(イメージ / Pixabay license)

 蓮(ハス)は、「蓮の花」「蓮華」とも呼ばれ、多年生水生植物の一種です。中国では、蓮はよく植えられるだけでなく、蓮の実、蓮の根(レンコン)などの部分を食材として召し上がります。陶器や磁器にも、蓮の花の絵柄がつけられることが多くあります。

 後漢時代、仏教の中国への伝来に伴い、「蓮の花」の呼び名が現れました。蓮の花は高潔な品性を象徴しているため、汚れた世の中で汚されずに修行に専念することによって清浄な仏国土に入るという仏教徒の願いと一致し、仏教でとても推賞されています。 
 仏教の伝来と浄土宗(異称は蓮宗)の創立と発展に伴い、蓮の花の自然な特徴は仏教の教えと戒律に昇格させられ、仏教では蓮の花を神聖な花として崇拝するようになりました。極楽世界(阿弥陀仏の浄土)を「蓮華蔵世界(れんげぞうせかい)」、寺院を「蓮舎」、僧侶の袈裟を「蓮服」、僧侶の合掌の作法を「蓮華合掌(れんげがっしょう)」と呼ぶのも、蓮の花への崇拝の表現でもあります。 

白衣観音図(Metropolitan Museum of Art, CC0, via Wikimedia Commons)

 実は、蓮の花は仏教の世界において、仏の果位と威徳の象徴とされています。
 今まで多くの寺院で、蓮の花の台座に結跏趺坐(けっかふざ)している釈迦牟尼仏の坐像がよく見られます。蓮の花の台座上に結跏趺坐し、両手を上向きにしながら組んだ足の上に置き、手のひらの上に一つの蓮台を載せる阿弥陀仏の仏像もよく見られます。観音菩薩像では、白い服を身に纏い、大きな白い蓮の花の上に座りながら、片手に水瓶を持ち、もう一方の片手に白い蓮の花を持つ姿がよく見られます。仏と菩薩が座る蓮台は、仏の果位と威徳を象徴するとされます。 
 仏教の経典によると、釈迦牟尼仏が誕生する前、皇宮御苑にある大きな池に突然車輪ほど大きさの白い蓮の花が咲きました。釈迦牟尼仏が誕生した時、白い蓮の花から千本の金色に輝く光を放ち、それぞれの光が千枚の花びらを持つ白い蓮に変わりました。仏典には、蓮の花には「人華」「天華」「菩薩華」の三種類があるとも記載されています。「人華」は花びらが十枚ほどしかありませんが、「天華」は数百枚の花びらがあり、「菩薩華」は花びらが何千枚もあり、仏教で最も崇められる千弁(せんべん)の蓮で、仏国土に咲く蓮の象徴となります。 

 蓮の花が愛されるのは、まさにその「泥の中から出ても染まらない」貴い気品のためです。蓮の花に奥深い意味を持たせるのも、どんな悪い環境においても清らかで正しい心を持つべきという、神仏から善良な人へのお諭しではないでしょうか。 

(文・劉暁/翻訳・心静)