道教のハタキ(神韻芸術団ホームページより)

 神韻の多くの舞踊の演目に、白髪で長い髭の年老いた仙人が、ハタキを振り回しながら教鞭を執っている姿が見受けられます。西遊記では孫悟空の道家の師で八仙人の一人である呂洞賓(注1)、そして同じく仙人である太上老君(注2)などが、魔法のハタキを片手に威徳と無敵な強さを披露しています。また、『消えた夢』『山を切り開いて母を救う』、他にもいくつかの開幕の演目でも見られます。いったいこのハタキは何なのでしょうか。

 道教で用いられるハタキは、動物の毛と麻を合わせたもので、木製の柄がついています。道家の道士や僧侶は、ハタキを携えて修業の旅に出ます。禅僧も説法の際にハタキを振りかざします。ハタキは説法の威厳と厳粛さを象徴するものなのです。

 道教の文化では、ハタキは世俗的な欲望や肉欲を掃き捨て、俗世界から昇華する感覚を放つ力があるとされています。邪悪な霊を世界の汚れとし、道教のハタキは神秘的な力で祓い清めるという解釈もあります。

 ハタキは、武器としても知られます。馬のしっぽで作られたハタキは、武当拳 (内家拳)でよく用いられ、ハタキを使いこなせれば、自己防衛の能力が身に付きます。ハタキを使った型や動きは、柔と硬の両方を備えた優雅で自由な独特のものです。ハタキの使い方を覚えるには、敏捷性だけでなく、気質と精神の融和が求められます。

(神韻芸術団ホームページより転載)

注1:呂 洞賓(りょ どうひん、796年5月4日 – ?)は、中国の代表的な仙人である八仙の一人。

注2:太上老君(たいじょうろうくん、だじょうろうくん)は、道教の神の一人。道教の始祖とみなされる老子が神格化されたもので、道教の最高神格である三清の一柱。

(左)呂 洞賓(パブリック・ドメイン)、(右)太上老君(パブリック・ドメイン)