ出しました。洪水は河川を一気に下り、雲表鎮の複数の村が次々と水没していきます。ある村人は、水は一瞬で押し寄せてきたと語ります。足の不自由な高齢者は逃げられず、家族全員が2階に閉じ込められました。六藍村の村幹部によりますと、全村3000人余りの大部分はすでに避難したものの、依然として50人から60人が屋根の上に孤立しているとのことです。高速道路は冠水し、道路は寸断されました。外からは入れず、中からも出られない。救援部隊も一時、被災地の中心部に近づけませんでした。
同日午前11時30分、南寧市は水害対策の緊急対応レベルを、3級から最高の1級へ引き上げました。国家の対策本部も、広西チワン族自治区への対応レベルを2級に引き上げます。広東省などの消防救援部隊が、夜を徹して駆けつけました。
それと同時に、ネット上では疑問の声も噴き出しています。多くの人が避難時間の短さに衝撃を受け、下流の村人が逃げる時間が少なすぎたと指摘しました。横州市応急管理局は、ダム全体が崩壊したのではなく一部の区間の決壊であり、危険が迫る前に複数回、放流の警告を出していたと説明します。しかし、この説明が人々の疑念を静めることはありませんでした。
そして、この災難はまだ終わっていないかもしれません。
気象当局によりますと、広西チワン族自治区では今後数日、なお広い範囲で激しい雨が降る見込みです。当局は土石流や地質災害の警報を相次いで発令しました。水に浸かった被災地にとって、これから降る雨は、すべてが状況を悪化させる要因です。
その一方で、さらに巨大な脅威が海上に迫っています。今年の台風9号です。台風10号より早く発生し、西太平洋で勢力を強め続け、現在も非常に強い勢力を保ち、雲の直径は1000キロを超えています。10日前後に台湾の東の海上へ接近し、その後、浙江省や福建省の沿岸に上陸する可能性があります。進路は広西チワン族自治区ではありません。それでも、台風10号の被害を受けたばかりの中国南部にとって、水害対策の重圧はさらに増しています。
現時点での公式発表に、死傷者の報告はまだありません。しかし、映像に映る、洪水の中で浮き沈みする人々の姿が、多くの人の心を離しません。六藍村での捜索は、今も続いています。
