最近、イランでの大規模な反体制運動やベネズエラ政局の激変を受け、中国国内の空気が急速に張り詰めています。海外の不穏な動きに呼応するかのように、各地の警察組織は実戦さながらの暴動鎮圧訓練を相次いで実施しています。その矛先が明確に一般市民へと向けられ始めたことに、社会全体が深い動揺に包まれています。

 事態の異様さを決定づけたのは、四川省崇州市で行われた公安特殊警察による演習でした。「雷霆出撃」と名付けられたこの訓練で公開された映像は、これまでの常識を覆すものでした。完全装備の特殊部隊が盾を並べて暴徒役の市民に迫り、催涙ガスが焚かれ、視界が遮られた瞬間、盾の壁が開き、一人の隊員が前に出て市民に向けて発砲する動きを見せたのです。銃声と共に倒れ込む市民役、そして雪崩れ込んで制圧する部隊という、現場での射殺を想定したこの一連の動作は、単なる鎮圧訓練の域を超えています。ネット上では、これは威嚇ではなく予告であり、石を投げて抵抗するなら容赦なく実弾を浴びせるという当局の宣言に等しいとの戦慄が広がりました。

 こうした動きは局地的なものではなく、湖北省咸寧市では、地元のショッピングモールである中星天街の店内に演習場が設けられました。買い物客が行き交う日常空間で、対テロ部隊が盾や警棒を振りかざして犯人制圧のデモンストレーションを行うという光景が展開されたのです。また、四川省成都の繁華街でも大規模な封鎖訓練が行われたほか、陝西省西安の観光地である雁塔区周辺では、透明な暴徒鎮圧用盾や刺股を持った警官隊に加え、軍用犬や短機関銃までが動員されました。

 街角に重武装の部隊が日常的に立つ光景は、市民に対し常に監視されているという無言の圧力を放っています。さらに不可解なのは、寧夏回族自治区銀川市などで、民間の警備員までもが暴動鎮圧の訓練を受けていることです。その一方で北京の路上では、サンザシ飴を売る高齢の露天商が警備員に暴行され、自転車ごと商品を奪われる事件が発生しました。演習で逞しさをアピールする裏で、実際に行われているのは弱者への暴力であるという現実に、市民の怒りと諦めがSNSに渦巻いています。

 武力による威圧と並行して、社会の毛細血管に入り込むような監視網の強化も進んでいます。黒竜江省や河北省など各地で急増しているのが、義警と呼ばれる治安ボランティアの存在です。ボランティアとは名ばかりで、実際には月額 約6万8千円(3000元)程度の手当が支給される事実上の雇われ監視員であり、主な採用ターゲットは、時間と体力を持て余し、愛国心が強く、そして権力を行使したがる高齢者たちです。彼らの任務は地域社会に紛れ込み、政府に批判的な言動をする人物や不審なグループを特定し、当局に通報することです。かつての相互監視社会の復活によって、多くの市民が息を潜めて暮らしています。

 この敵を恐れるあまり草木まで敵兵に見えるとも言える過剰な警戒態勢の大元は、やはり首都北京です。ベネズエラのマドゥロ政権を巡る混乱やイラン情勢は、中国共産党指導部に強烈な危機感を植え付けました。北京周辺の軍事基地では慌ただしい動きが察知されており、市内は厳戒態勢にあります。バス停には武装警察官が立ち、執拗な身分証確認と荷物検査が繰り返されています。そして権力の中枢である中南海周辺では、赤い壁の外を全身黒づくめの集団が、無表情で、機械のように整列して行進する異様な光景が目撃されました。その不気味な威圧感は、通りがかった市民に死者の行進を見ているようだと形容させるほどでした。崇州市で響いた銃声から、北京の路地裏を徘徊する高齢の密告者、そして中南海を守る正体不明の黒い集団まで、これら一連の動きをつなぎ合わせると、見えてくるのは外敵ではなく自国民を最大の脅威と見なし、恐怖に駆られる権力者たちの姿なのです。

(翻訳・吉原木子)