低迷し続ける中国経済は、想像以上に悪化しています。

 北京に住むある中流階級の住民は、自身が経験した3つの出来事を通して、中国経済の現状を語りました。

大型ショッピングセンターに客がほとんどいない
 「私は北京市民だ。昨年12月の寒い週末、孫を連れてショッピングセンター内の子供の遊び場に行ったが、そこが閉鎖されていた。次に朝陽区の北辰ショッピングセンターに行ったが、そこの子供の遊び場も閉鎖されていた。さらに海淀区の大鐘寺に行った、そこもやはり閉鎖されていた。最終的に西単大悦城に行ったが、そこの子供遊び場は開いていたので、急いでチケットを買って孫を遊ばせた。しかし、広くて有名な複合商業施設にもかかわらず、遊んでいるのは孫一人だけだった。仕方なく私もチケットを買って中に入った。これは土曜日だというのに、子供たちはどこにいるのだろう?」

大手企業の経営難によるリストラ
 「今年2月9日、旧正月の大晦日の夜、夕食を食べていると、息子が旧正月の2日から出勤しなければならないと言った。驚いて、なぜ急に出勤しなければならないのか理由を尋ねると、息子は『会社から緊急通知があり、業績が悪いため人員削減を考えているが、退職補償金を支払う余裕がないので、旧正月の2日から出勤させる手段に乗り出したのだ。それで、どんな理由でもあっても出勤できない者は自主退職とみなされ、補償金は支払われない』と言った。IT業界の大手企業でさえこのような手段を取るとは、一体どうなっているのだろう。大晦日の夕食なのに、家族全員が暗い気持ちになった」

 「息子は『これでリストラは3回目だ。みんな自分が解雇されるのではないかと心配している。普段は朝早くから夜遅くまで働き、太陽を見ることもできない。今では会社に寝袋を持ち込んで働き続けたい気持ちで、体力を振り絞って残業している。唯一の望みは、リストラされないことだ。30代の若者たちが住宅や車のローンに押しつぶされそうになっている。たとえローンがなくても、新しい仕事を見つけるのは非常に難しい。男として親に頼ることはできず、ただ我慢して頑張るしかない。解雇されなければそれで充分だ』と言った」

多くのホテルが倒産
 「今年の旧正月、私は息子一家3人を連れて(中国南部の)海南島で最も有名な観光地である保亭(ほてい)に旅行に行った。現地に着いて初めて、保亭の温泉リゾートホテルが2軒しか残っておらず、他はすべて倒産していたことが分かった。以前はそのエリアだけで10軒以上の温泉ホテルがあったはずだ。嫁も驚いてため息をついた」

 「急いでホテルを見つけてチェックインして温泉に入ってみると、私たち家族以外に誰もいなかった。レストランで夕食を取ると、広いレストランには私たちを含めて2つのテーブルにしか客がいなかった。数年前までは、レストランで食事をするには予約が必要で、さもなければ席が取れない状況だった。有名な保亭温泉がこれほど変わり果てているのなら、他の観光地はさらに悪いだろう。おそらく生き残っているホテルやレストランは少ないとおもう」

 「私は30年以上商業界に関わってきたが、中国経済がこれほど悪い状況にあるのは初めてだ。この困難が一時的なものであり、これが夜明け前の最後の暗闇であることを願っている。しかし、どうやってこの暗闇を乗り越えられるのだろうか?」

南京市在住の男性の物語
 不動産は中国経済の支柱であり、その破綻がもたらす悪影響が急速に広がっています。中産階級の貧困への逆戻りが進行しています。

 南京市に住むある男性ネットユーザーは、SNSアプリ「小紅書(シャオホンシュー)」で、自身の苦しい経験を語りました。彼は農村出身で、大卒後10年間の努力の末に江蘇省南京市で家を購入しました。しかし、喜びもつかの間、母親がガンと診断されました。母親の治療費を賄うため、彼は家を売ることにしました。2020年の不動産価格のピーク時に310万元(約6700万円)で買った家を、今や222.7万元(約4800万円)で売却しました。家の価格差に加え、内装費用や住宅ローンの返済を含めると、4年間で計170万元(約3700万円)も損失しました。10年間の苦労がすべて水の泡になってしまったのです。彼は、「今後はただ生き延び、一日一日を過ごすだけ。何もかも無意味だ。タンピン(寝そべり)したい」と述べました。

 ある個人メディアは、「農村出身の若者が南京市で家を買えるのは、彼が非常に努力しているだけでなく、とても優秀であることを示している。しかし、最終的にタンピンしかできないのは心が痛む」と述べました。住宅物件の価格が下落し続ければ、すべての中産階級が貧困に逆戻りすることになるでしょう。

さまざまな値上げ
 不動産バブルの崩壊は、中産階級の貧困化を引き起こすだけでなく、驚くほどの物価の値上げの波を引き起こすと見られています。今年の5月2日から、高速鉄道の4つの客運路線の運賃値上げが、この大幅な値上げの先陣を切りました。

 値上げされた4つの路線は、中国経済で最も活発な長江デルタ経済区と主要な労働力供給地である中国中部地域をカバーしています。一等席(セミリクライニングシート)や二等席(最も手頃価格)のチケットは約20%値上げされ、ビジネス席のチケットは最大で40%近く値上げされています。その結果、チケットの値上げは、一般労働者だけでなく、中流以上のホワイトカラー層にも影響を及ぼしています。

 中国のある個人メディアの記事は、こうした高速鉄道の値上げが一般市民に与える影響を計算しました。値上げ後、長沙南駅から広州南駅までの指定席のチケットが以前より63元(約1400円)高くなりました。夫婦と子供一人の家族3人の場合、往復で378元(約8000円)多く支払う必要があります。これは一般家庭の共働き夫婦の1日分の給料に相当します。したがって、今回の運賃値上げは一般市民に大きな影響を与えています。

 過去十数年、高速鉄道は中国の最も輝かしい国の名刺として称えられてきました。しかし、中国の高速鉄道建設は主に債務による資金調達に頼っているため、走行距離が急速に伸びるとともに、莫大な負債も急速に増加しています。2005年から2023年まで、国鉄の負債総額は0.48兆元(約10兆円)から6.13兆元(約132兆円)に急増し、毎年の利払い費は2000億元(約4.3兆円)を超えます。現在は、債務元利返済のピーク期、高速鉄道建設の加速期、大規模な修繕期の3つの周期が重なる時期を迎えています。運賃値上げしなければ、関連各企業は資金調達できません。

 高速鉄道の運賃値上げは氷山の一角に過ぎません。すでに水道、電気、ガスの価格は値上がりしており、他の公共サービスの値上げも相次ぐ可能性があります。さまざまな値上げが次々と襲ってくるでしょう。

(翻訳・藍彧)