3月20日午後7時ごろ、重慶大学・虎溪(こけい)キャンパス内で、研究室の爆発事故が発生しました。大学側がその後公表した通達によると、事故は当日19時05分ごろに起き、学生1人が搬送後、救命措置も及ばず死亡し、ほかに学生3人が負傷しました。大学側は、負傷した3人の容体は安定しており、命に別状はないと説明しています。また、事故原因については「実験操作の不備による爆発が初歩的に確認された」としています。

 複数のメディアは、現場を目撃した人の証言として、爆発の瞬間に大きな爆音が響き、廊下にもはっきりとした揺れが伝わったと報じています。近くで自習していた学生も大きな衝撃を受けたようです。ある学生は、「ドンという音がして、その階全体が揺れた」と振り返っています。その後、研究室の入口付近の床に血痕が残っているのを見た人もおり、ガラスは粉々に割れてあたり一面に飛び散り、室内の設備も爆風で破壊され、一部の機器の部品はねじ曲がっていたといいます。ネット上で拡散された現場写真からは、消防隊員と救急車両がすぐに駆けつけ、対応にあたっていた様子も確認できます。

 事情を知る学生の話では、事故が起きたのは電子顕微鏡の実験室だった可能性があり、実験環境には高圧ガス設備が関わっていたとみられています。さらに別の情報では、この研究室では以前から安全面の問題が指摘されており、高圧ガスボンベの置き方が雑然としていたほか、接続用ホースが老朽化して破れていたにもかかわらず、交換されないまま使われていたともいわれています。安全管理台帳にも、後から書き足したような形跡があったという話まで出ています。しかも事故の1週間前、大学側は安全研修を実施すると通知していたものの、その研修が行われる前に、事故のほうが先に起きてしまいました。

 事故で亡くなったのは、20代前半の大学院生だとされています。事情を知る関係者によると、この学生は事故前の3日間、連日深夜まで研究を続けており、事故当日の夜も研究室で機器の調整をしていました。最後に投稿されたSNSの内容には、実験パラメーターの調整が終わり、翌日の成果発表に向けて準備している様子が記されていたといいます。しかし、事故が起きた時、指導教員は外部の会議に出席しており、現場にはいませんでした。さらに別の情報では、研究室の当直記録に、危険な化学薬品に関する最近の点検で何度も「システム故障、修理待ち」と記されていたことがわかっており、こうした問題が長い間放置されていた可能性も指摘されています。

 事故後、大学側の情報公開のあり方にも疑問の声が上がりました。ネット上では、大学が事故直後に学生グループ内での議論を制限し、学生に対して外部に向けて発言したり、取材を受けたりしないよう注意していた、という声も出ています。その後に出された公式発表も内容はごく簡潔で、初期判断として「操作不備」の一言で片づけられていました。これに対し、一部の学生からは、この説明だけではあまりに単純すぎるのではないか、事故の背後にある管理上の責任まで十分に示していないのではないか、という疑問が出ています。

 ここ数年、中国では大学の研究室で起きる安全上の事故が相次いでいます。統計によると、2004年から2024年までの20年間で、全国の大学や研究機関では研究室の安全事故が合わせて137件発生し、19人が死亡、177人がけがをしました。そのうち6割以上は、操作ミスや規定違反によるものとされています。さらに2025年だけを見ても、全国の大学で起きた研究室事故は327件に達し、43人が死傷しました。2020年と比べると4割以上増えており、このうち火災や爆発による事故が全体の4割近くを占めています。研究室の安全問題が、はっきりと深刻化していることがうかがえます。

 近年の主な事例を振り返ると、研究室での爆発事故はすでに何度も深刻な死傷者を出しています。

 2015年12月には、清華大学の化学系研究室で爆発が発生し、32歳の孟さんという博士研究員が死亡しました。この事故では、研究室だけでなく隣接する部屋にも被害が及びました。

 2018年12月には、北京交通大学の市政環境工程学科の研究室で爆発が起き、学生3人が死亡しました。

 2021年7月には、南方科技大学の化学系研究室で火災が発生し、博士研究員1人がやけどを負いました。

 2021年10月には、南京航空航天大学材料科学技術学院の材料研究室で爆発事故が起き、2人が死亡、9人が負傷しました。

 2022年4月には、中南大学材料科学工程学院の研究室で爆発が発生し、博士課程の学生1人が全身に深刻なやけどを負い、皮膚にも大きな損傷を受けました。

 表面的には、多くの事故は操作ミスが直接の原因とされています。しかし、さらに踏み込んで見ると、その背後にはもっと根深い問題が隠れていることがわかります。今回の重慶大学の事故でも、特に大きな注目を集めたのは、亡くなった学生が事故前の3日間、連続して徹夜に近い状態で実験を続けていたという点でした。これは決して特別なケースではなく、いまの中国の大学で、多くの大学院生が直面している現実を映し出す一場面だと受け止められています。

 研究評価の仕組みが論文発表に大きく依存している中で、大学院生、とくに博士課程の学生は、卒業と研究成果の両方を求められる強い重圧にさらされています。一部の大学では、卒業にあたって論文の本数や掲載先の水準にかなり高い基準を設けているため、学生たちは限られた時間の中で質の高い結果を出すために、長時間研究室にこもらざるを得ません。多くの大学院生が、実験を深夜まで続け、疲れ切ったまま、あるいは体調が悪くても無理をして研究を続けることが当たり前になっています。こうした状態では、安全への意識や操作手順への注意が薄れやすくなり、結果として事故の危険が大きく高まってしまいます。

 一方で、大学院生を指導する教員や、研究室の管理体制そのものにも大きな問題があるとみられています。学生たちの話では、指導教員の中には、論文の成果や研究プロジェクトの進み具合ばかりを重視し、研究室の日常的な安全管理にはほとんど関心を示さない人もいるといいます。学生の精神的な状態や、過重な負担については、なおさら顧みられていないという声もあります。実際、一部の研究室では、安全研修が形だけで終わっていたり、設備の点検や修理が後回しにされたり、危険物の管理がずさんだったりするケースもあるようです。中には、事故のあとになってから安全点検の記録を書き足したのではないかと疑われるような事例まであります。こうした「研究成果ばかりを追い、安全を軽く見る」空気が、研究室の中に多くの見えない危険をため込み、ひとたび何かが引き金になれば、大きな事故へとつながってしまうのです。

 今回の重慶大学の爆発事故は、大学の研究室が抱える安全問題を、あらためて世論の正面に突きつけました。現場の激しい損壊の様子、亡くなった学生が何日も連続して深夜まで実験を続けていた実態、そして安全管理をめぐる数々の不審な点。こうした情報を一つひとつ見ていくと、いま中国の多くの大学の研究室が、いつ爆発してもおかしくない危険な「時限爆弾」になりつつある現実が、はっきりと浮かび上がってきます。

(翻訳・藍彧)